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    suno_kabeuchi

    twst夢とi7の作品投下垢

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    suno_kabeuchi

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    i7/八乙女楽の誕生日動画を見たモブカップルのはなし

    ##i7_SS

    朱夏に延焼 なにこれ。
     午前0時丁度のこと。彼氏が推しだというアイドルの誕生日動画の衝撃に私は動作らしい動作を忘却した。あまりのことに脳が語彙力を落としてしまったらしい。ついでに認知機能をすべて遮断したらしく目の前の映像を理解することができなかった。情報量がおかしい。疑問符がポーズをキメては脳内で踊り狂っている。ミーム汚染じゃないんだからやめてほしい。
    「ありがとうございますありがとうございます!! 楽さんカッコ良すぎて俺百万回生きたわ」
    「猫かな?」
     動画を最後まで見届けた後に床に突っ伏した彼氏はびくびくと震えて幸せそうである。よかったね。ところでとても人様に見せられない顔してる自覚はあるかな?
     余韻に浸っている彼氏からそっと目を離す。しかし『最強』×『王子様』で筋肉ポーズを取るという発想に至るのはどういうことなのだろう。ムキムキの王子様は存在するだろうし筋肉はカッコいいとも思うが、なぜアイドルにやらせた。この彼氏から聞いている感じ、八乙女楽というかTRIGGERはギャグ路線のキャラではなかったような気がするのだが。少なくとも同じグループの九条天の誕生日動画はひたすらに可愛かったのを覚えている。サポートメンバーという四葉環と御堂虎於がノリノリでやっているところも面白さにジェットパックを搭載して駄目だった。アイドルは詳しくないけど、この三人が抱かれたい男上位勢なのは知っている。そんな男たちに何をやらせていると言うのか。かと思えば王道の『王子様』を突然差し込んでくるので笑えばいいのかときめけばいいのかわからなかった。ひたすらに情報量が多すぎる動画だった。数多の感情が出口で犇めき合っている。推しに押され、最終的に出力されるのは困惑だった模様。残当。そういえば八乙女楽は以前棗巳波の誕生日動画でオタ芸を打っていたことを唐突に思い出した。あれも脳味噌をレンチで殴られたような衝撃だった。その時もこの彼氏は興奮でどうにかなっていた。
    「八乙女楽最高すぎる、生まれてきてくれて本当にありがとうございます一生祝い続けます!! 健やかで楽しく色鮮やかな日々を送ってください宜しくお願いします!!」
     床に崩れ落ちていた彼氏が突如再起動する。マッシブなポーズを取っている。情緒と言動が激しいけど疲れないのだろうか。無言で冷房の温度を一度下げた。去年は去年ですごかったけど今年はレベルが違うな。
    「……そんなに好き? 八乙女楽」
    「イエスオフコースッ! クールな美貌にラグジュアリーな雰囲気を纏った少年ハートを忘れない最高にホットなアイドル! それが八乙女楽ッ!!」
     爛々と血走った目で力説されて「そう……」と無難な相槌を打った。勢いが怖い。というか何がこの彼氏をこんなにも狂わせているのだろう。ざっと部屋を見渡す。わかりやすくライトグレーが基調となっているルームメイクだ。ところどころピンクや青が混じっているのはメンバーカラーなんだとか。しっくりくる色の家具がないとかで自分で色を塗っていたなそういえば。情熱がすごい。
     だいぶ様子のおかしいこの彼氏はそれでも人との境界線をしっかり弁えてくれているので、私に強要したことはただの一度もない。ライブだって本当は一緒に行きたいだろうに、私が圧倒的インドア派だからと笑って引き下がってくれるのだ。それでも毎回誘ってくれているのでそろそろ申し訳なさが顔を出す。でも出掛けるのは面倒だから嫌なのだ。頑張ってこの彼氏の部屋くらいである。
    「ちなみに君への好きとジャンル違いなので、そこは混同しないでもらえるととてもうれしい」
    「突然冷静になるな」
     一瞬で真顔になられても怖いんだよ、と加えれば「だって勘違いで悲しい思いとかさせたくないし……」とかのたまった。大丈夫だよ、誤解したこと一度もないから。普段からすっごい愛を伝えてくれてるから誤解の余地はないよ。
    「いつも愛情表現ちゃんとしてくれてるからそのあたりの心配はご無用だよ」と言えば彼氏が「そう?」と嬉しそうに笑った。なんだコイツ可愛いなおい。
    「俺がしたくてしてることだけど、伝わってるなら嬉しいな」
    「そういうところあるよね。自分本位のつもりなのにちゃんと相手を想ってくれてるというか」
    「楽さんがさ、そういう熱い男だから。俺もそうなりたいなって思ってるんだ」
     照れたように彼氏がはにかむ。合点がいった。つまり今の彼氏を作ったのは八乙女楽ということか。それは興味深い。
    「ねえ、八乙女楽のこと教えてよ。ちょっと気になってきた」
    「エ!? 本当に!? 任せて、最高のプレゼンするから!!」
     真夏の太陽もかくやという輝きを放つまなこの眩しさにそっと目を細めた。それまでのほわほわした空気は一瞬で家出してしまった模様。もはや神棚とか言っていた推し棚に半ば飛び掛かるように行ってしまった彼氏の後姿を見ながら残されたスマホの画面を見る。八乙女楽の誕生日動画がエンドレスで流れている。ループ再生しているらしい。
    「何がいいかな……! やっぱまずVALIANTから? いやいきなり長時間のライブ映像は負担が大きいかも。ドラマ……はそんなに見ないって言ってたからいきなり見せるのも……だったらMVからいくのがいいかな。いやブラホワの録画とかも……ああっ悩ましい! なんて嬉しい悩みなんだ……! 俺がこんなに幸せで許されるのか……!?」
     うきうきしながら大きい独り言を続ける彼氏を見。スマホの画面でノリノリで動きまくる八乙女楽を見。人生楽しそうでいいなあ、と独り言ちた。
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    suno_kabeuchi

    TRAININGtwst夢/イデア・シュラウド
    集中している間に髪と戯れられてるはなし
    待てができるいいこなので ゆらゆらとゆらめくサファイアブルーを見つめること数十分。幸いにしてプログラム生成に集中しているイデア先輩に気取られることもなく、私はじっくりとっくり拝ませてもらっている。
     ほう、と何度目かもわからない感嘆の息が漏れる。昼だろうが夜だろうが、常に薄暗いイデア先輩の部屋ではそのサファイアブルーが陽の下のそれよりも鮮やかに映る。彩度の高いそれは驚くほど瞼に焼き付いては目を伏せてもその名残で閉じた視界に青が散る。
     足首まである長いそれはいざ座ると殆どが背凭れと痩躯の間に隠れてしまうけれど、一筋二筋と零れ落ちるそれもある。カーペットに座っていたけれど、そろりそろりと近づいて音もなくそれに手を伸ばす。燃えているだけあって毛先こそ掴めはしないが、もう少し上の方であれば実体がある。指に絡ませてみれば鮮やかな青に照らされて私の肌が青褪めたように光を受ける。視線だけイデア先輩に向ける。足元にいる私に気づいた様子もなくブツブツと早口で何か捲し立てながらキーボードを叩いている。それに小さく笑みを零して指に絡ませたそれに唇を添える。殆ど何も感じないけれど、ほんのりと温かい気がした。
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