梓白「ふふ、珍しいよね。セレナイトでもオブシディアンでもなく、俺たちが任されるなんてさ」
花依斗「ギベオンはどうした」
梓白「ふふん、うちはこの程度の仕事は引き受けませんよ。俺たちを動かしたいならもっと上物持ってきな」
花依斗「と、断ったんだな」
梓白「うちは安売りなんてしませんからね。それに今回の依頼、5人も要らないだろうし」
花依斗「それで、こいつを俺たちでどうするんだ?」
梓白「その前に…今回は助っ人を呼んできたのだ〜」
花依斗「…助っ人?」
梓白「彼にはここに来るよう言ってあるんだけど。来ないね」
花依斗「誰を呼んだんだ?」
梓白「ふふーん。…それは来てからのお楽しみ」
京「ごめーん!遅くなった!」
梓白「やぁ、待ってたよ。ってあれ?ケガしてるね。君にしては珍しい」
京「えへへ、さっきの依頼思ったより大変だったんだ〜」
梓白「樹に回復してもらってから来てよかったのに」
京「えへへ、しろにお願いがあるなんて言われるの嬉しかったんだもん」
梓白「それはそれは。君には少し悪いことをしたね」
京「しろは何も悪いことしてないよ?」
梓白「俺はそう思ってるの。…よく来てくれたね」
京「えへへ〜、俺、しろに頭わしゃわしゃされるの好き!」
花依斗「はぁ…そんなケガしてヘラヘラ笑ってんじゃねえよ。じっとしてろ」
京「おぉ〜!もう治った!」
花依斗「当然だ。回復魔法を使ったのだから」
京「かいとありがと〜!」
花依斗「っおい。勢いよく飛びつこうとするな」
京「わしゃわしゃしようとしただけだよ?」
花依斗「しなくていい。それをされて喜ぶのはお前くらいだ」
京「え〜、あずとかいつきだって喜んでくれるもん」
梓白「…樹は力の問題で君に抵抗できないだけな気がするけど」
花依斗「…されるがままのあいつが想像できる」
京「それでそれで、何のお話するの?」
梓白「今回は俺たちに君の力を貸してもらおうと思ってね」
京「うん!いいよ!」
花依斗「内容を聞いてから返事をしろ」
京「えへへ、どうせいいよって言うもん」
梓白「まずはこれに目を通してもらおうか」
京「ん〜…」
花依斗「…まさかこいつ依頼内容が理解できない、とかないよな?」
梓白「さすがにそこまでは大丈夫じゃない?どうかな?京」
京「戦うんだよね!!」
花依斗「…」
梓白「…ふふ、ざっくり言えばそうだね」
花依斗「…おい。本当に大丈夫なのか?」
梓白「…大丈夫。俺たちが説明していけば細かいところも理解できる…と思う」
京「ねぇねぇ、この3人で行くの?」
梓白「そ。この3人で行くなんて楽しそうでしょ?」
京「うんうん!楽しそう!でも…」
花依斗「?」
京「俺たち全員戦闘得意だよね。そんなに危ないの?」
花依斗「…ほう。こいつ、そういうのはわかるのか」
梓白「まあこのメンバーで行く程度の依頼ではあるかもね」
花依斗「ひとつ疑問だが」
梓白「はいはい、どうぞ?」
花依斗「俺たちが集まる程度の戦闘があるのをわかっていてなぜ七瀬を連れてこない?」
梓白「火属性の相性が悪すぎるから。彼の実力は俺が保証するけどわざわざ相性が悪いと分かっているところに放り込むなんてアホでしょ」
花依斗「では俺が呼ばれた理由は…」
梓白「もちろん思う存分雷を落としていただくためですよ?」
花依斗「ふん、悪くない」
京「じゃあ今回はしろも雷使うの?」
梓白「うーん、どうしようかねぇ。俺、普段は雷そこまで使わないからねぇ…」
花依斗「ほう?随分と弱気だな?では得意の暴風か氷漬けか」
梓白「ふふ、どうしよっかな〜。このメンバーなら大暴れしても問題ないよねぇ…」
花依斗「はぁ。俺たちまで氷漬けにするなよ」
京「うーん…」
梓白「どうしたの?」
京「俺も魔法使うの?」
梓白「いいや、使わなくていいよ。魔法は俺と花依斗に任せて、君は思う存分ぶった斬るといいよ」
京「うん!俺、がんばるね!」
花依斗「それで?何か策でも?」
梓白「俺と京が前線、花依斗は後衛で支援と回復をメインに。という感じで考えているけど。どうかな?」
花依斗「この俺に後ろに回れだと?思う存分雷を落とせと言ったのはお前だぞ」
梓白「仕方ないでしょ。回復できるの君しかいないんだから。それに後ろからだって魔法は撃てるでしょ」
花依斗「お前こそ後衛向きだろう」
梓白「いやだねぇ君、俺にそんなこと思ってたの?失礼しちゃうね。魔法特化だからって後衛向きとは限りませんよ」
京「ねえねえ、俺だけ前に出るのはダメなの?」
梓白「うーん、それでもダメではないけど…」
花依斗「お前に負担がかかりすぎる」
京「うーん、でも俺、しろにもかいとにもケガしてほしくない…」
花依斗「アホ抜かせ。俺やこいつが前に出たところでケガなんてしない。いらねえ心配する前にお前が怪我をしないように努めろ」
梓白「おや、おやおや?ふふふ。俺の実力を認めてくれているんだねぇ」
花依斗「あ?」
梓白「ふふ、何でもなーい。だけどね、京?これは花依斗の言う通りだ。俺も花依斗も前に出たところで死にはしないしケガもしない。だったら前に2人居た方が君の負担も少なくなる」
京「うーん…でも〜…」
陽「ねぇ、それ僕も混ぜてほしいな?」
花依斗「!」
京「あ〜!はる〜!」
梓白「…おや。陽様?盗み聞きなんて随分といい趣味していらっしゃる」
陽「戦闘なら僕の力も役に立つよ?」
梓白「君がどこから聞いてたか知らないからもう一度言うけど今回火属性は不利なんだよ。だから君は向かない」
陽「ぜーんぶ聞いてた。それでね、僕考えたんだけど聞いてくれる?」
梓白「はぁ…どうぞ?」
陽「京くんは魔法使わないんでしょう?だったら…僕も魔法を使わなければいい」
梓白「君、そこまでして行きたいの?」
陽「うん、行きたい。こんな楽しそうな依頼、僕に声掛けてくれないなんてひどいよ」
梓白「まったく。誰のためを思って声かけなかったと思っているんだか。ま、でも君がいた方が戦力がより安定するかな」
陽「うん、そうでしょ?それに京くんだけが前に立つ必要もなくなる。だから僕も連れて行ってくれるよね?」
梓白「…と、陽様が仰っていますがいかがですか?」
花依斗「俺は構わない」
京「うんうん!はるも一緒に行こ〜!」
陽「だ、そうですよ?」
梓白「…はぁ。はいはい、じゃあ無理はしないこと。いいね?」
陽「うん、もちろん。僕は君を置いて死んだりしないからね」
梓白「はいはい、それは大変心強いことで」
京「えへへ、はるも一緒なの嬉しい!」
陽「うん、一緒に頑張ろうね」
花依斗「…」
梓白「何か?」
花依斗「お前、ギベオンはそんな安売りしねぇ…とか言ってたよな?」
梓白「あぁ〜…まあ…結果、半数が…というか君以外がギベオンだね」
花依斗「いいのか?ギベオンのリーダーとしてのプライドとやらは」
梓白「リーダーとしてのプライド?俺はそんなの元から持ち合わせていませんから。それよりもさぁ…」
花依斗「?」
梓白「…ふふ。俺たちギベオンと一緒に戦闘行って、君が自信をなくてしまわないか俺は心配だなぁ」
花依斗「ふん、バカ言うな。お前たちが戦闘能力が高いのは元から承知の上だ」
梓白「おや、意外な回答がきたな。てっきり俺はついていけるとか言うと思った」
花依斗「何を勘違いしているか知らんが俺はお前たちについていけないのを前提に話していない。俺をギベオンに引き入れなかったことを後悔させてやる」
梓白「あ、根に持ってるのそっち?」
京「しろとかいとはなんの話してるの?」
陽「2人ともまた僕たちを放って仲良くしてるねぇ」
梓白「花依斗に一緒に頑張ろうね〜って言ってたんだよ。ね?」
花依斗「ふん。ああ、そうだな」
京「あ〜!そういう話だったら俺も混ぜてよ〜!」
陽「京くん、僕たちだって頑張るもんね?」
京「うん!頑張る!」
梓白「ふふ、これは面白くなりそうだ」
花依斗「はぁ…全員己の力量を理解して動けよ?」
梓白陽京「任せて!」
花依斗「…任せられる気がしない」