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    紫蘭(シラン)

    @shiran_wx48

    短編の格納スペースです。

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    POIPOI 85

    紫蘭(シラン)

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    グルアオです。
    若干ママ要素のあるgr氏です。aoちゃんは純粋な子。
    タイトルは、スペイン語で宝探しだそうですが、宝を狩るという意味が強めの言葉です。

    Caza del tesoro/グルアオガチャリと玄関の扉を開けると、床に一枚の紙が落ちていた。
    なんだろうと拾えば、セビエの絵柄が描かれたメモ帳に文章が書かれている。

    『グルーシャさん、お仕事お疲れ様です!
    突然ですが今から宝探しを始めます。
    問題を出すのでその答えに従って、次の問題を見つけ 最終的に宝を見つけてください。
    できるだけ早く見つけてもらえること希望です。

    問題一、この家に帰ってからまず向かう場所はどこですか?』

    「え、これクイズなの?」

    思わず出てきたツッコミの音量が予想以上に大きくて驚いた。
    今日の仕事が終わったから家に帰れば突然始まった宝探しゲームと、クイズと言ってしまっていいのか微妙な問題に、困惑しかなかった。
    まあ、こんなこと計画するのは一人しかいないと思うけど。

    そこまで疲れていないから、ノってあげよう。

    ぼくが帰宅してから向かうのは、リビングだ。
    正確に言うと、全室空調コントロールパネルが設置されているところ。
    ここに来て、寝るまで自分がよくいるリビングとポケモン達が自由に過ごす部屋のエアコンを起動させている。
    家を建てる際、一々部屋のリモコンで調整するのが面倒になるだろうと判断した結果導入した。
    案の定リビングで各部屋の空調をオンオフできるから楽だった。

    そのパネルの前まで行くと、またあのメモ帳が貼られている。

    『正解です!次行きましょう。

    問題二、空調のスイッチ入れた後、行く場所は?』

    「洗面所で手を洗いに行くけど…」

    まだリビング内はサムいから、上着は着たまま 手袋だけをハンガーラック横の引き出しの上に置くと洗面所に向かった。
    …やっぱり、アオイはクイズの捉え方がちょっとズレてる気がする。

    手を洗っている間に、タオル掛けにメモ帳があることに気がついた。
    水分を拭き取り、内容を確認する。

    『正解。流石ですね。
    どんどん行っちゃいましょう。

    問題三、そろそろあの部屋の冷房が効いてきた頃ですね』

    「もはやクイズですらなくなったね」

    あまり独り言をするタイプではないけれど、さっきからもう止まらなかった。
    いや、これでツッコまない人間なんているのか?

    冷房とのことだから、ぼくの手持ち達が過ごす部屋のことだろうな。
    いつも大体このタイミングで行ってるし。

    またとことこと歩いて、ポケモンフーズの大袋を持ちキンキンに冷えた部屋の中に入る。
    うぅ、サムい…と思いながらも我慢して、モンスターボールからハルクジラとツンベアー以外のポケモンを出した。

    雪山だから冷房なんて必要ないんじゃないかって思うかもしれないけれど、ナッペ山にも気温の変化はある。
    今の季節は春で、極寒の冬と比べたらほんの少し温かい。
    いや、正確に言えば人間にとっては十分寒いけど、氷ポケモン達は違う。
    微妙な温度変化で体調が悪くなったりするから、彼らのコンディションに合った一定温度をキープするため、特製のエアコンで冷房をつける日がある。

    白い息を吐きながら見渡せば、今日もバトルを頑張ってくれた彼らは、既に各々好き勝手に過ごしていた。
    足元に置いていたフーズを、各自専用の器に移していく。
    そうすれば、お腹が減ったら勝手に食べてくし。

    大昔フーズの取り合いの喧嘩できつく叱ったことがあって、それ以降喧嘩は発生してないからこの方法を取っている。

    スコップを持ってフーズを器に入れようとすれば、モスノウ用の器の下にメモが挟まれていたことに気づく。
    一旦ポケットの中にそれを入れ、作業を再開した。
    普通にサムいから、ここ出てから見るつもり。

    他の二匹は後であげるし ついでに飲み水の交換も済ませたら、リビングへ戻った。

    『この前、氷ポケモン用のおもちゃ見つけたので、今度買ってきますね。
    はい、次です。

    問題四、今日の晩ご飯はなんだと思います?』

    「ふふっ…」

    ただの連絡になってしまっていて、笑ってしまう。
    この気が抜ける感じ、だんだんクセになってきたな。

    ご飯の話をしているから次はキッチンかな、と思い冷蔵庫を開けてみると、やっぱり皿の下にあのメモ帳が挟まっていた。
    ちなみに今日のメニューはスペアリブの煮込み料理、豆スープ、そしてサラダとパンだった。

    そこでふとあることに気づいた。
    多分ぼくがナッペ山ジムにいる間にアオイが作って置いてくれていたんだろうけど、量が明らかに多かった。
    一人分じゃなくて二〜三人分はあったから、もしかしてまだアオイは家の中にいる…?

    そういえばと最初のメモ帳をもう一度確認すれば、なるべく早く見つけるよう書かれていた。
    もし、宝探しの最終ゴールにアオイがいるのだとすれば、ちょとマズいかもしれない。

    春だといっても、人間としてはまだまだ気温は低い。
    …暖房はリビングでしかつけてないから、あまり時間がかかると確実にアオイが風邪を引く。

    「…アオイ!」

    そんなのダメだと思った瞬間、宝探しは中断して家中を探し回った。
    女の子一人が隠れられるスペースなんて限られている。

    まずは自分の寝室のドアを開けた。
    ベッドの上や下にはいない。
    それなら…。

    くしゅんと、後ろの方で音が聞こえた気がする。
    振り向けばクローゼットがあるから、ここかもしれない。
    いや、声も聞こえたし絶対にここだ。

    勢いよく扉を開ければ、毛布に包まったアオイが座っていた。

    「あ、グルーシャさんおめでとうございます!
    宝探し無事完了したんですね。そんなあなたに…」
    「こんなサムいとこでなにしてんの。風邪引いたらどうするつもりだったんだ」

    思わず出てきた低い声に、彼女はびくりと体を震わせた。
    何か言おうとしていたけれど、とにかく温かい部屋に連れていくため 彼女を抱き上げてリビングに向かう。

    ソファーに降ろして頬を触れば、ひんやりと冷たい。

    叱るため口を開こうとしたところ、アオイがすごい勢いで頭を下げ始めた。

    「勝手にお家に入ってすみませんでした!」
    「それについては合鍵渡してるんだから別にいいんだけど…」

    問題点はそこじゃない。

    「冬は終わったけれど、ナッペ山はまだサムいんだ。
    それなのになんで暖房も効いてないあんなところにいたんだよ」
    「宝探しのフィナーレとして、サプライズ登場しようと思ってたので。
    その エアコンつけてたらいるのバレちゃうなって…」
    「馬鹿なの?風邪引いたら辛いのあんただよ」

    何考えているんだと最後に付け加えれば、アオイは心底反省した様子を見せた。
    さっきくしゃみもしていたし、先に彼女の体を温めよう。
    ベッドから追加の毛布を持ってきて包ませると、キッチンでジンジャーティーを鍋に入れて温める。
    茶葉のやつじゃなくて、生の生姜と蜂蜜を入れて煮込んで作ったものだから早く効果が出るはずだ。

    ぽこぽこ水泡が出てきた段階で火を止め、マグカップに入れてアオイに渡した。
    熱を冷ますように息を吹きかけながら飲む彼女の体を、毛布ごと抱きしめた。

    半分くらい飲みきったところで問いかける。

    「で、一体何がしたかったわけ?急に宝探しなんて」
    「ええっとですね…」
    「…もう怒らないから、教えて」

    すると、アオイは毛布の中で抱えていたカバンから何か取り出した。
    アルクジラが雪遊びをしている絵が描かれた封筒。
    受け取って中身を見ると、十枚綴りの紙が出てきた。

    「いつでも甘えられる券?」
    「今回の宝探しの景品です。最近忙しそうでしたし、それに…」
    「それに?」

    「グルーシャさんはいつも私をいっぱい甘やかしてくれますけど、私には甘えてくれないので…。
    だから、考えた結果この券を作りました。
    普通に渡すより、どうせなら楽しんでから受け取ってほしいな…と。

    でも、心配かけてしまってごめんなさい」

    もう一度頭を下げて謝るアオイの姿を見つつ、予想外のことに固まった。
    甘えてないって言ってるけど、ぼくなりにしているつもりなんだけど…。

    「ちなみに、有効期限は無期限です。
    私のできることならなんでも言ってくれたらいいですし、もし十枚全て使い切ったらまた再発行するので、安心してください」
    「そう、なんだ…」

    至れり尽せりな内容に、純粋なアオイらしいなと思った。
    悪用されることなんて全く考えてないんだ。

    まあ、うん。くれるんならありがたく使わせてもらおう。
    彼女ができることなら、なんでもってことらしいし。

    ぼくの年下の恋人は想定外のことを よくしでかすけど、なんだかんだでそれを楽しんでる。
    アオイなりに心配りをしてくれているみたいだし、それ自体は嬉しい。

    「なら、今日一枚使ってもいい?」
    「はい、もちろんです!何したらいいですか?」
    「今日は帰らないでぼくの家に泊まって。まだ一緒にいたい」

    ぼくの願いに、アオイは太陽のように弾ける笑顔で頷いてくれた。
    そんな彼女の頬に、軽くキスを落とした。
    そしてふと思い出す。

    「あ、残りのメモ帳はどこに隠してるの?
    冷蔵庫の中入ってたやつから見てないから、全部何書いてたか読みたいんだけど」
    「え、まさかショートカットしたんですか!?
    ちゃんとゴールしてないんでしたら、景品は没収です!
    返してくださいー」

    取り返そうと飛びつくアオイを抑えつつ、今の姿勢じゃ絶対に届かないところに券を遠ざける。

    ぼくはずるい大人なんだ。
    こんな自分に都合のいいチケットを簡単に手放すわけないじゃないか。


    終わり
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    recommended works

    chikiho_s

    PASTTwitterに上げたバレンタインとホワイトデーの連作。
    プレゼントは死ぬほど貰うけど、自分からあげるなんて無いだろうから悩み悶えていればいい
    ココアの件はフォロワーさんのリクエストで。グランブルマウンテン(砂糖たんまり)でもいいね。可愛いね。

    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19706108
    氷の貴公子とチョコレイト今年もこの日がやってきた。一年の中でも憂鬱な日。バレンタインだ。

    ジムの建物内を埋め尽くす勢いでチョコレートやプレゼントが届く。言うまでもなく全部ぼく宛て。わざわざ雪山の山頂にあるジムまで届けにやってくる人もいる。多分明日は本部に届けられた分がやってくる。正直、意味がわからない。
    この日だけ特別に一階のエントランスに設置されるプレゼントボックスは何度回収しても溢れていて、業務に支障が出るレベル。下手にぼくが表に出ようものならパニックが起きて大惨事になるから、貰ったチョコレートを消費しながら上のフロアにある自室に篭もる。ほとぼりが冷めたらプレゼントの山を仕分けして、日持ちしない物から皆で頂いて、残りは皆で手分けして持ち帰る。それでも裁ききれないからポケモン達に食べさせたり、建物の裏にある箱を冷蔵庫代わりにして保管する。これは雪山の小さな特権。
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