すずみの愛情 真っ先に目についたのは可愛らしくミントが乗った、丸々と肥え太ったつやつやの桃。その下に敷き詰められたクリームにはまるで花弁のようにスライスされた桃が飾られ、中層には桃のシャーベットとサイコロカットされた果肉がぎっしり詰められている。そして下層のコーンフレークにはチョコレートソースが絡んでいて、たとえそれだけになったとしても口を飽きさせない工夫が凝らされていた。
ででん。そんな効果音を幻聴するほど見事な桃のパフェだった。
持ってきてくれた龍之介を見れば、「ロケでたくさん桃をいただいちゃったから」とニコニコ顔だった。それだけが理由でこんな立派な桃のパフェが出てくるなど、一体誰が想像できようか。少なくとも天は想像できなかった。あるにしても、暫くは食卓に桃が並ぶくらいだ。
「最近の天は疲れてるみたいだったから、元気になって欲しくてさ」
「龍……」
やわく笑む龍之介のすべてに胸がじんとあたたかくなる。大きい。大きすぎる。十龍之介という男を構成するすべてがあまりにも大きすぎる。これが沖縄の海の育成力なのだろうか。否、龍之介を愛し、育んできたすべてのものの結果なのだろう。
「ありがとう、龍。すごく嬉しい」
「どういたしまして。そうやって天が笑ってくれるのが俺は嬉しいな」
そう言って心底嬉しそうに微笑む男に天はそっと目を細めた。あまりにも眩しかった。