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    糸遊文

    テキトーに息してます。

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    糸遊文

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    絢が女学生の頃の物語。
    絢×モブ(下級生)
    女学校での姉妹制度なるものを書いてみたかったのです……
    中途半端なところで投げたけど。

    #一次創作
    Original Creation
    #短篇
    shortStory

    野薊の冠を 学び舎に集う少女達に一人一人与えられる磨き上げられた椅子と机、規則正しく並んだ其れ等にひっそりと潜む甘く濁った秘密が有る。

     窓側一番奥の机が私に与えられた席で、今日も退屈な時間をどう過ごそうかと憂いながら椅子を引いたのだった。鞄から教科書や筆記用具を取り出して机の中へ収めようとした時、真っ白な封筒がひらり、と膝に舞い落ちる。差出人の名前は書かれておらず、誰からだろうかと訝しみながら封を開けた。

    廿樂つづら あや
     前略、私は高千穂 桐子と申します。
     校舎へと向かう桜並木を歩む絢様のお姿を拝見し――』

     真っ白な便箋に少し丸味を帯びた可愛らしい文字が彩り、見慣れた社交辞令にも受け取れる文言が並んでいた。なんとまぁ、面倒な事を……と愚痴をこぼして仕舞いそうになる。
    「まぁ! 絢さん、また恋文を戴いたのですか?」
    「違いましてよ、これはお目のお伺いですわ」
    「絢さん、お素敵ですからねぇ。学生だけでなく、先生方からもお声が、」
     きゃぁ、きゃぁと楽しく小鳥のように囀る同級生達に申し訳なく思いつつ、溜め息を吐かずには居られなかった。
    「絢さん、大変ですわね」
     唯一、私に同情して労ってくれる友人は彼女だけだった。
    「また、泣かせてしまうと思うと……」
    「ぇっ?! 絢さん、この方もお目にしないのです?」
    「こんなにも熱烈な恋文を認めて下さっている……可愛らしい子みたいですのに」
     きょとん、と可愛らしい顔をしていたり、残念そうにしている同級生達に申し訳なさそうな顔を取り繕いながら、嘘を吐く。
    「可愛らしい子だと思うのだけれど、私には決めている子が居ますので……申し訳ないけれど、」
     遮るように、わっと声高く囀る小鳥達は大きな瞳を輝かせ、頬を少し赤らめて詰め寄る。
    「絢さん、お決めになった子がいらしたの?!」
    「どのお方ですか? これまでお目にした方がいらっしゃらなかったので……その、気になっておりました」
     咄嗟に吐いた嘘が思いの外、彼女達の好奇心を煽ってしまったようで。どうしたものだろうか、と考えあぐねる。そんな私に先程までずっと黙っていた友人が、そっと手を差し伸べてくれた。
    「絢さん、まだ口説き中ですの。お相手の方がとっても恥ずかしがり屋さんらしくて……皆さんも温かく見守っていましょう?」
    「そ、そうですわね」
     薄く形の良い唇にそっと、人差し指を当てて、柔らかく微笑んで黙らせる。ちらり、と目配せすると私の耳元に唇を寄せて私だけに伝わる声量で、上手くいったね、と囁いた。きゃぁぁっ、という耳を劈く雑音は聞こえないふり。

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    糸遊文

    PAST『花瓶と眼』をまるっと書き直そうとしていた跡を発見した。
    花瓶と眼 私はいつも通りに今日一日を終えようとしていた。夕陽が海に沈み、月が淡く照らす夜闇を泳ぐように漂う。歩き慣れたアスファルトの路をお腹が空くような匂いを嗅ぎながら進む。家々から漏れる小さな瞬きを眺めながら、少し寂れた二階建てのアパートの前までやってきた。カンカンカンッと軽快な音を立てながら非常階段を上がり、二階最奥の扉へ。手慣れた様にノブを捻る。小さな軋みを立てながら私を歓迎した。
    「やぁ」
     いつものように狭い玄関に足を踏み入れながら声を掛けるのだが、今日は何やら雰囲気が違う。いつもなら煌々と輝いている電灯は眠っていて、なんとも言えない錆びた鉄のような香りが微かに漂っている。なんの匂いだろうか、首を傾げながら靴を脱ぎ捨て奥へと入る。ゴミ袋や服が乱雑に置いてある小さな部屋。開け放たれた窓から吹き込む風に揺れるカーテンと干しっぱなしの服たち。闇夜を全て暴かんとする満月の光を恐れる様に部屋の隅に身を縮こめる影。私は息を潜め、そっと近付いてみる。影は私に気が付いたのか、勢い良く飛び出し私を押し倒した。ひんやりとした小さな掌が私の首を絞め、石榴の様な紅い瞳が私を射貫く。
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