姫花「ね、兄貴。兄貴にお願いが2つあるの」
花依斗「聞くだけ聞いてやる」
姫花「へへ、ありがと。1つ目は俺たちと一緒に依頼に行ってほしい!」
花依斗「俺たち、というのはお前と花葉か?」
姫花「そ!お花三兄弟で依頼行きたいの!あ、雪には許可とってるよ。もちろん成星にも」
花依斗「それで、2つ目は?」
姫花「花葉を説得してほしい!」
花依斗「なぜだ?お前たちの依頼なんだろ?」
姫花「そうなんだけどさぁ。今回の依頼された場所が“出る”らしくて。噂程度なんだけどさ、それ聞いたら花葉が行かないの一点張りになっちゃった」
花依斗「その依頼というのは心霊スポットの調査か何かか?」
姫花「うーん、心霊現象が直接的に関わるものでは無いんだけど。廃墟の調査でさ?その場所で過去に起きた事件の記事を書きたいっていう研究者さんから、何かおいしい証拠品でもあったら写真を取るなり、持ち帰れそうなものは持ち帰ってきてほしいって」
花依斗「…なぜ本人が行かない?」
姫花「なんかね、異型種の目撃情報もあるらしくて。その研究者さん、魔法は使えるけど戦闘が超苦手だから無理なんだって。だから俺たちに頼まれた」
花依斗「…それで、花葉はビビって行きたくない、と」
姫花「そ。本当に出るか、出ないかの調査ではないにしろ、そんないかにも出そうなとこに自分から行くなんてありえねぇ!…って」
花依斗「…俺が説得してどうにかなるもんなのか?」
姫花「兄貴が一緒ってだけでだいぶ安心じゃん?だからー、兄貴のその超〜イケボで、俺も一緒に行くから安心しろって言ってやってほしいわけ」
花依斗「…で、俺はなんのためにお前たちについて行くんだ?調査が目的ならお前たちだけでも十分だろう」
姫花「俺たちの安心と安全のため」
花依斗「テメェらだけで行ってこいよ…」
姫花「やだやだー。俺も兄貴と一緒がいい〜。それに、俺が言っても全っ然ダメだったけど、兄貴が一緒に来てくれるってなったら花葉だって来てくれると思うし!」
花依斗「はぁ…あまり期待はするなよ」
姫花「へへ、ありがと!超期待してる!じゃ、早速花葉を説得しに行こ〜!」
…
…
姫花「はーなばっ!」
花葉「何だよ。あの依頼なら俺は行かねえよ」
姫花「その話なんだけどさぁ、俺、超強力な助っ人呼んできたんだよねー」
花葉「…超強力な助っ人って…誰?」
花依斗「…」
花葉「…え、兄貴?」
花依斗「ああ。俺も行ってやる」
花葉「…マジか。てか、だったらお前と兄貴で行ってくればよくね?」
花依斗姫花「…」
姫花「ちょ、ちょっとタイム」
姫花「ねぇ、兄貴。初手からクソド正論かまされたんだけど」
花依斗「…お前、何の策もなくここに来たのか」
姫花「だって〜…兄貴がいるってだけでいけると思ったんだもん」
花依斗「…花葉をナメすぎだろお前」
姫花「じゃ、兄貴。こっからは兄貴のアドリブでよろしく!」
花依斗「はぁ!?お前な…!」
花依斗「…花葉。俺が行くだけでは不十分か?」
花葉「い、いや…そんなこと…。むしろわざわざ兄貴に来てもらうなんて逆に申し訳ないくらい。だけど…兄貴がいたところで出るもんは出るし…」
花依斗「…お前が恐れているのはその出るかもしれない“アレ”だけか?」
花葉「ま、まぁ…そうだけど…」
花依斗「…」
花葉「…何だよ。出るかもわかんないもんにビビって腑抜けってか?兄貴には怖いもんなんてねーからわかんないんだ…」
花依斗「いや、俺にも怖いものはある」
花葉「え…何?」
花依斗「…お前たちを失うことだ」
花葉「え…?」
花依斗「今回の依頼は少し特殊だ。依頼の場所も、内容も。だからお前たちに何かあれば危険だろう。だからこうして俺も行く」
花葉「…兄貴、オバケ倒せんの?」
花依斗「ふ、それはわからん。俺は生憎オバケには遭遇したことがないからな。だが怖いなら俺にくっつくなり後ろに隠れるなりしていればいい。俺はそのためにお前たちと行くからな」
花葉「…それマジで言ってる?」
花依斗「マジだ」
花葉「…俺…マジでずっとくっついてるかもしんないけど?」
花依斗「構わない。それでお前の恐怖が紛れるのなら」
花葉「……。…じゃあ…行ってもいい」
花依斗「ふん、そうか」
花葉「その…ちゃんと戦闘はやるからそれ以外は…」
花依斗「ああ。お前が満足するまで俺のそばにいろ」
花葉「…あ…ありがと」
姫花「……ふふっ…はっはっはっはっ!!」
花依斗「おい、何を笑っている」
姫花「いやぁ、もう兄貴がイケメンすぎた!超優しい声でおまけに跪いて…ふふふ、はぁ、いいもん聞けた。いつもそのくらい優しい声で話せばいいのに」
花依斗「あ?やるわけねえだろ。気色悪い」
花葉「今の超〜優しい兄貴、マジで完璧なイケメンだったけどな?」
花依斗「ふん、普段が完璧なイケメンではないとでも言いたげだな?」
姫花「そりゃだってさぁ、顔は超いいけど口悪すぎだし愛想無さすぎだし態度クソデカいじゃん」
花依斗「お前…さっき俺がやってやった恩を仇で返す気か?ならこちらもそれ相応の対応を取る」
花葉「え、兄貴来てくれないってこと…?じゃあ俺も無理」
姫花「あ〜ちょっとちょっとそれじゃ話が振り出しに戻っちゃうじゃん!はいはい、兄貴はどんな兄貴でも超完璧なイケメンお兄様ですよ〜っと」
花依斗「…ふん」
花葉「そういやよく考えてみたらどっちにしろ回復魔法が使える誰かに一緒に来てもらう必要はあったんじゃないか?」
姫花「あー、確かに。調査だけとはいえ、今まで全然経験ないとこだし、その方がよかったかも。…ん?じゃあ成星誘った方がよかった?」
花葉「…まぁ、成星さんもオバケとか見たらぶっ飛ばしてくれそうだしな、魔法で」
花依斗「おい、俺よりもあの貧弱な方を連れていく気か」
姫花「ぶはっ!貧弱ってあんたのバディでしょうが」
花依斗「あいつよりも物理も魔法も回復もできる俺の方がいいに決まっているだろう」
花葉「うん…まぁ兄貴以上に安心出来る人はいないかも。…戦闘以外の面でも」
姫花「まあね。なんか兄貴、暗いとこで発光しそうじゃん。暗い場所でも安心安心」
花葉「待って、俺が言いたかったのそういうことじゃないんだけど」
姫花「え?そうなの?」
花依斗「まず俺は発光しねえよ」
花葉姫花「ぶふっ…ご最もで」