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    syako_kmt

    むざこく30本ノック用です。
    成人向けが多いと思うので、20歳未満の方はご遠慮下さい。

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    むざこくアドベントカレンダー
    22日目
    待ちぼうけ

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    #むざこく
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    待ちぼうけ この鬼舞辻無惨を待たせることが出来る男は、この世でひとりしかいない。
     気の短い無惨が既に15分も待っているのだが、いかんせん電話も繋がらず、LINEの既読もつかないとなると「帰る」と一言伝えることが困難に思え、向こうから何らかの連絡があるまで待ってみようと思った。
     開放的なホテルのカフェラウンジ。一面ガラス張りになった外の景色を見ると、美しく整えられた庭園があり、高い天井から吊り下げられた豪奢なシャンデリアも含め、景色がとても良かった。その上、椅子の座り心地も悪くない。
     ウェイターを呼び止め、ぬるくなったコーヒーを改めて注文しなおした。スマホばかり見ているのも何と無くみっともない気がして、鞄の中から読みかけの文庫本を取り出した。
     まとまって読む時間がないので、冒頭だけ読んで放置していた。読みたい気持ちはあるので、常に鞄に入れていたが、ページを開くことすらなかった。
     改めて冒頭から読み直し、テーブルに置かれた新しいコーヒーにも気付かず、無惨は真剣に読み始めた。

     一方の黒死牟は、後援会との打ち合わせが押しに押し、無惨から鬼着信が入っていることに気付いていたが出るわけにも行かず、会議室から解放された時に着信履歴を見ると、待ち合わせ時間から15分経過した時点で、ピタリと電話もLINEも寄越さなくなっていた。
     これは怒って帰ったな……と思ったが、取り敢えず現地に向かうことが礼儀だと思い、待ち合わせ場所のホテルまでタクシーを飛ばした。
     待ち合わせ時間に大幅に遅刻しているが、タクシーを降りてから、走ってロビーにあるカフェラウンジへと向かう。開放的な空間を見渡すと、無惨の姿が見えた。
     その瞬間、自分を待ってくれていたという喜びで全身が震えた。帰って、もういないと思っていたので、この現実が受け入れられないくらいだ。
    「遅れて申し訳ありません!」
     走って座席に向かうと、無惨は右手を上げて真剣に本を読んでいた。
     長時間、コーヒーだけで席を占領するのは気が引ける為か、テーブルには食べもしないクラブハウスサンドウィッチと人気のモンブランが置かれている。
    「召し上がらないのですか?」
    「お前が食え」
    「畏まりました」
     黒死牟は席に着き、同じようにコーヒーを頼んだ。
     横長で両サイドに薄いチョコレートが飾られた、土台がチョコレートフィナンシェで出来たモンブランは人気のケーキで、来たら必ず食べようと思っていたので密かに嬉しかった。しかし、まずはクラブハウスサンドウィッチを食べたい心境だ。長丁場の話し合いで食事する暇もなかったので、目の前の食事は実に魅力的に見える。
     だが、遅れた謝罪もなしに、いきなりがっついては失礼だろうか、と無惨の様子を見たが、本に夢中のようで黒死牟が遅れた理由を語り、謝ろうとすると、多分待たせたことより、読書の邪魔をする方が怒らせるだろうと思い、黙って俯いていた。
    「食え」
    「はい……」
     おしぼりで手を拭いて、黒死牟は少々乾きつつあるサンドウィッチを口に運んだ。多少パサパサになっていても十分美味しいし、そんなことが気にならないほどに空腹だった為、そのまま、サンドウィッチとモンブランをぺろりと完食する。食べ終わっても尚、無惨はずっと本を読んでいる。左手側の残りページは僅かなので、黒死牟は静かに読み終わるのを待っていた。
     ページを捲る細い指先、俯き、真剣な表情で本を読む姿が美しくて、見ているだけでも退屈しなかった。
     背表紙を確認すると無惨がずっと読みたいと言っていた本だ。普段は電子書籍で読んでいるが、じっくりと読み、何度でも読みたい本はやはり紙の本で買うと話していた。
     読み終えると、無惨は本をテーブルに置いて、冷たくなったコーヒーを一口飲んだ。
    「遅くなって申し訳ありませんでした」
    「こちらこそ。待たせて悪かったな」
    「いえ……」
     自分は大好きな無惨を眺めながら、美味しい食事とコーヒーまでいただけて割と有意義な時間を過ごしていた。だが、無惨は連絡のつかない黒死牟を待ちながら、こうして読書をして過ごしていたのだ。
    「まさか無惨様がこの時間までここにいるとは思わず……」
    「帰ることも考えたが、まぁ、たまには待つのも悪くないと思って。おかげで本を読むことも出来たし」
     普段は出来ない時間の有効利用だと無惨は笑う。
     だが、夕焼けで染まる窓の外を見ながら、ぽつりと呟いた。
    「何度か、このままお前が来ないのではないか、と考えたりもした。だから、お前が来た時、少し安心した」
     無惨の言葉に胸が締め付けられる。自分もここに無惨がいてくれて、どれほど嬉しく、安心したか。今まで、こんな風に人を想い、愛したことはなかった。知らなかった感情を無惨と一緒にいると沢山覚えていくのだ。
    「私が無惨様のお側を離れることはございません」
    「そうか……」
     口許に笑みを浮かべて呟き、読み終わった本を鞄に仕舞った。
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    TRAININGむざこく30本ノック④延長戦
    7日目
    シンプル、カジュアル、ラフなペアコーデで、公開用のオフショットを撮影するむざこく
    シンプル、カジュアル、ラフなペアコーデで、公開用のオフショットを撮影するむざこく 無惨と黒死牟が仕事上だけでなく私生活でもパートナーであると公表してから、どれくらいマスコミに囲まれ、あることないこと書かれるかと心配していたが、取り立てて大きな生活の変化はなかった。
     職場は二人の関係を元から知っていたし、世間も最初は騒ぎ立てたものの「鬼舞辻事務所のイケメン秘書」として有名だった黒死牟が相手なので、目新しさは全くなく、何ならそのブームは何度も来ては去っている為、改めて何かを紹介する必要もなく、すぐに次の話題が出てくると二人のことは忘れ去られてしまった。

     そうなると納得いかないのが無惨である。
    「わざわざ公表してやったのに!」
     自分に割く時間が無名に近いアイドルの熱愛報道よりも少ないことに本気で立腹しているのだ。あんな小娘がこれまたションベン臭い小僧と付き合っていることより自分たちが関係を公表した方が世間的に気になるに決まっていると思い込んでいるのだが、職場内だけでなく国内外でも「あの二人は交際している」と一種の常識になっていた上に、公表を称えるような風潮も最早古いとなると、ただの政治家の結婚、それだけなのだ。
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    TRAININGむざこく30本ノック③
    13日目
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう 今日もやっと1日が終わった。
     朝から晩まで、あの鬼上司2人に扱き使われたのだ。
    「おい、零余子!」
    「はい!」
    「零余子!」
    「はいー!!!!」
     多分、この数年で確実に親より名前を呼ばれている。これまで割と要領良く生きてきたので、こんなに怒鳴り散らされることはなかった。
     初めは鬼舞辻事務所に就職が決まり大喜びした。
     今をときめくイケメン政治家、鬼舞辻無惨の下で働けるなんて……その上、彼は独身。もしかして、もしかする、未来のファーストレディになれるようなルートが待っているかもしれない!? と馬鹿な期待をして入職したのだが、それは夢どころか大きな間違いだった。
     毎日怒鳴り散らされ、何を言っても否定され、無惨だけでも心がバキバキに折れそうなのに、これまたイケメンの秘書、黒死牟が更にエグイ。まず行動原理が「無惨様のため」なので、無惨の怒りを買った時点で、どんな言い訳をしても通用しない。こちらに非が無くても、無惨に怒鳴られ、黒死牟にネチネチと嫌味を言われ、最悪のコンボが待っている。
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