Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    めいこ

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 2

    めいこ

    ☆quiet follow

    三人称視点の練習
    初めて三人称視点で書いたから読みづらいかもしれないです
    ニキくんにイチャついている所を見られてしまったひめ巽(やることやってるのを匂わす表現あり)

    #ひめ巽
    southeast

    僕はこれから秘密を抱えて生きて行くっす ニキは見てしまった。いや、見せつけられてしまったというのが正しい表現だろうか。
     事の発端は、ニキがバイトをしているカフェシナモンでの出来事だった。同じユニットメンバーのHiMERUがシナモンにやって来て——

    「椎名、いつものコーヒーをお願いします」
    「了解っす〜!」 

     カウンターに座ったHiMERUは本を取り出して読み始めた。数分後、ニキがコーヒーを持っていくと、そこには今しがた来店したばかりのお客がいて——

    「おや、HiMERUさんこんにちは♪」 
    「巽……」
    「ここで会ったのも神のお導きですな。お隣ご一緒しても良いでしょうか?」
    「どうせ断っても勝手に隣に座るんでしょう?これからHiMERUはコーヒーを飲みながら本を読むのに忙しくなるので、貴方の相手は出来ませんよ」
    「ふふ♪ありがとうございます」

     ALKALOIDの風早巽がHiMERUに声を掛けて、隣に座ったところだった。
     実はこの二人は付き合っているらしく、Crazy:Bのメンバーはかなり前にHiMERUから報告を受けていた。
     報告を受けた後にもCrazy:BとALKALOIDが同じ現場になったことが何回もあるが、二人は恋人同士なんて素振りは全く見せず、必要以上の会話もしないものだから、あの報告は幻だったのかなと思うくらいだった。
     燐音が度々「ALKALOIDのおに〜さんとはどうよ?」と茶化すけれど、HiMERUは淡々と「特に変わりはないです」としか答えないからCrazy:Bのメンバーは面白くない。
     これは初めて恋人同士としての二人のやり取りが見られる、面白いものが見られそうだとニキは楽しみになって来た。
     HiMERUにコーヒーを出したあと、メニューと睨めっこしている巽に声をかける。

    「風早くん、いらっしゃい!注文決まった?何にするっすか?」
    「温かい紅茶をお願いします。あと、小腹が空いているので、何か紅茶に合いそうな、ニキさんお勧めの甘いものをお願いしますな」
    「う〜ん……アップルパイはどうっすか?食べ応えもあるし、紅茶にぴったりっすよ!」
    「美味しそうですな♪では、それをお願いします」
    「はいはーい!ちょっと待ってね!」

     キッチンに戻ってアップルパイの準備をしながらチラリとカウンターに目を向けると、巽はHiMERUにひとしきり話しかけていて、HiMERUは本からは目を離さず一言二言相づちを打っているようだった。ニキからは何を話しているのかは聞こえないから、HiMERUの巽への態度は所謂塩対応というか、酷く素っ気ないものに見えた。
     ニキは他人事ながらなんとなくハラハラしてしまって、巽に提供するアップルパイを温めながらも時折チラチラと二人に目をやった。その間も、巽は柔かにHiMERUに話しかけ、しかしHiMERUは巽に一瞥もくれないものだから、ニキはさらにハラハラした。
    (HiMERUくん、風早くんがめちゃめちゃ話しかけてくれてるのにその態度はないっすよ。付き合ってるんでしょ?も〜、彼氏に振られちゃうよ!?)
     巽は恋人にあんな失礼な態度を取られて怒らないのだろうか。いや、彼は穏やかな性格だからそんなことはないだろうと思うけれど。もしかして、実は二人は既に破局を迎えているとか?実は喧嘩をしている真っ最中とか?万が一店内で口論にでもなろうものなら諌めるニキはたまったもんじゃない。
     温めたアップルパイに手早くアイスクリームを添えて、紅茶を淹れて提供するトレーに載せる。何故、こんなにも二人を心配しないといけないのか。ニキは足早にキッチンを出て、二人の座るカウンターに急いだ。
     ニキが、お待たせっす!と声をかけようと思ったとき、HiMERUが本から顔を上げて、巽の方に体を向けた。顎に手を当てて首を傾げながら巽の顔をまじまじと見つめ、口を開いた。

    「巽、痩せましたか?」
    「おや、分かりますか?——あ、アップルパイが出来上がったようですな。ありがとう、ニキさん」

     HiMERUの背後にトレーを持ったニキが立っているのに気づいた巽は、会話を中断してにこやかに紅茶を受け取る。ニキがテーブルの上にコトリとアップルパイを置くと、HiMERUは慌てて姿勢を元に戻し、咳払いを一つしてコーヒーを啜った。
     ニキはそんなHiMERUの様子を素直じゃないなと思いながらも、微笑ましく見ることが出来た。塩対応をしていても、HiMERUは巽に無関心ではないことが分かったからだ。

    「痩せましたよ。それもかなりの短期間で」
     巽がHiMERUにそう言うと、HiMERUは眉をひそめた。
    「やっぱり。どうして……」
    「ドラマのお仕事なんです。ほら、例の俳優さん。不祥事で降板されたでしょう?俺が代役になったんです」
    「ああ……例の」
    「病に侵されている役どころでしたから、役作りのために痩せました。撮影が迫っていたので、水だけの生活をしばらくしていたんです」
    「はあ、だいぶ不健康ですね」
    「でもその撮影も先ほど無事終わりまして。体が糖分を欲しているのでしょうな。甘いものが食べたくて仕方なかったんです。だから楽しみで♪」

     アップルパイを前に目を輝かせた後、巽は食前のお祈りの為、手を組んで軽く頭を下げ、目を閉じた。

    「ふーん、役作りって大変なんすね」
    「ふふ、椎名には出来ないでしょうね」
    「絶対できない!無理無理!死んじゃうっすよ」
    「まあ、そんなオファーはおそらく副所長がお断りすると思いますよ」
    「やっぱり毎日美味しいご飯をモリモリ食べないと!風早くん、今まで食べられなかった分いっぱい食べてってね!」
    「ありがとうございます♪いただきます」

     お祈りを終えた巽はぱちんと手を合わせた後、アップルパイを頬張った。断食後はスープやお粥のような胃に優しいものから順番に固形物に戻していくべきなのだろうが、十代の食欲には勝てなかった。久しぶりのスイーツ。口に広がる優しい甘み、ザクザク食感のクランブル、りんごとシナモンの香りが鼻に抜ける。自然と巽の口角があがった。

    「ん〜!美味しいです♪」
    「美味しそうに食べるっすね〜!僕もお腹空いて来ちゃった!」
    「椎名はいつものことでしょう?巽も……貴方は早食いなんだからゆっくり食べなさい」
    「ふふ、はい♪」

     咀嚼する回数を増やした巽を、HiMERUが見つめている。
     ニキは同じユニットで、HiMERUとの付き合いもそれなりに長くなって来たから分かる。彼は一見無表情で巽のことを見つめているようだが、実はそうではないと。少しだけ口元を緩めて、まっすぐ巽を見つめる瞳は少し甘さが滲んでて……甘さ!?あ〜、本当に二人は付き合っているんだとニキは初めて事実として受け入れることができた。

    「それにしても、HiMERUさんが一目見て痩せたと分かったのなら、俺の役作りも成功したということですな。よかったです」
    「さすがに分かりますよ。一キロ、二キロっていう痩せ方ではないですよ。頬がこけて見えます」
    「はは、健康にはよくないですよね。いっぱい食べて早く元に戻さないと。撮影と並行してレッスンもあったので、体力的にキツかったです」
    「それは大変でしたね。ファンのためにも早く体重を増やすことをお勧めします」
    「そうですな。ふう……久しぶりに食べたのでお腹がびっくりしていますな。目ではもっと食べたいのに、アップルパイ一切れでお腹いっぱいです」
    「そういうもんなんすね〜。僕はお腹がびっくりしたことがないからよくわからないっす。お腹が空きすぎて泣いてることはよくあるんすけどね〜」
    「ふふ、俺もこの数週間はずっとお腹が泣いていましたよ」
    「よく我慢できたっすね〜。そうそう、二人って付き合ってるんでしょ?初めてオフの時に一緒にいるところを見たんすけど、普段からこんな感じなんすか?」
    「えっと……」
     巽が口籠る様子からきっと違うのだろうと想像するがHiMERUが鋭い視線をニキに向けた。
    「そうですよ。あまりHiMERUたちのことに関心を示さないでもらいたいものです」
    「HiMERUくんこわっ。はいはい、これ以上は突っ込まないっすよ〜」

     この短時間ですっかり巽の皿は空っぽで、HiMERUの言うように巽は早食いなんだなとニキは思った。心配していたHiMERUと巽の雰囲気も悪くないし、恋人を甘い視線で見つめるHiMERUという面白いものも見れた。
     時刻はちょうどティータイムに差し掛かろうとしている。どんどん客が来るものだから、ニキはキッチンに戻った。
     その後もたまにキッチンからHiMERUと巽に視線を向けたが、二人して本を読み始めたので会話に花が咲くことはなかったようだ。
    (なんか不思議な二人っすね〜。付き合ってるにしては距離があるっていうか。まあ僕には関係ないからあれこれ考えるのはやめよ。お腹が空いてきちゃうっすよ)

     三十分後、HiMERUと巽は時間をずらして会計をして、別々に店の外に出て行った。
     ニキは巽にお土産を用意していた。数週間も空腹に耐えた巽の並外れた忍耐力に感動して。そして、これから体重を元に戻さないといけない大変さもよく分かる。ニキの非常食として、シナモンのキッチンで作ったケークサレを巽に食べて欲しかった。玉ねぎ、プチトマト、ほうれん草、ポテト、ハム、ブロッコリー、ふんわり香るようにパルメザンチーズを入れてパウンドケーキ型で焼いたニキの自信作。パンよりは軽くて、具沢山で栄養も取れるから今の巽にぴったりで、どうしても食べて貰いたいと包んでおいたのに、すっかり渡すのを忘れてしまっていた。
    (いっけない!風早くんにお土産を渡しそびれたっす!まだ外にいるかな?)
     慌てて店の外に出ると、巽とHiMERUの後ろ姿が見えた。良かった、追いつける——と思ったのに、二人はスっと人気の無い死角に入ってしまった。
     ニキはお互いのため絶対に覗いてはいけないだろうなと薄々感じてはいたが、焼きたてのケークサレを渡したいから仕方ない。
     ちらっと柱の影から様子を見ると、HiMERUと巽が向かい合って話をしているところだった。HiMERUの手が巽の腰に回されているのをニキは見逃さなかった。

    「しばらく忙しいから連絡が出来ないと聞いていましたけど、こんなに痩せるだなんて聞いていないです」
    「すみません、HiMERUさんに心配されるかなと思って黙っていました」
    「はあ……巽のプロ意識には感心しますけど、この痩せ方は心配になります」
    「何事も無かったかのように体重を戻してから君に会うつもりだったんですけど、シナモンでバッタリ出会ってしまいましたからな。こんなことなら最初から君に話しておくべきでした」
    「そうですよ。恋人と連絡が取れなくて寂しい思いをしている上に、久々に顔を合わせたら巽が病的にガリガリになっていて。あーあ、秘密にされていて可哀想な俺」
    「ええっ……ちょっと、拗ねないでください!HiMERUさん」
    「ふふっ、冗談です」
    「もうっ!冗談にしてはリアルなのやめてください」
    「連絡が取れなくて寂しい、は本当です」
    「HiMERUさん♡」
    「でも、これは体型を元に戻すのも一苦労ですよ。ただ食べる量を増やせばいいっていう訳ではないですね。筋肉も落ちてるからトレーニングしながらでしょう?時間がかかりますよ」
    「そうなんですよ……HiMERUさん、協力をお願いしますな」
    「え、抱き心地が悪くなってるのに?」
    「も〜!意地悪言わないでください!」
    「ふふ……嘘です。協力します。まずは一緒に食事をしましょうか。今夜の予定は?」
    「ないです。仕事も先程終わった撮影だけなので」
    「では決まりですね。俺の家で美味しいものを食べましょう」
    「楽しみですな♪……ええと、その後はお泊まりをしてもいいですか?」
    「良いですよ」
    「わっ!ますます楽しみですな♪」
    「ふーん、何が楽しみなんですか?」
    「……HiMERUさんと一緒にいられて、HiMERUさんに触れて、HiMERUさんと愛を確かめ合うことが出来ること、ですな」
    「ふふっ……そんな恥ずかしいことをよく言えますね」
    「ふぅ……今日のHiMERUさんは意地悪ですな」
    「巽に何も知らされず、暫く放っておかれましたからね。こうなった俺は厄介なのをよく知ってるだろ?」
    「そうですな。でも……俺なら治し方も知っています……」
    「……ッ」
    「……んっ……HiMERUさん、治った?」
    「……まだ治ってない……今夜を楽しみにしていますね」
    「はい♡」

     ニキは覗いてしまったことを激しく後悔した。
     先程まで二人は恋人同士だけど距離がある、なんて考えていたのに。HiMERUのポーカーフェイス、演技力の高さを侮っていた。この二人に距離なんて存在しない。今もキスしてゼロ距離だった。甘い、激甘だ。今すぐ手に持っている塩味のケークサレを頬張って甘さを中和したい。知りたくなかった。こんな秘密を抱えてこれから生きて行かなくてはいけないなんて。出来ることなら燐音とこはくも道連れにしたかった。今後HiMERUとどんな顔をして話せば良いのか分からない。
     え、ここってESビル内だよね?こんなイチャついてて平気なのか?などとニキが混乱していると、普段通りの顔をした二人が死角から出てきた。
     運悪く、ニキと目が合ってしまった。HiMERUは何事もなかったように涼しい顔を取り繕ってるけど、目は泳ぎ、面白いくらいに顔色がどんどん青白くなって行った。

    「おや?ニキさんどうされましたか?何か忘れ物ですか?」
    「あっ!いやっ!忘れ物じゃないんすけどね……風早くんに食べて欲しくて。はいこれ、お土産」 
    「ありがとうございます♪何でしょうか?」
    「焼きあがったばかりのケークサレっす。体重管理が大変でしょ?野菜をたっぷり入れたから栄養満点っすよ!たくさん包んだからHiMERUくんの分もあるし、夜にでも二人で食べてね!」

     努めてにこやかに、爽やかに、何も見ていませんよ、という体を装って伝えたのに、ニキは最後の一言で墓穴を掘ったと確信した。盗み聞きしていましたと白状したようなものだ。
     固い笑顔を顔に貼り付けたままHiMERUを見ると、HiMERUも同じような顔をしていた。

    「ふふ、お恥ずかしいですな。ありがとうございます♪HiMERUさん、夜に一緒にいただきましょうね」
    「ソウデスネ」
    「ああ、ニキさんの優しい心遣いが嬉しいです。貴方の行いを神もきっとご覧になっていますよ、Amen……では、俺は一足先に失礼しますな。HiMERUさん、また後で」
    「ハイ、マタアトデ」

     巽は何事も無かったかのように去っていってしまった。神が見ているなら、どうかニキとHiMERUを救って欲しい。何も知らなかった数分前まで時間を遡らせて欲しいと切実に願いながらニキは口を開いた。

    「カフェシナモンってESビル1階のエントランスの奥にあるんですけど……」
    「……知っています」
    「監視カメラとか大丈夫っすか?」
    「……あそこは監視カメラの死角です」
    「ふーん、そうなんすね。HiMERUくんって用心深そうなのに意外と迂闊でびっくりしたっすよ。それだけ風早くんに久しぶりに会えて嬉しかったんすね〜。HiMERUくんって、恋人同士らしい姿を僕たちの前だと見せないけど、二人きりの時ってあんなあま〜い感じ……ゴフッ」
    「……椎名……一週間、いえ、一ヶ月。ランチを奢ります」

     この話は他言無用、わかりましたね——HiMERUに脇腹をグーで小突かれ、無言の圧力を感じたニキは、ただコクコクと頷くことしか出来なかった。

     ——1ヶ月後
     そこにはHiMERUの協力もあって健康的に元の体型に戻った幸せそうな巽と、一ヶ月の間毎日重すぎる昼食を噛み締めたニキと、どんどん財布が軽くなっていったHiMERUの姿があったとさ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💘💘💘💘💘👏👏👏👏👏💘👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    siiiiiiiiro

    MENU2023/5/3「SUPERbrilliantdays2023」にて発行予定の新刊サンプルです。

    【スペース】東6り17a // milmel
    【サイズ/P数/価格】B6/表紙込54P/500円

    「幸せだけがハッピーエンドではない」をテーマにした、パロディのひめ巽3篇を収録しています。
    そのうち1篇はこちら⇒https://t.co/T6r2Wbq84D
    Silence CurtainCall①bite at neck (通常HiMERU×リカオン巽)


    この世には、自分によく似た人間が最低三人いるという。
    ドッペルゲンガーとも言われるそれに出会ってしまうと、寿命が縮むだの大病に罹るだの、様々な不幸が降りかかるらしい。安っぽいバラエティで声ばかり大きい芸能人が話していたことを、妙に覚えている。
    ――じゃあ、自分の大嫌いな人間にそっくりなやつに出会った時は、何の不幸と言えるのだろうか。




    「~っああもう! どうして言うことが聞けないのですか! 巽……!」

    フローリングを駆け回る足音がリビングに響く。自分のものではない軽いそれは、ろくに物を置いていないマンションの一室を縦横無尽に駆けていた。
    現在進行形で住んでいる寮とは別に借りていたここを、契約し続けていてよかったと思う日がこんなに早く来るとは想像も出来なかった。病院にも近く、仕事にも行きやすい立地で選んだだけで、決して今手を焼いている男の為ではないけれど。
    9845