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    syako_kmt

    むざこく30本ノック用です。
    成人向けが多いと思うので、20歳未満の方はご遠慮下さい。

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    むざこくアドベントカレンダー
    16日目
    御伽噺

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    御伽噺「鏡よ、鏡」
     無惨がそう呼びかけると、壁掛けの古い鏡が不気味に光る。
    「この世で一番美しく、強いのは誰だ」
    「それは無惨様でございます」
    「その通りだ」
     誇らしげな無惨の顔が鏡に映る。この世で最も美しい容姿で人々を魅了し、そして誰よりも強い力で人々の命を踏み躙り、村を燃やし、女も子供も容赦なく殺してきた。
     美しく傍若無人な王に人々は従うしかなかったのだ。
    「ですが、無惨様。それは『今』の話であり、これから先は解りません」
    「何を言っている」
     宝石を散りばめた剣を鏡に向ける。しかし、鏡はそんな脅しに怯むことなく話を続けた。
    「無惨様の美しさも強さも永遠ではありません。あと数年もすれば容色は衰え、若く優れた剣士が現れ、あっという間に無惨様の力を上回るのです」
    「黙れ」
     剣の柄で壁を叩くが、鏡の話は止まらない。
    「そうですね、東の国にいる継国の王子、あの王子はあと数年もすれば立派な剣士に育つでしょう。日輪のように眩しい輝きを放ち、神話の英雄のような美丈夫で、剣の腕も素晴らしい。近い将来、この世で一番美しく、強い者は継国の王子と私は答えるでしょう」
     その話を聞き、無惨は怒りに任せて鏡を叩き割った。
    「愚かな鏡め」
     床に散らばる破片を更に踏みつけ、無惨はマントを翻して歩き出す。
    「子供のうちに始末せねば」
     そう言って、無惨は飼っている鴉を窓から放った。継国の王子とやらを見てくること、そして、森に誘き出せ、と。
     無惨は真っ赤な林檎に己の血を注ぎ込む。無惨の血には強い毒性があり、口にした者は死んでしまうのだ。この毒林檎を食べさせて継国の王子を殺してしまおう、そう考えたのだ。
     そして、無惨の鴉は優秀である。継国の王子を暗い森へと連れ出したのだ。嬉々としてその森に向かうと、そこにいた王子は、青白い月のような神秘的な輝きを放ち、子供とは思えない憂いと色気を孕んだ表情をしていた。端整な顔立ちをしており、確かにあと数年もすれば目の覚めるような美男子になるだろう。
    「こんなところでどうしたの?」
     美女の姿に化けた無惨は、継国の王子に優しく声を掛ける。
    「鳥を追いかけていたら迷ってしまって……」
    「そう……怖かったでしょう」
     ケープを脱ぐと、御伽噺に出てくるような美人が現れたので、継国の王子は顔を赤く染める。無惨は屈んで王子の顔を見た。鏡の説明とは雰囲気が大分違った。繊細で、儚げで、無惨が好むタイプの美少年であった。
    「私が森の外まで案内しましょう」
    「ありがとうございます」
     そっと王子の手を握ると、その手は子供でありながら、しっかりと剣士の手をしていた。その生真面目な感じも好感が持てる。無惨は歩きながら、森に毒林檎を投げ捨てた。
     森は抜けるが、そこは無惨の居城である無限城であった。
    「継国の王子、ここで私の妃となるが良い」
     男の姿に戻った無惨は逃げようとする継国の王子を担ぎ上げ、王子を塔に閉じ込めた。
     良いものを見つけたと嬉しそうに自室に戻ると、鏡は自力で復元されていた。
    「しぶとい奴め」
     舌打ちをするが、思っていたより可愛かった継国の王子を手に入れたので、無惨は蘇った鏡に問いかける。
    「鏡よ、鏡」
    「何でございましょうか、無惨様」
    「継国の王子は私の妃として生きることになった。なので、私より強く美しい者はいなくなったよな」
     勝ち誇ったように笑う無惨に向かって、鏡は冷たく言い放つ。
    「どこまでも愚かな王よ、私の話を最後まで聞かないから、こうなるのだ」
    「何を……」
     顳顬に青筋が浮き上がり、本気で怒った表情が鏡に映る。
    「お前の捕えた継国の王子は双子の兄である月の君だ。私が言ったのは双子の弟である日輪の君だ。あぁ、残念だ、兄を奪い返す為に、日輪の君はお前を殺しに来る。そこで真に美しく強い者は、日輪の君になるのだ」
     無惨はマントを翻し、塔の頂点に閉じ込めた王子の元へと向かう。
     まさか、双子だなんて思いもしなかった。だが、鏡が言った特徴とはあまりにも違っていたので違和感はあった。
     茨で出来た鍵を外し、扉を開けると、王子は嬉しそうに無惨を見た。国に送り返してやろうと思ったが、王子は頬を赤く染め、恭しく頭を下げるのだ。
    「不束者ではございますが、どうぞ、末永く可愛がって下さい」
     そう、王子は無惨に恋をしてしまったのだ。
     王子は自らの意思で無惨の元に居着き、いずれ大軍を率いて兄を取り返しに来ようとする弟と戦うのは、もう少し先の話。
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    TRAININGむざこく30本ノック④延長戦
    7日目
    シンプル、カジュアル、ラフなペアコーデで、公開用のオフショットを撮影するむざこく
    シンプル、カジュアル、ラフなペアコーデで、公開用のオフショットを撮影するむざこく 無惨と黒死牟が仕事上だけでなく私生活でもパートナーであると公表してから、どれくらいマスコミに囲まれ、あることないこと書かれるかと心配していたが、取り立てて大きな生活の変化はなかった。
     職場は二人の関係を元から知っていたし、世間も最初は騒ぎ立てたものの「鬼舞辻事務所のイケメン秘書」として有名だった黒死牟が相手なので、目新しさは全くなく、何ならそのブームは何度も来ては去っている為、改めて何かを紹介する必要もなく、すぐに次の話題が出てくると二人のことは忘れ去られてしまった。

     そうなると納得いかないのが無惨である。
    「わざわざ公表してやったのに!」
     自分に割く時間が無名に近いアイドルの熱愛報道よりも少ないことに本気で立腹しているのだ。あんな小娘がこれまたションベン臭い小僧と付き合っていることより自分たちが関係を公表した方が世間的に気になるに決まっていると思い込んでいるのだが、職場内だけでなく国内外でも「あの二人は交際している」と一種の常識になっていた上に、公表を称えるような風潮も最早古いとなると、ただの政治家の結婚、それだけなのだ。
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    TRAININGむざこく30本ノック③
    13日目
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう 今日もやっと1日が終わった。
     朝から晩まで、あの鬼上司2人に扱き使われたのだ。
    「おい、零余子!」
    「はい!」
    「零余子!」
    「はいー!!!!」
     多分、この数年で確実に親より名前を呼ばれている。これまで割と要領良く生きてきたので、こんなに怒鳴り散らされることはなかった。
     初めは鬼舞辻事務所に就職が決まり大喜びした。
     今をときめくイケメン政治家、鬼舞辻無惨の下で働けるなんて……その上、彼は独身。もしかして、もしかする、未来のファーストレディになれるようなルートが待っているかもしれない!? と馬鹿な期待をして入職したのだが、それは夢どころか大きな間違いだった。
     毎日怒鳴り散らされ、何を言っても否定され、無惨だけでも心がバキバキに折れそうなのに、これまたイケメンの秘書、黒死牟が更にエグイ。まず行動原理が「無惨様のため」なので、無惨の怒りを買った時点で、どんな言い訳をしても通用しない。こちらに非が無くても、無惨に怒鳴られ、黒死牟にネチネチと嫌味を言われ、最悪のコンボが待っている。
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