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    紫蘭(シラン)

    @shiran_wx48

    短編の格納スペースです。

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    POIPOI 85

    紫蘭(シラン)

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    グルアオです。
    gr氏の太もも太いよな…から出てきました。
    勢いで書いたため、オチはないです。

    ※ナチュラルに同棲設定です。

    眠れない夜は…/グルアオボードで固い雪の上を滑る音が聞こえる。
    スピードは保ったまま 半円筒状の雪上でタイミングを合わせて飛び上がると、技を決める。
    何度も何度も練習した成果を、ここで出し切るために。

    ぼくはこの試合で勝たないといけないんだ。
    昔からの夢を叶えるために。

    だから多少のリスクがあっても高難易度の技を決めないといけない。
    そんな脅迫概念にも似た焦りを胸に 次の地点で飛んだ時、体に違和感を感じた。

    途切れる集中力。
    マズいと思った瞬間はもう遅くて、バランスを崩した体はそのまま冷くて固い場所に――





    「っ…!」

    目を開けて入って来たのは薄暗い室内で、あの試合会場じゃない。
    短く荒い呼吸を繰り返しながら、ぼくはベッドに横たわっていた。

    一瞬何が起こったのか理解できなかったけれど、隣で眠るアオイを見て 昔の夢かと把握した。
    伝う汗のせいで髪が頬に引っ付いて気持ち悪い。

    頭も痛いし吐き気もする…。

    無理にでも寝ようか悩んだ末、彼女を起こさないように気をつけながらベッドから抜け出すと、シャワーを浴びに行った。
    温かいお湯にあたれば、気分の悪さが少しはマシになるんじゃないかと 一抹の期待を持ちながら。

    …結果は気分は晴れずに最悪なままだったけど。
    しかも変に目が冴えて上手く寝つけそうにない。

    リビングに行き鎮痛剤を取ると水と一緒に飲み込んだ。
    明日も早いからこのまま寝たかったけど、未だに心臓が不気味なリズムを刻んでいるのを聞いて、落ち着かせるためにも寝室には戻らずにソファに腰かけた。

    「…一体いつまで引きずるんだ」

    右手を額にあてながら呟いた言葉はそのまま消える。
    即効性を謳う薬を飲んだはずなのに、一向に治らない頭の痛みにイラつく。

    こんな時、何かを壊したい衝動に駆られるけれどぐっと我慢した。

    …今はアオイが寝てるんだ。
    こんな馬鹿みたいな行動をして起こしたくないし、心配させたくもなかった。

    彼女と出会ってから、あの日の未練や後悔は綺麗さっぱり捨てたはずなんだ。
    だから、どうして今更…怪我をした日のことを思い出してしまうのか。

    いや、こんなこと考えたってもう、あの日に戻ることなんてできないのに。
    それなのにどうして――


    「ふぁ…」

    突如開いたドアから顔を出したのは毛布を抱えたアオイで、目を完全に開かないままゆっくりとした動作でぼくの方へ歩いてくる。

    「アオイ…?」

    もしかして起こしたかと焦ったけど、彼女はソファに横たわると ぼくの太ももの上に頭を乗せた。

    「うぅ…かたい…」

    文句を一つこぼしたかと思えば、そのまま持ってきた毛布を被って寝る体勢に入る。

    「アオイ、ぼくはまだここにいるから部屋に戻りなよ。風邪引くよ」

    さっき暖房をつけたばかりのこの部屋は、まだまだサムい。
    寝室に行くよう説得しようとしても、小さな子供のように嫌々と首を振る。
    この場にいつづけようとするアオイに困惑していると、彼女はぽつりと呟いた。

    「ぐるーしゃさんの、そばにいる…」

    無理矢理抱き上げてでも戻そうとしていた腕が止まる。
    それっきり、寝息を立てながらアオイは静かに眠りについた。


    そばにいる…。


    たった数文字しかない言葉が、ぼくの頭の中で何度も繰り返される。
    アオイが、ぼくのそばにいてくれる?
    こんな 何年も前に終わったことで魘される、情けないぼくなのに…?

    「ぐっ…」

    咄嗟に口元を手で押さえたけれど、そこから漏れでる嗚咽が止まらない。
    涙がアオイの方へと落ちないよう気をつけながら、ぼくは泣き続けた。


    ひとしきり泣いた後、眠る彼女の小さな体を毛布ごと抱き上げると寝室に行き ゆっくりとベッドの上に置いた。

    「あたたかい…」

    そして同じく横になって優しく抱き締めると、アオイの額に唇を寄せる。

    途端にやってきた穏やかな眠気に身を任せながら、ぼくも寝ようと目を閉じた。

    …あれだけ響くような頭の痛みも気がついたら消えていた。

    明日起きたらアオイにお礼を伝えよう。
    もしかしたら寝ぼけていて、さっきのことなんて忘れてしまっているかもしれないけれど…。

    それでも、何度でもぼくを救ってくれる彼女に 感謝の言葉を贈りたい。


    ありがとう、アオイ…――


    終わり
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    Replies from the creator

    recommended works

    chikiho_s

    PASTTwitterに上げたバレンタインとホワイトデーの連作。
    プレゼントは死ぬほど貰うけど、自分からあげるなんて無いだろうから悩み悶えていればいい
    ココアの件はフォロワーさんのリクエストで。グランブルマウンテン(砂糖たんまり)でもいいね。可愛いね。

    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19706108
    氷の貴公子とチョコレイト今年もこの日がやってきた。一年の中でも憂鬱な日。バレンタインだ。

    ジムの建物内を埋め尽くす勢いでチョコレートやプレゼントが届く。言うまでもなく全部ぼく宛て。わざわざ雪山の山頂にあるジムまで届けにやってくる人もいる。多分明日は本部に届けられた分がやってくる。正直、意味がわからない。
    この日だけ特別に一階のエントランスに設置されるプレゼントボックスは何度回収しても溢れていて、業務に支障が出るレベル。下手にぼくが表に出ようものならパニックが起きて大惨事になるから、貰ったチョコレートを消費しながら上のフロアにある自室に篭もる。ほとぼりが冷めたらプレゼントの山を仕分けして、日持ちしない物から皆で頂いて、残りは皆で手分けして持ち帰る。それでも裁ききれないからポケモン達に食べさせたり、建物の裏にある箱を冷蔵庫代わりにして保管する。これは雪山の小さな特権。
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