仮初だらけの箱庭 千歳緑色の羽織の裾がゆるり、と翻る。紺碧の空から、真っ白な0と1が連なって降り注いでは消えていった。赤煉瓦が綺麗に敷き詰められてた路をゆっくりと辿る下駄の音が、からん、ころんと響く。
薄墨色に染まった不揃いのビル群を漂っていると、埋もれるように喫茶店がひっそりと佇んでいた。そこに一人の青年が立ち止まる。翼の形をしたノブにそっと手を添えて、扉を押し開いて中へと歩を進めた。
――からん。
渇いた鈴の音が彼の訪れを知らせ、芳醇な香りが迎え入れる。彼は悠然と奥へと進み、最奥の窓際の席へと向かった。柔らかな陽の光が降り注ぎ、懐かしい温かみを彼に与える。
――ことん。
小さな音を立てて、一対の珈琲カップが置かれた。ゆらゆらと揺蕩う湯気に乗って、ほろ苦い香りが彼の鼻孔を擽る。真っ白なカップに注がれた珈琲がゆらり、と波紋を描いた。
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