喚んだあの子が帰らない薄暗い地下墓の最奥の主に見え、褪せ人は苦戦を強いられていた。
閉鎖的な空間の中で巨大な体をくねらせて暴れまわる樹霊はあたりの石壁や柱にぶつかり、破壊しながら逃げ回る褪せ人を追い詰める。
威嚇するように樹霊が咆哮をあげる。褪せ人はその一瞬の隙に懐に忍ばせていた遺灰を取り出した。
空気が揺れるほどの雄叫びの中でも確かに響く霊喚びの鈴の音色に誘われるように器に納まった遺灰が宙を漂い形を成していく。
褪せ人の目の前に、人であるはずなのに獣のように地面に両手足をついた甲冑姿が現れる。
呼び出された猟犬騎士のフローは頭上高くからこちらを見下ろす異形の動き図るように携えた曲刀に手をかけながらじりじりと間合いを詰めていく。
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