「瞳」 リンハルトは藍晶石みたいな瞳でよくベレトを凝視してくる。
大抵は好奇心に満ちたきらきらした眼差し。実験対象を見つめる学者然とした知的な双眸。
ベレトに炎の紋章が宿っていると知るや、リンハルトはことあるごとにまとわりついてはベレトを観察してきた。
(最初は自分に欠片も興味がなさそうだったのにな)
それを思い出す時、ベレトはいつも微苦笑してしまう。
ベレト自身はハンネマンに調べられるまで己が紋章持ちであることすら認識していなかったが、相当に珍しいものらしい。
そんなわけで彼が親愛の情を寄せてくるのも、興味深い研究対象であるということの延長だろうと思っていた。言葉からも表情からも溢れんばかりの好意が伝わってくるが、それ以上の意味はないだろうと。紋章学に対する情熱が別の形をとっているだけであろうと。
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