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    amelu

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    amelu

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    半同棲ゼン蛍。蛍ちゃんがアルハイゼン邸をお掃除して、メイド服でお出迎えします。
    *0530ゴミゼロで掃除(機)の日だそうです。
    *突貫クオリティです。解釈違い・捏造もろもろありますので、ご了承の上、閲覧くださいますようお願い申し上げます。

    ##ゼン蛍
    #ゼン蛍
    #hailumi

    魅惑のメイドさん この日、蛍の塵歌壺は早朝から騒がしかった。アルハイゼンが出勤前の時間を使って、自宅に置ききれなくなった書籍を片付けに来ていたのだ。あまりに蛍がバタバタしているので、パイモンもどこかに逃げ出してしまうほどだ。
     アルハイゼンは蛍の恋人ではあるが、あまり塵歌壺には来ない。自分の空間を大切にする彼に合わせて、普段は蛍がアルハイゼンの自宅への“通い同棲”をしている状態だ。アルハイゼンがこうして塵歌壺に来るのは、蛍が他国に出ているときか書籍の整理をするときくらいである。
     アルハイゼンの家は常に書籍で溢れている。しかも今は、カーヴェに加えて蛍とパイモンまで寝泊まりしている。必然的に空間も狭くなり、リビングに積まれる書籍の数も増えて雑然としてきてしまった。さすがにこれではいけないと、蛍はアルハイゼンにリビングを片付けて掃除がしたいと申し出たのだ。
    「——蛍、これの詳細について聞かせてもらいたい」
     洞天の邸宅に書籍を運びこんでいたアルハイゼンが、紙束のようなものをテーブルに置いた。紐で軽くまとめた写真の束だ。それが何であるかに気が付いて、蛍は青褪めるしかなかった。蛍自身すっかり忘れていたが、あまり見られたくない写真を書棚の奥に隠していたのだ。それも、アルハイゼンと知り合う前のことだ。それがよりによって、この無表情に嫉妬深い恋人に見られてしまうとは。
    「こっ、これは……依頼で」
    「君は依頼されれば、恋人がいようがお構いなくメイドの格好をして男に傅くのか?」
    「ち、違うよ! それ、アルハイゼンと知り合う前だから!」
    「ほう、やはり詳細を聞く必要があるな。話してくれ」
     アルハイゼンは十数枚はある写真を、一枚ずつ丁寧に並べていく。写真に映っているのはもちろん蛍で、メイド服を着ている。
     向かいのソファに座るよう促され、蛍は大人しく従った。
    「これは、前にモンドのワイナリーのお屋敷でメイド研修があって、その手伝いをしたときのものだよ。下働きのメイドが面白がってメイド姿の私を盗撮していて、その写真を売って小遣い稼ぎをしようとしたの。それがメイド長にバレて、お屋敷の旦那様が写真を取り上げて私に返してくれたんだよ」
    「ふむ。たしかに、君は全ての写真で写真機を意識していない。画角も、観葉植物の後ろから撮ったようなものや別の部屋から遠目に撮ったようなものが多い。盗撮なのは間違いないな」
     写真を一枚一枚確認しながら、アルハイゼンは何かを考えているようだった。蛍は嘘をついてなどいないし、この写真を見られたくなかったのは単に恥ずかしいからだ。普段、軽装ともいえる旅装で剣を振るっている旅人の蛍が、慎ましやかなメイド服に身を包んでカーテシーをしている姿など似合わなすぎて見せられたものではないと思ったのだ。とにかく、アルハイゼンに納得してもらってこの写真を片付けてしまいたかった。
    「でしょう? 小遣い稼ぎをしようとしたメイドは、旦那様からちゃんと処分があったみたいだよ」
    「雇用主としては当然だな。それで、この依頼には君に何のメリットがあったんだ?」
    「メリット? 私の仕事はスパイみたいなもので、メイド研修に混ざって態度が悪い下働きのメイドを監視してたの。……まあ、その人たちが盗撮してて旦那様に処罰されたわけだから、勤めは果たしてるよね。だから報酬はモラで普通にもらったよ。あとラズベリージュースも」
     委細すべて嘘はない。この件はこれで無事におしまいとなるはずだ。
    「それで、君が何度も口にする『旦那様』は、この赤髪の若い男なのか? メイドの君が恭しくお辞儀をして見せている男だ」
     アルハイゼンは一枚の写真を指先で弾き、いかにも気に入らないといった様子で蛍に見せつける。
    「そう、だけど……アルハイゼンが疑うような関係はないよ」
    「それはわかっている。君の初めての男が俺なのは自明の理だ」
     そこでアルハイゼンの言葉が止まった。蛍に過去の男の影などあるはずもなく、彼自身がその事実を確認している。ならば何が気に入らないのか。そして普段から舌戦において言い淀むことなどない論客のアルハイゼンが何故、言葉の先を紡がないのか。
    「アルハイゼン、もしかして……羨ましかった?」
    「羨ましい、か。……そうかもしれないな。事実、俺は君のメイド服姿を見たこともなければ、君に傅かれたこともない。片膝をついて君に交際を申し込んだのは俺の方だからな、それは仕方がない。誰かと比べてどうこう考えること自体が無駄なのもわかっているが、君のこととなるとどうもすっきりしない」
     アルハイゼンは率直な男ではあるが、明け透けに物事を語るわけではない。言うべきこと、言いたくないこと、言う必要のないことを常に選別している。彼にとって『この赤髪の“旦那様”が羨ましい』というのは、言いたくないことか蛍に伝える必要のないことだと判断したのだろう。そんな恋人が、少しだけ可愛く思えた。
    「メイド服……あるよ。そのとき、合うサイズがなくて急いで特注してもらったの。特注品だから、生地や細かいデザインが違うんだ。それを貸与品にするとメイド間で争いになるから、持ち帰ってほしいって」
    「……ほう? たしか、君は今日これから家のリビングを掃除するんだったな」
    「そう、だね」
    「俺はこれから出勤するが、退勤後にはメイド姿の君が出迎えてくれると?」
    「うぅ……かしこまりました、“旦那様”」
    蛍、完全敗北の瞬間である。





    「——おかえりなさいませ、旦那様」
     とんでもないロールプレイをすることになってしまった。
     塵歌壺の邸宅から出勤するアルハイゼンを送り出し、彼の家に移動した蛍はリビングの片付けを始めた。溢れた書籍は知恵の殿堂か塵歌壺に移動され、残っている本を書架に収めた。おそらくは半同棲と呼ばれる状態で、ソファで居眠りする蛍のために用意されたブランケットとクッション、ストール、パイモンの菓子入れなどなど明らかに物が増えている。人数が増えたら日用品が増えるのは当たり前だとアルハイゼンは言っていたが、それでも見映えよく整えておく必要はある。それらを整理して、窓拭き、家具磨き、床の掃き掃除と拭き掃除、すべて終える頃には蛍は汗だくで、アルハイゼンの退勤時間も迫っていた。蛍は急いでシャワーを浴びて汗を流し、今朝の会話の通りメイド服に袖を通した。アルハイゼンの退勤時間に合わせて着替えるのは、掃除で埃だらけになった服で料理をしたくないという理由もある。
     そして、メイド研修で習った上品なお辞儀を思い出しながら、付け焼き刃のカーテシーでこの邸宅の主を出迎えた。
    「ただいま、蛍」
     お辞儀のまま床に目線を落とす蛍の頭上から、聴き慣れた声が降る。彼が通り過ぎるのを待っていると、次の瞬間、足が浮いた。蛍の視界には映っていないが、アルハイゼンが蛍を抱き上げたのだ。
    「あ、アルハイゼン…… ちゃんとメイドっぽくしてたのに」
    「なるほど。顔を上げないから、さすがに君の機嫌を損ねたのかと」
     ひょい、と片腕で事も無げに抱え上げられ、鼻先が触れそうなくらい顔が近くなる。
    「あのね、メイドはご主人様と目を合わせちゃいけないんだよ?」
    「それは困るな。俺は君の瞳を見て話がしたい」
    「もう……それじゃあ、メイドさんは終わりでもいい? 食事の準備するから」
    「ああ、任せてすまない。リビングの掃除も、ありがとう」
    「いいよ。それじゃあ、降ろし——」
     蛍はたしかに、安定した場所に降ろされた。だが、メイドシューズの両足はぷらんと宙に浮いたままである。
     蛍が降ろされたのは、ダイニングテーブルの上だった。脚高テーブルの端に腰掛けた形になっている。そこから降りようにも、アルハイゼンが立ち塞がっていてびくともしない。当のアルハイゼンは、蛍を見つめたまま片手でシューズのバンドを外しているところだった。ごとん、と重たい音がして、脱がされたメイドシューズが床に転がる。
    「あ、アルハイゼン、何するつもり? いけないことしようとしてない?」
    「蛍。いけないこと、ではないだろう。いつもと違う格好の恋人に欲情して何が悪い」
     固く閉ざされた首元のボタンを、器用にも片手で弾いて外していく。僅かに晒された蛍の首筋に、アルハイゼンは舐め上げるような甘噛みのキスをした。重いメイドスカートの裾をたくし上げ、アルハイゼンの手が白いタイツの上を滑る。
    「あ、まって、アルハイゼン、そのタイツたぶん高いから、破かないで」
    蛍が言い終わる前に、ビッと繊維の裂ける音がした。アルハイゼンにとって、タイツの値段など気にかける要素にはならない。おそらく、他の男によって用意されたものだというのも気に入らないのだろう。必要があれば、 アルハイゼンのお金で新調すればいい。そういうことなのだ。もっとも、普段の蛍はタイツなど履かないので必要になることもないのだが。
     後ろで結ばれていたエプロンのリボンも解かれ、だらりと肩紐が落ちる。ボタンは胸元まで開かれ、そこにアルハイゼンの生ぬるい舌が這う。
    「アルハイゼン、ここでするの……? おしりいたい」
     それなりに高価なテーブルなのだろう。天板は滑らかで冷たく、かなり硬い。このままだと身体に痣でもできそうだ。
    「蛍、君はどうしたい? ここで続けてもいいし、場所を変えてもいい。俺にどうしてほしい?」
     ずるいなぁ、と思いながら、蛍は熱くなり始めた吐息を細く吐き出す。アルハイゼンの望みはわかっている。蛍に“おねだり”させたいのだ。
    「アルハイゼン……ベッドがいい。ベッドで、抱いてほしいな」
     翡翠の瞳を見つめながら、吐息混じりに言った。アルハイゼンはぴくりと身体を反応させて、瞬きをする。
    「ああ……そうしよう。君に痛い思いはさせたくない」
     スカートの裾に手を入れたまま、アルハイゼンは蛍を抱き上げた。そして蛍の耳元でしっとりと囁く。
    「……誰にその誘い方を教わったのか、じっくり教えてくれないか」
     あなただよ、と思いながら、蛍はアルハイゼンにしがみつく。そして彼女もまた、狡くも愛しい恋人の首筋に甘噛みのキスをするのだった。
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    amelu

    DONE2024年アルハイゼン誕生日ゼン蛍。
    とあるきっかけと周りの後押しで急接近した二人のおはなし。
    光を抱く巨樹 不可抗力ではあったが、アルハイゼンは蛍と抱き合った。
     それは、真昼の往来で起きた、些細な事故に過ぎない。
     だが、あの小さくしなやかな身体を自分の腕に収めたときから、アルハイゼンの日常は複雑に縺れてしまっている。
     業務の合間に教令院を出て街中へと下りてきたアルハイゼンは、不意に曇りなく晴れ渡った暑い青空を見上げた。白い鳥が旋回するように飛んでいる。まるで、あの日のような光景だ。もっとも、あの日に真っ白な翼を広げて空を舞っていたのは、鳥ではなく蛍だったのだが。
     あの日は、風が荒れていた。ヤザダハ池の桟橋からの坂道を上りきったところで、アルハイゼンは上空を緩やかに滑空する白い影に気が付いた。その影の大きさから鳥でないことはすぐわかったが、それが彼女であることに気が付いたのは一瞬遅れてだった。突風が吹きつけ、乱れた前髪がアルハイゼンの視界を奪う。指先で払って再度見上げたときには、翼の制御を失った白い影が回転しながら勢いよく落下しているところだった。体勢を立て直すには低空すぎる。あとは如何にして着地の衝撃を和らげるかだ。目測だが、このままでは建物に衝突する可能性もある。彼女ならば咄嗟に身を翻して避けられるのかもしれないが、予備策の有用性について検討する前にアルハイゼンは石畳を蹴っていた。
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