スパイシー・アタック! ふんわりと綿菓子のようなミルクを艶のある黒い水面に乗せる。蕩けるような甘い匂いがやわく広がって天は顔を綻ばせた。
「大丈夫、キミの分もあるよ」
その匂いに釣られたようにてちてちやってきたモンてんに微笑みひとつ向けてコーヒーサーバーとモン天専用のマグカップを手に取ると慣れた手付きで注ぎ入れる。たっぷりの蜂蜜も一緒に混ぜ合わせ、きめ細かく泡立てたミルクを乗せてやればモンてんの瞳がこの上なく輝いた。
「どうぞ、召し上がれ」
マグカップを差し出してやれば、ぺこりと体ごと頭を下げたモンてんがおもむろに受け取った。ふうふうと息を吹きかけている。
その様子を横目に天はスパイスボックスからシナモンを取る。蓋を指で挟んでクっと捻り、くるくると回す。そのまま蓋を外して自分のマグカップの上に容器を傾け、トントンと指先でタップすれば薄茶色のパウダーが真っ白なミルクの上に咲く。
「モンてんもシナモンが気になるの? ボクの一口飲んでみる?」
無言でじっと見つめていたモンてんが「いいの!?」と雰囲気を華やがせた。未知なるものに対する好奇心はとても強いのもあるだろうが、何より天が好んでいるようだから気になったのだろう。
いそいそと天のマグカップに近寄り、すうっと思い切り匂いを堪能しようとして。
距離の近さに粉ごと吸い込んでしまった。
「モ、モンてん! 大丈夫!?」
鼻から直撃したシナモンにばたばたと悶えるモンてんを慌てて掬い上げてティッシュを押し当ててやれば力の限り鼻を噛み始めた。
「ごめんね。思いっきり吸ったら危ないって言ってあげればよかった」
全身で息をするモンてんを優しく撫でてやりながら謝れば、何故か天に尊敬の眼差しを向けてきた。「こんなきけんなものをのめるてんはすごい」。言葉にはないが何故か聞こえた気がした。