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    mumi888mmm

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    書きかけのししさめ。タイトル通り(2023/04/23更新)

    「あなたが作った料理を毎日食べられる人間は幸せだな」と言われて正しい反応を探る獅子神さん(ししさめ) オレのために味噌汁を作ってくれ。
     今ではもう使わない少々古風な台詞かもしれないが、とにかくそれはプロポーズの意味を含むものだという。
     親から興味を示されなかった獅子神は幼少期にそれを知った時、好いた相手からこんなにも必要とされる女性はさぞ幸せだろうと思った。愛情を込めつつ手間をかけて作ったものを毎日食べたいと言われることは、きっと擽ったい幸福だろう。もっとも獅子神は、自分はそう口にする立場ではないだろうとも自覚していた。何故ならば、獅子神自身がおそらく大抵の女性よりは料理が得意であるので。
     だから獅子神が向けられるとするのならば、あなたが作った料理を毎日食べたいだとか、そういったものになるのだろう。けれども獅子神は自分から告白とプロポーズをしたい性格のため、毎日お前に料理を振る舞いたい、といったところか。そう伝えた時に嬉しそうに笑ってくれる人といつか出会えたらと夢見ては、そんな自分に呆れたものだった。
     
     
     梅雨真っ只中の六月某日。村雨とふたりきりの、ただただ静かな食事の時間だ。
    「あなたが作った料理を毎日食べられる人間は幸せだな」
     村雨はステーキを切り分けて品良く口に運んでは咀嚼し、飲み込む。大きく表情が変わることこそ無いものの、村雨が獅子神の手料理を気に入っていることは明白だ。なんでも真経津曰く、初めて会った時の村雨は、成分のわからないものは食べない主義だ、と差し出したパンを突っぱねたという。そんな村雨が獅子神の作ったものを食べているというのは、もちろん満足感をもたらした。もたらしたのだけれど、しかしその村雨の言葉は獅子神を複雑な心境にもさせた。
     獅子神敬一は、村雨礼二に恋愛感情を抱いている。
     つまり今の村雨の言葉は獅子神にとって例の言葉に等しく、とはいえ村雨にそんな意図がないことは重々承知している。承知しているのだけれど、好きになった人に対して、毎日お前のために料理を振る舞いたいと言うことを思い描いていた獅子神は、危うく勘違いと早とちりの幸福感を抱きそうになった。
    「そりゃどうも。お前の口に合ったなら良かったよ」
     短い言葉に本音を乗せて返す。
     食事制限をしている獅子神が食べているのは、ササミを中心としたサラダだ。村雨にも準備して差し出したところ、どうやらお気に召したようで喜ばしい限りだ。
     好物のみでなく、体のことも考えて用意をする。獅子神がそこまでするのは、村雨に対する感情が友愛や尊敬といったものだけではないからだ。だからこそ、反応が一瞬遅れてしまった。村雨はその変化を見逃す男ではないけれど、僅かに瞳を細めただけだった。
    「あなたの料理はいつも私の好みに合っている」
    「そうかよ」
    「ああ。だからこれからもあなたの手料理が食べたい」
     最後の一切れの肉と、一口分のサラダを食べ終えた村雨が手を合わせる。ごちそうさまでした、と当たり前のように告げられる挨拶。
     獅子神がこの男と毎日食事を共にしたいと思ったのは、一体いつのことだっただろうか。初対面で三人でハンバーガーを食べた時の印象は、バケモンみたいに強いのにこんな面白い部分も持っているのか、という健全な好奇心だったように思う。好奇心が尊敬に、そして愛情に変わるまでは存外早かったはずだ。
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