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    syako_kmt

    むざこく30本ノック用です。
    成人向けが多いと思うので、20歳未満の方はご遠慮下さい。

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    むざこく30本ノック④
    29日目
    水族館

    #むざこく30本ノック
    random30Knocks
    #むざこく
    unscrupulousCountry

    水族館 考えたら今までデートらしいデートをしたことがなかった。
     仕事で知り合い、常に一緒にいるうちに次第にそういう仲になり、仕事柄国内外を共に飛び回っているので今更どこかに出掛けたいなど考えたことがなかった。その上、仕事中もプライベートも四六時中一緒にいるのだ。改めて出掛けることを目的とした外出をしたことがなかったのだ。
    「デートしませんか?」
     と黒死牟が提案した時は、何を今更と呆れた様子の無惨であったが、今朝は起こす前に起きており、ウォークインクローゼットの中であれやこれやと服を選んでいる。
     最終的にシンプルな格好で落ち着くのだが、無惨が自分と出掛けるからと、いつも以上に服選びに神経質になっているのは嬉しかった。そんな自分の女々しさが嫌になるくらいに。
    「今日はデートだからな」
     玄関を出る時に黒死牟の手から車の鍵を取り上げる。そして、助手席のドアを開け「どうぞ」と乗るように促した。
    「運転くらいは私が……」
    「今日のお前は秘書ではなく、私の恋人だ」
     そう言われ、照れながら助手席に乗った。運転席に座った無惨は顔の半分が隠れるくらい大きなサングラスをして、高いエンジン音を響かせた。
     無惨の運転は少々荒っぽいところがあるが、大事な恋人を乗せているから、と今日は安全運転を心掛けていた。
    「それで、どこに行きたい?」
    「え?」
    「デートだろう? お前の行きたいところに連れて行ってやる」
     全く考えていなかった黒死牟は助手席で完全にフリーズしてしまう。そんな黒死牟を見て、無惨は小さく笑った。
    「そうだな、折角朝早く出たから、ベタなところだと遊園地、動物園、水族館……あとは山上にドライブに行くとか、海岸線を走るとか、サービスエリアや道の駅を巡るとかでも……」
    「ホテルに直行とかじゃないんですか……?」
    「お前、今まで、どんな相手と付き合ってきたのだ……」
    無惨が明らかに引いているのが解り、黒死牟は真っ赤になる。
    「まぁ、私はお前と一日中ホテルで過ごすというのでも全然構わないが、お前がデートしたいなんて言うのは珍しいからな。普段しないことをしよう」
    「……では、水族館で」
    「了解」
     無惨は滑らかに車を走らせる。カーステレオから流れるプレイリストの曲に合わせて口ずさむ無惨の歌声がとても心地好かった。

     休日の水族館は家族連れやカップルでごった返し、入場に少々時間が掛かったものの、中に入ると人気のイルカショーや魚と触れ合えるコーナーなど日の当たる明るいところに人が流れていく。青い照明に照らされた涼しげで暗い館内は、ちらほらとした人しかおらず、大きな水槽の前で無惨は熱心に解説パネルと魚を見比べている。かと思えば、撮影OKと書かれているので、スマホで魚の群れや大きなクジラを撮影したり、キラキラした熱帯魚に目を輝かせている。
     黒死牟に行き先を選ばせた割に一番楽しんでいる無邪気な姿を見ると、黒死牟は胸の奥が温かくなり、少し離れた場所で見守っていたが、突然腕を引っ張られ、インカメラに切り替えたスマホで並んで撮影させられた。
    「ブログに載せるから、もっと楽しそうな顔をしろ」
    「載せるんですか?」
    「載せる。お前との貴重なデートだぞ? 載せるに決まっているだろう」
     今まで何度も無惨のブログに登場しているが、それはあくまでもスタッフの一人として写り込んだだけであり、私服姿の完全プライベートの無惨の横に並んで写真を撮ったことはない。
    「私はちょっと……」
    「駄目だ、命令だ」
     そう言われると抵抗出来ず、水槽の前で二人寄り添って写真を撮った。
     それからもはしゃぐ無惨と少し距離をあけて黒死牟は歩いていた。水槽のトンネルをくぐり頭上の魚を見上げていると、無惨はそっと黒死牟の左手を握る。
    「デートなのだ、もっと近くに寄れ」
    「……はい」
     青い淡い光に照らされた無惨の顔が美しすぎて、抵抗できず静かに従った。
     ふわふわと軽やかに泳ぐ、透き通ったクラゲを見ていると緊張が緩んでいく気がした。永遠にこの水槽の前にいたいと黒死牟が見入っていると、無惨は大きな溜息を吐いた。
    「お前、どうせ良くないことを考えているだろう」
     何も言えず黙り込む黒死牟の手を骨が軋むほどに強く握る。
    「このデートを最後に……とか、最後にデートをするにしても人の少ない場所で……とか、別れ話をするつもりだろう」
    「何でもお見通しですね。そのつもりです」
     ゆったりと水槽の中を漂うクラゲを見つめながら黒死牟は答えた。
    「別に無惨様のことを嫌いになったとか、仕事を辞めるつもりもないのですが、この関係は続けるべきではないと思っています」
    「またそんな面倒臭いことを……」
     黒死牟がこういった話を始めると長期戦になる。黒死牟は無惨が根負けしそうになるくらい頑固な一面があるのだが、こればかりは譲れないので無惨は呆れて黒死牟の腕を引っ張り、館内のカフェに向かった。
    「もう何度、その話をした? 私の将来だ、世継ぎだ、そんな面倒臭いことを考えるな」
    「考えます。私は無惨様の恋人である前に秘書です。鬼舞辻家の繁栄を考えるのが私の役目です」
    「あー、もう鬱陶しい!」
     無惨は怒りながら、小さな箱を乱暴に机に置いた。
    「ちゃんとサプライズの演出も用意したかったのに、お前が突然言い出すから悪いのだ!」
    「これは……」
    「開けて見ろ! このサイズの箱の中身はひとつしかないだろう!」
     無惨はガチギレで席を立ち、飲み物を買いに行った。黒死牟は恐る恐る白いリボンをほどき、箱を開けると同じ色のリングケースが入っており、「Marry Me」とシルバーの文字で刻印されている。
     中を見ずに固まっている黒死牟を見て、アイスコーヒーをふたつ持ってきた無惨の機嫌はますます悪くなる。
    「無惨様……これは……」
    「そんな簡単な英語も読めないのか? コーヒーぶっかけるぞ」
     テーブルに置いた無惨は箱を取り上げ、リングケースの蓋を開けて中身を見せながら黒死牟に跪いた。
    「私と結婚しろ。返事は不要、これは命令だ」
     ランチタイムが近付き、周囲に人がわらわらと集まってくる。「あれ、鬼舞辻議員じゃない?」とひそひそ話す声が聞こえ始め、黒死牟はその指輪を受け取れずにいる。
    「さっさと受け取れ。私は早くイルカのご飯の時間を見に行きたいのだ」
     それでも受け取れない黒死牟だが、周囲から拍手や歓声が聞こえ、もう後には引けない状態である。
    「ここで私に恥をかかせたら、一生下僕としてこき使うからな」
    「別にそれでも良いです……無惨様のパートナーなんて荷が重すぎます」
    「煩い。早く受け取れ」
     そう言われ、黒死牟は渋々指輪を受け取り、無惨と並んで周囲に笑顔を振りまいた。

     イルカのご飯を見る為、屋外エリアに移動する時、無惨と黒死牟は手を繋ぎながら話した。
    「私は一生、お前を手放す気は無いし、お前が別れて欲しいと懇願しても絶対に別れるつもりはない。その時はお前を殺して私も死ぬ」
    「そんなめちゃくちゃな……」
     頭を抱える黒死牟と正反対に、スタッフのイルカの説明を聞きながら、イルカがイワシを食べる様子を無惨は楽しそうに見ている。
    「お前は今日、私とここに来て楽しくなかったか?」
     太陽を受けて輝くイルカに負けないくらい無惨の笑顔は輝いている。思わず「めちゃくちゃ楽しいです」と即答すると、無惨は声を出して笑う。
    「その気持ちだけで、これからも上手くやっていけると思わないか? ほら、次はペンギンのご飯を見に行くぞ」
     あぁ、この人には敵わない。黒死牟は諦めて無惨の手を握り返した。
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    TRAININGむざこく30本ノック④延長戦
    7日目
    シンプル、カジュアル、ラフなペアコーデで、公開用のオフショットを撮影するむざこく
    シンプル、カジュアル、ラフなペアコーデで、公開用のオフショットを撮影するむざこく 無惨と黒死牟が仕事上だけでなく私生活でもパートナーであると公表してから、どれくらいマスコミに囲まれ、あることないこと書かれるかと心配していたが、取り立てて大きな生活の変化はなかった。
     職場は二人の関係を元から知っていたし、世間も最初は騒ぎ立てたものの「鬼舞辻事務所のイケメン秘書」として有名だった黒死牟が相手なので、目新しさは全くなく、何ならそのブームは何度も来ては去っている為、改めて何かを紹介する必要もなく、すぐに次の話題が出てくると二人のことは忘れ去られてしまった。

     そうなると納得いかないのが無惨である。
    「わざわざ公表してやったのに!」
     自分に割く時間が無名に近いアイドルの熱愛報道よりも少ないことに本気で立腹しているのだ。あんな小娘がこれまたションベン臭い小僧と付き合っていることより自分たちが関係を公表した方が世間的に気になるに決まっていると思い込んでいるのだが、職場内だけでなく国内外でも「あの二人は交際している」と一種の常識になっていた上に、公表を称えるような風潮も最早古いとなると、ただの政治家の結婚、それだけなのだ。
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    TRAININGむざこく30本ノック③
    15日目
    陽光のもとに並んで立てるようになった二人が、それぞれ何を思って何を語らうのか
    「ほら見たか!これで恐れるものなぞ何もないわ!」とかつてないほど昂るのか、「案外大したことないわ、つまらんな」と吐き捨てるのか、「太陽の方がやはりお好きで?」「白昼にも月は出ておるわ馬鹿者」みたいな気楽な会話になるのか
    陽光のもとに並んで立てるようになった二人が、それぞれ何を思って何を語らうのか  それは初恋の憧れに似ていた。
     手の届かない遠い存在という意味か、遠い昔の燦爛とした断片的な記憶のせいか、その強い「憧れ」が根底にあるから黒死牟とは意気投合したのかもしれない。
     自分たちにとって太陽とは最も忌むべき存在であり、その反面、強く憧れ、恋い焦がれた存在であった。
     今でも朝日を見ると、今際の際を思い出し身構える。しかし、その光を浴びても肌が焼け落ちることはなく、朝が来た、と当たり前の出来事だと思い出すのだ。

    「今日も雲ひとつない晴天ですね」
     黒死牟が車のドアを開けると、その隙間から日の光が一気に差し込む。こんな時、黒死牟のサングラスが羨ましいと思うのだが、まさかサングラスをしたまま街頭に立ち、演説をするわけにはいかないので日焼け止めクリームを丹念に塗り込む程度の抵抗しか出来ない。
    2129

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    TRAININGむざこく30本ノック③
    17日目
    黒死牟が髪をバッサリ切った時の無惨様のリアクション
    黒死牟が髪をバッサリ切った時の無惨様のリアクション 何か理由があって髪を伸ばしているわけではない。
     長い髪って手入れが大変ですよね、と言われるが、実はそうでもない。短い髪の時は月に一度は散髪に行かないといけなかったが、長い髪は自分で毛先を揃えるくらいでも何とでもなる。女性と違って髪が傷むだの、枝毛がどうだのと気にしたことがないので、手入れもせず、濡れた髪を自然乾燥させることにも抵抗がない。それに短い髪と違って、括っておけば邪魔にならないので意外と便利だし、括っている方が夏場は涼しいのだ。
     つまり、ずぼらの集大成がこの髪型だった。
     特殊部隊に入った時、長髪であることにネチネチと嫌味を言われたこともある。諜報活動をする時に男性のロングヘアは目立ち易く、相手に特徴を覚えられやすいから不向きだと言われ、尤もだなと思ったが、上官の物言いが気に入らなかったので、小規模な隠密班を編成する際の長に選ばれた時、全員、自分と背格好が近く、長髪のメンバーだけで編成し、危なげもなくミッションを成功させたことがある。だが、自分の長髪にそこまでこだわりがあったわけではなく、単なる反発心だけである。
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    TRAININGむざこく30本ノック③
    13日目
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう 今日もやっと1日が終わった。
     朝から晩まで、あの鬼上司2人に扱き使われたのだ。
    「おい、零余子!」
    「はい!」
    「零余子!」
    「はいー!!!!」
     多分、この数年で確実に親より名前を呼ばれている。これまで割と要領良く生きてきたので、こんなに怒鳴り散らされることはなかった。
     初めは鬼舞辻事務所に就職が決まり大喜びした。
     今をときめくイケメン政治家、鬼舞辻無惨の下で働けるなんて……その上、彼は独身。もしかして、もしかする、未来のファーストレディになれるようなルートが待っているかもしれない!? と馬鹿な期待をして入職したのだが、それは夢どころか大きな間違いだった。
     毎日怒鳴り散らされ、何を言っても否定され、無惨だけでも心がバキバキに折れそうなのに、これまたイケメンの秘書、黒死牟が更にエグイ。まず行動原理が「無惨様のため」なので、無惨の怒りを買った時点で、どんな言い訳をしても通用しない。こちらに非が無くても、無惨に怒鳴られ、黒死牟にネチネチと嫌味を言われ、最悪のコンボが待っている。
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