はるかな「ミニスカナースを着た俺がいくらかわいいからって……借り物だって言ったのに……」
蛇口から流れる水を両手に感じながらそうつぶやく。
うすいピンクのペラペラした布は水に濡れて色が濃くなり汚れたところがどこだったのかわからなくなってきた。
「これ、そんなに似合ってた?兄貴っていつもそんなの興味ありませんって顔してるくせにこういうのけっこう好きだったんだね、変態~それともかわいいかなちゃんが着てたらなんだっていいのかな?」
「……うるっせぇお前もそのつもりで来たんじゃねぇのか黙って洗え」
「ひどい!汚した責任は兄貴にもあるんだからね!?」
「…………」
そのつもりがなかったと言ったらもちろん嘘になるが思っていたよりも遥がギラギラした目を向けてきたことに内心少し驚いたのはバレていただろうか。
うすピンクの布をまとってくたりと力が抜けた奏をしばらく見つめていた遥は乱れた息が整ってくると急に気まずそうに視線を彷徨わせ、奏を置いて部屋から出ていこうとした。
そんな遥をこれ洗うから洗い終わるまでそこに居て!と慌てて止めたのだった。
奏のお願いを大人しく(態度は悪いが)きいてくれているあたり、少なからず責任は感じているのだろう。
ていうかコスプレしたかわいい弟をいいようにして気まずくなって放置して逃げようとするなんて最低すぎる俺じゃなきゃ愛想つかしちゃうね。
まぁミニスカナースの似合うかわいい弟は俺しかいないけど。
「おい、まだ終わらねぇのかよ」
「う~~んもうちょっと!」
遥の不機嫌そうな声がきこえる。
洗ったとしても俺と兄貴のあれやらそれやらがついた服を渡したくないし新しいものを買って返そう。
理想的ないちゃいちゃした後の雰囲気ではないが遥がそこに居てくれる時間をもう少し引きのばしたくて手にしている布を適当にごしごしこすり合わせた。