老婆は家にある大きな時計が好きだった。老婆が生まれた時に記念で贈られた時計は何度か修理に出したものの何とか今も動き続けており、時を刻んでいる。
「ずいぶんと古くなったわね。私も年をとるわけだわ」
しわだらけの手で飴色の時計に触れる。老婆の最初の記憶では時計はこの色ではなく、もっと色鮮やかだった。長い年月でこの色になったのだ。
「おばあちゃん、またその時計を触っているの?」
お腹の大きな女性が老婆の元へとやって来るので、老婆は微笑んだ。
「その子が生まれたらまた時計を作ってやらないとね」
「うふふ。丈夫で長持ちする時計を作らないといけないわね」
老婆は女性のお腹を撫でながら、新たな命の誕生と仲間入りする新しい時計に胸を躍らせた。