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    toaru_otaku_

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    タイトルの通りです。
    大昔に対戦した腐女子すごろくで大敗したので書きました。遅くなってすみません。
    再結成しないと出られない部屋、はよ……

    #こは斑
    yellowSpot

    相手の好きなところを言わないと出られない部屋 目が覚めると、見知らぬ部屋にいた。
     冷静に体を起こす。柔らかな手触りのベッドに寝かされていたらしい。というより、ベッドだけは寝入ったときのままの状態だった。
     横では、昨夜散々戯れた少年がすやすやと寝息をたてている。淡い桜色の髪は枕の上に流れている。あどけない顔をして眠るこはくを見、斑は静かに顔を上げた。
     向かって正面の壁には、時計が一つと大きな張り紙が一枚。
    「どういうことなんだあ、これ」
     張り紙にはデカデカと『相手の好きなところを言わないと出られない部屋』と記されていた。

     叩き起こしたこはくと二人で部屋中を探索してみたが、どこにもドアらしきものはなかった。手の届くところ、目の見えるところに窓や換気扇といった外部と繋がっている箇所もない。
    「もーええわ。わかった。言うたるわ」
     一時間ほど部屋を歩き回ったところで、こはくがため息とともにそんなことを言い出した。
    「けったくそ悪い。お腹も空いてきたしはよ出よ。えーっと、なんじゃ、どこで言えばええん……まええか。斑はんの好きなとこ! 顔! どうじゃ!」
     顔。思わずぺたりと自身の手を頬に当てる。
    「か、顔かあ……お気に召したようで何より……?」
     この顔で良かったなあという謎の安堵が五割、他に何かなかったのかという落胆が五割。複雑な心境の斑がしばし硬直していると、ぺらりと壁に貼られた紙が一枚足元に落ちてきた。
     二人揃って見上げると、これまでの張り紙が外れ、今度は『桜河こはく︰合格』『残り︰三毛縞斑』と記されたものが新たに現れていた。
    「どういう仕組みなんじゃ」
    「さあ」
    「ちゅうことで、はよ。わしのこと大好きな斑はんなら、こんくらい余裕じゃろ?」
     ここでそれを持ち出すのか。顔が熱くなるのを感じながらこはくを睨むが、少年はいたずらっぽく微笑むばかりだ。
     昨夜脱ぎ散らかした服はすべて消えていたので、二人はとりあえず毛布とシーツにくるまってベッドに腰掛けていた。ベッドの上にあったものだけはそのままらしく、下着はきちんと身に着けていたのが不幸中の幸いであった。それでも間抜けな格好であることに変わりはないが。
    「なぁなぁ、どこが好きなん? ん? わしんこと、けっこう大事で大好きな斑はん?」
    「蹴り落とすぞ」
    「できるん? あんなに足腰ガクガクしとったのに?」
    「あんまり俺の体力をなめないでほしいなあ。たしかに昨夜は盛り上がったが、眠りに落ちたのは君のが先だぞお」
     ぼそぼそと言い合いながらベッドの上で身を寄せ合っていると、徐々に「こんなところで何をしているのだろう」という脱力感がじわじわと押し寄せてきた。得体のしれない部屋だ。ついでに要求もふざけている。
    (なぜ俺が、見知らぬ誰かに君の好きなところを言わなきゃならない?)
    「なぁ……ンッ?」
     しつこいこはくの手をからめとって、そこにひとつキスを落とした。桜色の薄い爪。短く切り揃えられ、きちんとやすりをかけて丸く手入れされた、きれいな爪だ。
    「俺は、君の手が好き。指先が好き。……誰のことを考えて、ここの手入れを?」
     ふっ、と薬指に吐息を吹きかけると、とたんに少年の色白の頬に朱が差した。分かりやすい反応に思わず噴き出してしまった。
    「なっ、あっ、……斑は、」
    「おっ、合格だと。っとと……なんだあ? 揺れてる?」
     くらりとめまいに似た感覚を覚えて、こはくの手ごとシーツに手をついた。こはくに目をやると、ベッドにころりと転がっている。
     そのまましばらくじんわりと続く不快感に耐えていると、少しずつ気分が楽になってきた。まるで弱い地震のような不思議な振動がおさまると、斑はのそのそと顔を上げる。隣で同じようにあたりを見回したこはくが、「いつもの部屋じゃ」とくたびれた声でつぶやいた。
    「なんだったんや……夢?」
    「さあ……しっかし、ふうん。顔ねえ」
    「うっ……なんじゃ。なんか文句でもあるんか」
    「別に。俺は君のことが大好きで大切で案外すっごく大事なので、このくらいじゃ愛想を尽かしたりしないが。君ももう少し、咄嗟に気の利いたことを言えるようになるといいなあ」
     からかうように言って、ぴん、と額を弾いてやった。こはくが微妙にバツの悪そうな顔をして斜め下を向く。
    「やって……面白くないやん。どこの誰ともわからん人間に、斑はんの好きなとこなんか……教えたないし」
     返ってきた答えに、斑は数度瞬きをしたあと肩を揺らして笑いだした。
     なるほど、それはそうだ。俺だってそうだった。
     斑は笑顔のままこはくの身体を引き寄せて、その首筋に鼻先をうずめた。
    「んっ、なに……」
    「じゃあ、もう良いだろう。ここにはもう俺たちしかいない。教えてくれるよなあ」
     斑と比べるとまだ幾分かわいい喉仏を舌の先でくすぐると、こはくが呻きながらも得意げに笑った。
    「もちろん。嫌というほど教えたるわ、本人にならな」
    「楽しみだなあ」
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