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    アロマきかく

    @armk3

    普段絵とか描かないのに極稀に描くから常にリハビリ状態
    最近のトレンド:プロムンというかろぼとみというかろぼとみ

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    アロマきかく

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    クソ樹液で爆死したやつの肉を拾いに行くだけの話。


    色々聞いた結果自分の中で出た、ダフネの死亡予告の結論。
    本当は黙っておくつもりだったのに、脆くなった心が死亡宣告に負けて思わず漏らしてしまった本音。31のあたりからずっと脆くなり続けてると思うんだよね、多分。知らんけど。
    カイルノってレアネームだったんやな…レアネーム一覧ありがとうwiki

    #ろぼとみ他支部職員
    #クソ樹液
    sap

    A.T.N.G. alt Side : Kaerno あの時確かに、身体に異常はないと言っていた。出来ればその言葉を疑いたくはない。
     でも、『副作用』はあの時点で発症していたのだろう。発症してから僅か20秒程度で、ここまで人体が跡形もないほどに爆発して、バラバラの肉片になるなんてことが今も信じられない。自分も懲戒チーム通路の監視カメラ越しに、確かに見た。直後に紅く染まるカメラレンズ。レンズの端の方にへばりついた影は、千切れた皮膚だったのだろうか。紅色のレンズ越しに薄っすらと見える様子。さらなる爆発と花火のごとく弾ける血糊、溢れながら飛び散るおそらく内臓だったもの。
     そして……殆どの部位を失った『人体』が、自身の血液のなかに崩折れる様。
     それ以降は果たして見ていたのか、それとも目を背けてしまったのか。どちらにせよ覚えていない。

     パウちゃんがいまだ乾かない血溜まりの中――それはまるで血の池にも見えた――、ダフネパイセンの飛び散った肉を拾い始めた。まず拾ったのは、一面紅い血溜まりの中、ひときわ目立つ腕と思わしき部位。黄金狂の装甲部に守られた個所は、まるで四肢がそのまま引きちぎられたかのように無造作に転がっていた。どちら側だかわからない腕を拾い上げ、装甲の裏に留まった腕の肉と、骨の向きと、肩にあたるだろう腱の部分に残った繊維を見定める。観察のため掲げた腕の、手首から先は無かった。
    「右腕ね。方向から見ても間違いない。だとするとあっちにあるのが左腕ってことかしらね」
     パウちゃんは肉に関しては特に詳しいから、きっとそうなのだろう。肉と見れば、ありとあらゆる種類の肉について長々と語り始めたりする。食べられる可能性を見出した途端、アブノーマリティだろうが試練だろうが、目の色を変えて声が弾む。頬を上気させて、どう調理すれば食べられそうか、下ごしらえや味付けはどうするか。普段の冷静で物静かな雰囲気が一気に払拭され、全く違った側面を見せる。
     はじめのうちは、普段の静かな雰囲気に惹かれていた。いつからかそんなパウちゃんの、夢中になっている顔がたまらなく愛おしくなっていた。

    「あ、向こうのが左腕なら、俺持ってくるっすから。パウちゃんは近いところから……」
    「じゃ、そうさせてもらおうかしら」

     パウちゃんばかりにこんなことやらせてちゃ男が廃る。いくらパウちゃんが元肉屋だとて、ついさっきまで語らってたダフネパイセンが、こんな……
     立ち込める血の臭いに圧倒され、思わず立ちすくむ。血溜まりの奥にぽつんと転がる、左腕と思しきもの。じきTT2プロトコルで戻るとはいえ、せめて拾って帰ってあげないと。少しでもパイセンの覚悟を拾い上げておかないと。管理人も、それを汲んでTT2プロトコルの発動を待ってくれている。
     パイセンの血溜まりは懲戒部門上層の廊下の2~3割ほどを占めていた。そこまで人体に血液って入るものなのか。血溜まりの中、できるだけ飛沫をあげないよう歩きだす。血溜まりから引き抜く足が重い。一瞬バランスを崩して壁に左手をつく。その壁すらもべっとりと血に塗れていた。ひっ、と声を上げそうになったが何とか堪える。情けないところを見せてはいけない。改めて周囲を見回すと、懲戒チームの赤を基調とした塗装の上から壁も天井も満遍なく、パイセンの血と、内臓と、皮膚と、あと……

     意識しないように目を逸らす。逸らした先もまた紅い血溜まりと肉片。赤ってこんなに紅かったっけ。現実感が薄れる。手をついた壁の血糊が、掌にねっとりと現実を伝える。ネツァクのやつに言って、安定剤少し多めに貰ってくればよかった。
     僅かな後悔が意識を現実へ引き戻す。あるいはメインルームの外でも再生リアクターが微弱ながら適用されるようになったことで少しは精神状態がマシになったのか。いずれにせよ、動けるうちに動いておかないと少々まずいかもしれない。ちょっと予想以上に精神にキた。
     安全チーム配属になってからは、医療施設が充実しているせいもあり、度々負傷者が運び込まれるのを見てきた。自分が今までの鎮圧で負った傷なんか目じゃない規模の、思わず目を背けてしまうような状態の者もいた。

     グレゴリーパイセンがキュートちゃんに殺されたときの事を思い出す。あのときは作業ダメージも重なっていたせいか、ほとんど一撃でやられたようだった。自分は他の作業にあたっていたこともあり、その瞬間を直接は見ていない。その後は監視カメラで現場の様子を見る前にTT2プロトコルで巻き戻っていた。
     今思えば、見なくて正解だっただろう。まだ自分は入社して間もなかった。どういう職場なのかさえよくわからないまま、取敢えず浮かぶ髑髏に対して趣味語りなどしていただけ。若干疲れるときもありはすれど、色々話しているうちに気分がすっとしたような感覚を覚え、なんだ然程きつくもない作業だな、むしろ楽な部類だと思っていた。その裏で死者が出ていたことなど到底思うはずもなく。
     だからあの死亡アナウンスを聞いたとき、何かの冗談かとすら思ってしまった。そんな自分が恐らく余程凄惨であったろう現場を見ていたら。ひょっとして気が触れていたかもしれないと思うとぞっとする。

     さすがに入社当初よりは幾分経験を積み、試練とかいうよくわからないバケモノもどうにかこうにかできるようになって。その間にも何回か死者は出ていたが、ほとんどその瞬間を目撃することはないままにやってきた。ただ、逃げ遅れたオフィサーの死体が時折転がっていた。既に死んでいたから、そこに実感を抱いている暇もなく鎮圧なり作業なりに追われて意識することもなかった。あるいは無意識の内に脳が目を逸らしていたのかもしれない。
     試練といえば、紫の白昼を初めて相手したとき。突然巨大な石碑のようなものが落ちてきて、職員も何人か即死したらしいことは聞いた。安全チームのメインルームも例外ではなかった。オフィサーが巻き込まれて、腹部から下が完全に潰れていた。それでもしばらくは息があって、試練の石版から生えている触手と格闘している間にも痙攣しつつその真っ赤な指先が何かを求めて彷徨うのを横目に見た。予め安定剤を余分に貰って、試練発生の直前に打っておいて本当に良かったと思う。彼には申し訳ないが。
     それでも業務終了後、油断して安定剤の追加分を貰わなかったらろくに食事が喉を通らず、結局戻した。試練の相手をしてる最中にTT2プロトコルの巻き戻しが入ったから、安定剤が切れているのを完全に忘れていた。そのことを知ったら、パウちゃんにきっとものすごい剣幕で怒られるだろうな、と過ったことまでハッキリと覚えている。今でもあのオフィサーの、死に瀕してなおもがく上半身が忘れられない。顔は見えなかった。見えていたら恐らくはもっとキツいことになっていただろう。

     今までは、それが自分の中でもっとも記憶に残る……記憶にこびり付いている死に方だった。いつだったか、ネツァクが言っていた。ここは安全チームとは名ばかりの、全く安全じゃない場所だと。あの時実感した。自分もそう思う。それでも、自分たちがもうちょっと頑張れば、もうちょっと安全……とは言い切れないけど、多少はマシな場所になる、そう思っている。
     そう思いたい。

     ダフネパイセンの死は、何をどう頑張っても変えられなかった。安全チームチーフが聞いて呆れる。元チーフ、だし、今となっては名ばかりだが。
     懲戒チームの廊下で、独り。
     ダフネパイセンはあの時確かに笑っていた。自分がどうなるのか知っていて、それでも笑っていた。その笑顔が苦痛と恐怖に歪んだとき、自分は無力なんだという事実が、爆発した。
     自分の中で最も記憶に残る死に方が上書きされてしまった。

     壁際まで吹き飛んでいた左腕を拾い上げる。やはり手首から先は無い。恐る恐る装甲部の裏を見た。抉れた肉から突き出る折れた骨。こみ上げてくる物があったがそれを堪えて、目に焼き付ける。これがずっとひた隠しにしてきた、パイセンの覚悟。計り知れないほどの死と時間の上に積み重ねた覚悟。打ち明けてくれたからには、応えなければ。
     近くに落ちていた多少形を留めている肉片もいくつか拾って、パウちゃんのもとへ戻る。パウちゃんは顔色一つ変えず装甲の裏側の肉を見つめ、ふいに目を細めて呟く。
    「……やっぱり、良くないわね」
     そうだ。良くない。このままじゃ絶対良くない。どれだけ生きて死んでを繰り返してきたのか自分にはわからないけど。パイセンは、今のこの……点?の自分たちに、期待してくれている。今の管理人にとても大きな、重すぎるほどの期待を寄せている。いくらTT2プロトコルで何度も巻き戻せるとはいえ、パイセンが死んだら管理人が傷つくに決まっている。もちろん誰が死んでも傷つくだろうけど、ダフネパイセンは管理人と一番付き合いが長い。新米の管理人を時には気遣って、時には助言をして、時には発破をかけて。そして新しく収容した未知のアブノーマリティには真っ先に作業にあたる。きっと頼りになるどころじゃない、まさしく最初から今までずっと支えられっぱなしだったのだろう。
     それらの助けが無かったとしても、たとえ込み入った事情がなくとも。付き合いが長い、ただそれだけでもダフネパイセンは管理人の支えになっていたと思う。
     そんな大きな支えになっている人が、真っ先に死を背負いに行くなんて間違ってる。
     管理人に期待を寄せているのに、支えのパイセンが真っ先に死んでしまったら、当の管理人はどう思う。

     さっきは気づかなかったが、ちらと視界の端に見えた紅黒く染まった布、そこには黒いクロスライン柄。やけに気になった。恐らく絶対、きっと後悔するだろうと脳が念を押してくるが、たまらず布の見えた場所へ駆け寄る。血溜まりを踏みつけて飛び散る血糊なんか最早気にしていられなかった。
     さっきは丁度影になって見えていなかったところに、半分ほど抉れた頭が落ちていた。手入れはせずともやたら目を引く色をした髪はただ血溜まりのなかで染まりゆくまま、どす黒い紅と成り果てていた。傍らに眼球がひとつ。その深い色は最早見る影もなく、床に溜まった血の色に馴染んでいた。

    「……ぁ……」
     予想はしていたが、いざ見つけてしまったときのことを考えていなかった。案の定の後悔。
     束の間、なんとか対処法を思いついた。
    「パウちゃんこっち、頭!頭部が残ってるっすよ!」
    「わかった。この辺りはもうすぐ終わるから」

     腕を見つけた時以上に、頭部はマズい、と思った。腕を見ただけでアレだ。今の状態、安定剤を打たないとまともに頭部なんか見られないに違いない。だから、パウちゃんに任せてしまった。情けない。男として情けない。次いで、ダフネパイセンに対する申し訳無さが湧き上がってくる。自分は安定剤がないとパイセンがどんな顔をしているのかすら直視できないのかと。
     余分な安定剤を貰わずに来た理由を思い出した。ダフネパイセンの死に対して鈍感になりたくなかったからだ。ありのままを見つめて、受け止めて、飛び散った覚悟を拾い集めるために。いや拾うだけじゃ駄目だ。拾い上げたものを次に繋げないと。それが報いるってことなんだろう。

     あの爆発する直前の目一杯の笑顔は、歪んだ瞬間に真逆の方へ意味を変えた。
    『大丈夫だから心配するな』、『どうせ死に慣れてるから大したことない』。
    『予告された死は怖い』、『死ぬことには慣れてるけどその過程・痛み・苦しみは辛い』。
     それが透けて見えてしまった。

     パイセンは監視カメラに向かって笑顔を向けた。自身が、もうすぐ確実に死ぬと予告してしまったから。もしかしたら、あの予告がなかったら。パイセンが抱えた『樹液の副作用』なんて誰にも見せずに、誰も気づかないうちに突然爆発していたかもしれない。開示された情報を見て、あとで絶対管理人かコービンパイセンか、どちらかが必ず叱っていただろうけど。少なくとも、職員全員がパイセンの爆発する瞬間を見ることはなかったはず。
     どうしてダフネパイセンは自分の死を予告してしまったんだろう。よりによって、こんな凄惨な死に様を。パイセンのことだから、管理人含め皆に心配をかけたくない、不安を与えたくない、そう思っているはず。だから尚更、死を予告して皆に見せつけるようなことをした理由がわからない。

    「彼、助けを求めていたんじゃないかしら。自分も気づかないところで」
     いつの間にか隣でしゃがみこんでパイセンの頭部を拾い上げんとしながら、自分の考えを見透かしているかのようにパウちゃんが言った。
     母親譲りだという狩人の観察眼。裏路地暮らしだったがゆえのドライさが混ざった生死への価値観。普段から口数の少なめなパウちゃんは、パイセンの一挙手一投足やそれに伴う心の機微を敏感に感じ取り、何を考えているのかある程度察しがついていた……のだろうか。おそらくそれが、パイセンにとって秘密にしておきたい事である所まで把握して。

     そうだ、何も情報の開示だけならば、自分の体に『副作用』が起きていることなんて黙っておけばそうそうバレやしないだろう。それが余程身体に負担のかかるような症状でさえ、ダフネパイセンならギリギリまでわからないように隠そうとするはず。手遅れになってもなお涼し気な顔で、身体に異常は無い、と。きっとパイセンだったらそう言うと思う……いや、言っていた。
     引っかかる。樹液使用中は管理人をはじめ、誰も情報開示の進捗について触れていなかった。それこそ、黙っていれば予告なんてしないうちに爆発していただろう可能性もある。だとしたら、やはりパイセン自ら情報開示の進捗を報告して、手遅れであることまで宣言した理由。合点がいった。合点がいってしまった。
     自身の身体に起きた異変が『副作用』であることを察知して、もう手遅れである事がわかって……それを黙って居られなかった。予告された死の恐怖に、黙ったままでいようという覚悟が負けて、もう手遅れなのにそれでも何かに縋ろうとして。知らずの内に零してしまった。
     胸が締め付けられるように軋む。迫りくる確実な死の恐怖の前では、パイセンの覚悟でさえ呆気なく崩れ去ってしまうのか。その事実に戦慄すら覚えた。

     やっぱりパウちゃんは優しい子だ。不器用に見えて、その行動の一つ一つが優しい。アーニャパイセンが怯えているときも、率先して彼女の気を惹く話題を振り、彼女が元気になれるよう誘導していた。管理人のメンタルが揺らいでいるときは、発破をかけるための鋭い言葉を投げかける。それらのどれもが的確で、気遣いに溢れていた。
     あるいは樹液のときだって、カメラ越しですらパイセンの変化に気付いていたかもしれない。いや、口ぶりからして恐らく気付いていた可能性が高い。それでも敢えて口出ししなかったのは、パイセンの意思を尊重したのだろうか。気付いてもなお黙っていることはきっと辛いはずなのに。優しいうえに、自分よりよっぽど強い。
     最初はその雰囲気と、裏路地出身らしからぬ整った容姿にちょっと惹かれた。今は、彼女の見せるあらゆる側面が愛らしい。そしてそれを守り抜きたいという自分が居る。いずれ話すと宣言した自分の過去。それを聞いても、せめて、嫌わないで欲しい。……それは甘えか。あと一歩が踏み込めない、自分自身が情けない。

     パウちゃんがダフネパイセンの頭部を手に取り、後頭部の傷から覗く砕けた頭蓋骨、更にその奥を凝視する。後頭部も爆発していた。それはつまり、最終的に脳すらもここに。この血溜まりの中に。想像しただけで自分の脳がふらつく。カメラ越しには殆ど見えなかったけど、脳が爆発したのは最後だったのだろうか。だとしたら、ダフネパイセンは自分の身体の異変を、爆発するさまを、最期まで認識していたということに。それって、あまりにも、残酷すぎやしないか。
     大きく開いた傷口から、残った脳の残骸が僅かに覗いた。反射的に目を逸らしてしまう。駄目だ、しっかり見届けなければ。覚悟を受け止めなければ。もしパイセンが『助けを求めていた』のなら、それこそ目を逸らしてはいけない。
     首の付け根まで見分し終わったパウちゃんが、さらに角度を変えて観察する。抉れた頬が、眼球の失われた眼窩が、かろうじて残されたもう一つの瞳が、視界に入るたびに焦点が合わなくなる。一度ぎゅっと目を瞑り、自分自身の覚悟と共に見据える。

     いまだ留まる目からは眼窩の奥から溢れる血によってまるで紅い涙を流しているかのように見え、
     抉れず残っていた片方の口の端は、笑っていた。

     目が滑る。焦点が合わない。立ち眩みがする。見えているのに見えない。見るんだ。しっかり見て、焼き付けて、拾うのは肉だけじゃなく、――



     聴覚まで意識が回らない男の脇で、小さく呟く声。
    「彼、何を食べたらここまで良くない肉質になれるのかしら」
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    ☺🙏✨✨🍖🍖🍖🍚
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    アロマきかく

    DOODLEたまにはサブ職員さんの解像度を上げてみよう。
    49日目、オフィサーまでも一斉にねじれもどきになってその対応に追われる中、元オフィサーであったディーバにはやはり思う所があるのではないか。そんな気がしたので。
    甲冑で愛着禁止になったときも娘第一的な思考だったし。
    なお勝手に離婚させてしまってるけどこれは個人的な想像。娘の親権がなんでディーバに渡ったのかは…なぜだろう。
    49日目、ディーバは思う 嘔吐感にも似た気色の悪い感覚が体の中をのたうち回る。その辛さに耐えながら、“元オフィサー”だった化け物共を叩きのめす。
    「クソっ、一体何がどうなってやがんだよ……ぐ、っ」
     突然社内が揺れ始めて何事かと訝しがっていたら、揺れが収まった途端にこの有様だ。
     俺がかろうじて人の形を保っていられるのは、管理職にのみ与えられるE.G.O防具のお陰だろう。勘がそう告げている。でなければあらゆる部署のオフィサーばかりが突如化け物に変貌するなどあるものか。

     もしボタンを一つ掛け違えていたら、俺だってこんな得体のしれない化け物になっていたかもしれない。そんなことをふと思う。
     人型スライムのようなアブノーマリティ――溶ける愛、とか言ったか――が収容された日。ヤツの力によって“感染”した同僚が次々とスライムと化していく。その感染力は凄まじく、たちまち収容されている福祉部門のオフィサーが半分近く犠牲になった。そんな元同僚であるスライムの群れが目前に迫ったときは、すわ俺もいよいよここまでかと思ったものだ。直後、管理職の鎮圧部隊がわらわらとやって来た。俺は元同僚が潰れてゲル状の身体を撒き散らすのを、ただただ通路の隅っこで震えながら見ていた。支給された拳銃を取り出すことも忘れて。
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    アロマきかく

    MOURNINGコービン君から見た緑の話。
    と見せかけて8割位ワシから見た緑の話。未完。
    書き始めたらえらい量になり力尽きて改めて緑視点でさらっと書き直したのが先のアレ。
    コービン君視点、というかワシ視点なのでどうしても逆行時計がなぁ。
    そして33あたりから詰まって放置している。書こうにもまた見直さないといかんし。

    緑の死体の横で回想してるうちに緑の死体と語らうようになって精神汚染判定です。
     管理人の様子がおかしくなってから、もう四日が経つ。



     おかしくなったというよりは……”人格が変わった”。その表現が一番相応しい。むしろそのまま当てはまる。
     Xから、Aへと。

    「記憶貯蔵庫が更新されたらまずい……それまでになんとかしないと……」
     思い詰めた様子でダフネが呟く。続くだろう言葉はおおよそ察しがついていたが、念のため聞いてみる。
    「記憶貯蔵庫の更新をまたぐと、取り返しがつかないんですか?」
    「……多分」
    「多分、とは」
    「似た状況は何回かあった。ただし今回のような人格同居じゃなしに、普段はXが表に出ていてAは眠っている状態に近い……っつってた、管理人は。相変わらず夢は覚えてないし、記憶同期の際に呼び起こされるAの記憶は、Aが勝手に喋ってるのを傍観しているような感じだったらしい」
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