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    💀🧼すけべ無しのお話。

    #ゴソプ
    gosop
    #ghostsoap
    #ghoap

    戦場でプロポーズあのメキシコの雨の日同様に孤立無縁の状態だった。
    ただ良くも悪くもこの日は雨もない快晴の月夜だ。
    歩き易いが、月明かりは足元の小石まで明確にわかるほどで、用心に用心を重ねなければ、敵兵も自分達の位置を容易に把握してしまうだろう。ゴーストは索敵を行う敵兵を背の高い草むらの中から遠巻きに眺めながら小さく息を吐いた。
    最後の通信で状況は伝えてある。救援と回収ヘリの到着はまだ先だ。
    すぐ隣では痛みに耐えるように息を詰める呼気の音がする。先程、左腕を撃たれたソープの物だった。様子を確認する為にゴーストがチラリとソープに顔を向けると、視界の端でゴーストが動いたのを捉えたソープが痛みから脂汗を浮かべた顔を上げてゴーストを真正面から見据えた。
    「悪いな、中尉。…静かにしてる」
    「…いや、大丈夫だ。もう少しし索敵が落ち着いたら移動しよう」
    「了解」
    「…怪我の具合は?」
    「医者じゃないからわからん」
    「弾は抜けたか?」
    「抜けてる」
    「落ち着ける場所を探して手当をしよう」
    身を隠した草の根元にはソープの流した血液の痕が小さな水溜まりのようになっていた。早く応急処置をしないとまずい。ゴーストの頭が、ソープの血液で色の変わってしまったガーゼと包帯を見て警笛を鳴らすのがわかった。
    それから間も無くして敵兵の量も落ち着いた為、2人は町外れの小さな教会の中に身を潜めた。
    何年も使用されていない事が容易にわかる埃を被った木製の関貫を挟み、手近な椅子を引っ掛けてバリケードを築くと、奥の懺悔室の壁に凭れかかってヘルメットを外しながら、ぼんやりとゴーストの行動を眺めているソープに歩み寄る。
    「こんなさびれたいなかじゃ、スティムなんておいてなさそうだ」
    いつもより緩慢な動きをする舌で、拙くゴーストに話しかけるソープの腕を眺めながらゴーストは黒いグローブを外して、自分の携行品のポーチから医療キットを取り出す。
    教会内は何本もの蝋燭に灯が灯されていて思いの外明るく、ソープの状態を確認するのにライトを使わなくても十分な程だった。
    少し揺らめく灯りの中、血液を吸い取りきれなくなってしまったガーゼを取り外しトロトロと流れ出てくる血液を拭って状態を確認する。
    「弾は抜けてるな」
    「さっきもそういった」
    「確認しただけだ」
    「しんようないな…」
    不貞腐れるように口の先を尖らせる様子を見ながら小さく笑う。まだいつも通りを装う事が出来るだけの気力がある事を確認できてゴーストは安堵していた。ソープを、彼の言葉を借りるなら、この敵兵の彷徨く寂れた田舎に置き去りにする事態は避けたかったからだ。
    「止血帯を巻き直す」そう断って真新しいガーゼを当てた腕にバンドの端を添えると圧を加えながら巻いていく。
    患部を圧迫され痛みに呻きを上げるソープの声を聞きながら、バンドを巻き終えるとカバンの底から経口麻酔を取り出して封を切ってソープの口に挿し込む。
    「これを咥えろ」
    「はっ、やらしいせりふだな、ゴースト」
    「言ってろ」
    そのまま静かになったソープの様子を確認しながら後片付けを済ませると、ソープの隣に腰を下ろし、自分の武器とソープの武器の残弾を確認する。
    装備の点検も終わる頃には、遠くて聞こえていた足音や敵兵の声も聞こえなくなり、風がそよぐ音や虫の声が響く程度になった。
    辺りの音を聞きながらじっと様子を伺うゴーストの肩にコツリとソープの頭が打つかる。咥えていた筈の経口麻酔の棒も落としていた。
    すぐに「わるい」と謝辞が聞こえて元の位置に戻るが、しばらくするとまたゴーストの肩に乗り掛かってしまう。
    「ソープ、」
    声を掛けながら顎をなるべく優しく掴んで顔を覗き込むと、薬が効いているのか疲労の限界なのか、ソープは先程よりもぼんやりとした表情で眠たげに目を瞬かせている。
    「救援まで、まだ時間がある。何か変化があったら起こしてやる」
    そう言ってゴーストは自分の肩にソープの頭を置くと、言われるがままになっているソープのこめかみを撫でてやった。グローブを外した指先でソープの短く刈られた頭髪のチクチクとした感触を楽しんでいると、慣れ親しんだ基地内の自室や、ソープと休暇を楽しむ時に過ごす彼のアパートに居る感覚が過る。ゴーストは、ソープやその他誰にも言うことはないが、その感覚を心底愛していてた。彼が任務において冷静沈着で、敵に冷徹である事を努めれば努めるほど、その感覚を欲してしまう事をゴーストは理解して受け入れていた。
    ソープに変えられてしまった。とゴーストは認識していて、最初こそ弱くなったと思い、慣れない感覚に苛つきを覚えたが、今では嫌な変化ではない事を受け入れる事が出来ている。
    「さいもん」と舌足らずな甘い発音で名前を呼ばれるのも愛していたし、それに呼応して彼の名前を呼び返す自分の声音の雰囲気が甘くなってしまう事にも、今では嫌気がさす事なく受け入れる事が出来るようになった。
    ソープが自室にいる時のように甘えた声で自分を呼ぶ声に「どうした?」と返してやるとぼんやりした表情のままソープが緩慢な動きで血塗れの左手のグローブでゴーストの手を柔く握った。
    「けっこんしよう」
    「…今か?」
    「…いまでも、くににもどったらでも…こういうちいさいきょうかいで、ふたりきりで」
    「神父は?」
    「べつにひつようない」
    「じゃあ今でも良いさ」
    「ちかいのことばは?」
    「今まさに病める時も傍に居るが?」
    「たしかに」
    ゴーストはソープの体が倒れないように身体の向きをずらすとマスクを鼻の上までたくし上げて、乾燥でささくれ立ってかさついたソープの唇を優しく啄んだ。
    ぼんやりとしたまま、少しだけ唇を尖らせて誓いのキスを受け入れるソープはもしかしたら薬の影響で錯乱しているのかもしれない。この瞬間のことすら覚えてないかもしれない。ゴーストは頭のどこかでそう考えていたが別にそれでも良かった。ソープが覚えていなくてもゴーストだけが記憶して、心に留めている事は今までにもあった。だから今回もそれでも良かった。
    「今はこれでいいから、国に戻って落ち着いたらもう一度プロポーズしてくれ」
    夢現のようなソープにそう告げると「まかせろ」と告げて、目を閉じて寝息を立て始めた。
    ゴーストは溜息を吐きながらマスクを直し、ソープが休みやすいように肩を貸して、重ねられた右手の指先で血を吸ってごわつくグローブの生地を撫でる。
    救援到着と回収まであと数時間。
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