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    way2_cloud9

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    way2_cloud9

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    葉流圭(主・智)。
    付き合ってる葉流圭。葉流火の未来の尊厳を守るため、キス以上はNGにしてる主・智と、キス以上をしたい葉流火の話。

    ・謎時間軸。
    ・葉流火は主・智両方と付き合っている。
    ・ブロマンスの範囲の圭圭描写。

    #葉流圭
    yeRyuKyu

    葉流圭(主・智)。前編 どんな時だろうと、いつも太陽を向きなさい。
     そうすれば────




     こんなモンは屁理屈だと一笑していた単純(シンプル)な精神論が、予想を裏切って抜群に効果を発揮した。
     目に見えて清峰の調子は上がり、面白いほど順調に強くなっていく。
     かけた"魔法"は簡単だった。
     以前からずっと渡され続けてきた清峰からの"好きだ"へ、要・智将ともに応じたのだ。
     実際は、その"簡単"が最も難しかったのだが。

    「おい、清峰。最近調子上がりっぱなしじゃねーか。球走りまくってるしよ」
     部活終わりの空気が賑やかな更衣室で、藤堂が出し抜けにエースへ褒めを寄越す。
     確かに、ここ最近の清峰の調子の良さは誰が見ても小気味良いほどだった。
     そんな、遊撃手からの好評価を、広大な面積の背中へ制服のシャツをまといながら、エース…清峰はこともなげに褒めを打ち返した。
    「俺はずっと強い。それに、エースだから強くて当たり前」
    「なんでイチイチ好戦的なんだよ。しかし、更に技術(テク)上げてくるって絶対何かあんだろ、きっかけ。もしかして、ついに彼女でも作ったか?」
     "彼女でも作ったか?"の文脈に、清峰と並んで着替え途中だった要の肩がビクッと派手に跳ねる。
     分かりやすいほどの反応だったが、幸い、話に没頭していて目敏く気付いた者はいなかった。隣の幼馴染を除いては。
    「それはあり得ないでしょう。告白の場を焼け野原にするようなエース(笑)ですよ」
    「だな。自分で言ってて ねェわ って思ったわ」
    「でも実際、清峰くんくらいストイックな方が長い目で見た時にちょうど良いのかも。ほら、プロ選手が最近、不祥事や過去のスキャンダルでスッパ抜かれて契約解除になったり、心象が酷く下がって成績に影響出たりしてるしさ」
    「ああ、確かあの選手、オンカジやってたんでしたっけ。で、ついでに大学リーグ時代の元恋人がM男専門の風俗嬢だったって抜かれたやつですよね。賭博から特殊性癖まで暴露されて死体蹴りもいいとこですが」
    「ヤベェな。プロ入り後のやらかしはしょーがねェにしても、プロ入り前のことまで素行抜かれんの納得いかねー」
    「この先、もし藤堂くんがそういう立場で過去を抜かれることがあっても大丈夫なんじゃないですか。特に女性関係とか」
     千早の小バカにした煽りへ「あ"!?」と藤堂がロッカーを叩き閉めて睨む。
     ますます賑やかさの増す会話を傍目に聞きながら、要が視界の端にたたずむ智将と訳ありげに視線を交わした。当然だが、智将の姿は要にしか見えていない。
     思いがけず、藤堂達の会話はまさに、智将と要が清峰と付き合う上で線引きを設ける所以である内容だった。
     というのも、今はもちろん、将来的な清峰の尊厳を絶対守るため、恋へ応えることで精神的にどんな手助けもするが、肉欲的に応える献身にはしっかり線引きをする。分かりやすく言うなら、キスまでは応えるが、それより先は応じられない、そういうことだ。
     そうすることで、足を引っ張りたがるあらゆる悪意から清峰の才能を守り、清峰の今も過去にもつけ入る隙や落ち度を作らない。
     暴論だが、恋までならまだ、綺麗に収められる。しかし、それより先の、欲を絡めた愛に変わってしまえば、誤魔化しもきかず収められなくなる。
     いくら清峰と想い合えていたとしても、自分の想いと欲望を優先して清峰の未来に落ち度を作ってしまっては元も子もない。

    「初めて投げた。楽しいね」
    「圭ちゃんと一緒に野球がしたい」

     幼馴染が才能へ火を灯しはじめた時の笑顔が思い浮かぶ。
     線引きにこだわるもっともな理由はここだ。
     濁らせたくない。あの時の笑顔のまま送り届けてやりたい。
     清峰葉流火という輝かしい才能を、正しい道で、基準にそって、未来まで送り届ける…そんな理想のため、この線引きの徹底に関係性の在り方がかかっていた。
     "間違いは絶対起こさない"と、清峰の想いへ応えた日に智将と要の間でそう取り決めてある。ここは動かせない。
     そもそも、智将は清峰と付き合うこと自体に良い顔はしていなかった。だが、せっかく同じ方向を向いている清峰と自分達の想いを蔑ろにしたくないという、要のもっともな意思を尊重し、引っ張られた形だ。
     清峰のことが大切で好きだという感情と、そんな清峰の未来のためを思う感情…ちょうど間を取ったし上手くやれている、そう思っていた。

     どうやら、意識を思考へ傾け過ぎていたらしい。要は今、気がついた。
     レギンスから制服のスラックスへ履き替えていたところ、隣でとっくに着替え終えた幼馴染が尻の辺りをガン見している。
     ほとばしる情欲を乗せた生々しい熱視線を至近から投げつけられ、ビックリしてたまらず息を詰める。顔が整っていると、どれほど情欲を乗せていても瞳は相変わらずキラキラと輝いて見えるようだ。
    「ッ…オイ!ちゃん葉流〜〜〜!そんなキラキラした瞳で満点の星空みたいに俺のケツ見んなッ!」
    「着替えるの遅い圭が悪い。他のヤツに見られるから早く隠せ」
    「はぁ〜〜?どの口が言ってんだよっ!どの口が!」
     いくら幼馴染で付き合っているとはいえ、あからさまな視線で身体を舐められるのは恥ずかしいなんてものじゃない。
     要は真っ赤になりながら素早くスラックスを履いて着替えを済ませると、清峰へ正面を向けた。とにかく、幼馴染の視界から己の尻を外したかった。
     そんな2人のやりとりを、最下位の星占いほどつまらなそうに藤堂達が眺めている。
    「なあ、アイツらの距離感バグは今に始まったことじゃねェけどよ、やっぱ変だよな」
    「まあ、要くんは清峰くんにとって永久機関ですからねー。まず飽きるってことは一生ないんじゃないですか」
    「智将の要くんとも独特の仲の良さだもんね。でもやっぱり、変かどうかよりも仲が良いに越したことはないんじゃないかなぁ」
    「ま、ヤマが言うならそうだな。おい、清峰。何きっかけか知らねーけど、要でなんか調子上がってんならもうそのまま要でいっとけ。幼馴染でステ上がんなら手軽でいーじゃねーか」
     藤堂にとって特に深い意味はなく、いつも通り冗談で発した言葉だったが、他の4人には別の意味で同じように受け取られ、要の肩がふたたび大袈裟に跳ねる。そのほぼ同じタイミングで、勘の良い千早がエナメルバッグをわざと藤堂へぶつけた。
    「すいませーん。なんか当たっちゃいましたー」
    「千早、テッメェ…!絶対ェ、わざとだろ!」
    「葵ちゃん、さっき言ってたそれどーゆー意味!?ねえ、どーゆー意味っ!?」
    「要、お前もうるせェんだよッ!どういう意味って…まんまだろ。なんか他にあんのかよ」
    「俺はずっと圭にしてるし、これからも圭でいく」
    「お前は黙ってろ清峰ェ!!思い入れは強いけどバトルはあんま強くないファーストポケモンみてェに俺を語ってんじゃねー!ややこしくなるからもう口閉じてて!」
     要が噛み合わない話をまわし続ける様子に堪えかねて、こちらも勘の良い山田が助け船で手引く。
     このことで、清峰と要が幼馴染から関係が変わり始めたことに気付いていないのは藤堂だけだとハッキリ分かった。
    「あっ、えっと…僕カギ当番なんだよね!弟と約束してることあるし、早く部室締めたいんだけどいいかな?」
     さすがは主将のひと声で、この話はひとまず放り出すことに成功した。

     帰り道、焼いた空ごと呑み込んでいく夕陽を背に受けながら、要は幼馴染と話しつつ、虚像の姿の智将とも器用に対話を進行していた。
    (バレたかと思った…)
    『確かに、藤堂以外にはすでに気付かれているが、千早と山田なら大丈夫だろ』
    (えっ、瞬ピーとヤマちゃんにはもうバレてんの…!?)
    『むしろ、あそこまで空気を読まれてもバレてないと思えるその頭がめでたいな』
     実体のある要と清峰の数歩先を進みながら、智将が苦く笑う。
     夕日で前に伸びてさらにデカさを増した清峰の影を踏まないよう、気をつけながら歩いている。
     虚像の姿ではそもそも影を踏むも何もないが、気持ちの問題なのだろう。
     "最近ホームランバーのサイズが小さくなって4本はいかないと足りない"、"俺はひと箱いく"などとくだらない話をしていたところでまた、清峰の視線が今度は要の唇や首筋の辺りを舐め上げている。
     あまりの分かりやすさに見られることが恥ずかしくなり、思わず要が清峰から顔を逸らした。
    (ねえ〜〜〜智将。葉流ちゃん最近、こんな感じでめっっっちゃ見てくんだけど!智将の時もそう?)
    『気付いていないフリをしてる。主人はアホで乗り切れる分、ラクだろう』
    (はあ!?ラクなわけねェだろ〜〜!必死にごまかしてんだからッ!ねー、見過ぎだって智将から葉流ちゃんにそれとなーく言ってよ。俺が言ってもナメられて言うこときかねェもん)
    『まあ、そうだな。踏み越えないようにこの際、線引きはハッキリさせた方がいい。葉流火には俺から話すよ』
    (良かったぁ…!お願いシマス!)
     話の切れ目でちょうど道中に清峰と分かれるところまで辿り着き、あからさまに安堵した表情で要が「じゃあ、また明日な!」と手を振る。そして、足早に家へと歩き出そうとした。
     まだ一歩すら踏み出していないその背中を「圭」と清峰に呼び止められる。
     返事はおろか、要が振り向く間もなく、清峰が距離を詰めて来てグッと顔を寄せた。そのまま唇が触れるか触れないかギリギリの距離でやっとキスされそうになっていることへ気が付き、要があわてて身を離す。
     もう少しというところで思いがけず"おあずけ"を喰らい、清峰がブスっとした顔でむくれている。
    「ちょっ、葉流ちゃん…!?ここ外…!」
    「外じゃなかったらしていいのか」
    「えっ…!?あ、えっと…」
    「今日俺の家、誰もいないから」
     まるで最初からこうすることを決めていたように、清峰が怪物の握力で要の腕をグイグイ引っ張って行く。
    「いやいやいや!まだ何も言ってないし行かねェってば!!圭ちゃんはお家へ帰りますぅー!だから手離し…ッ、力つっっっよ!折れる折れるッ!えっ もうこれ折れてんじゃない…!?」
    「折れてないし圭が本気で嫌がることはしないって約束する。だから、来て欲しい…ダメか…?」
     もうほとんど自宅マンションの近くにまで引き摺って来ておきながら、欲に抗う切ない瞳にそれでも期待を宿して"ダメか?"などとたずねてくる。
     こんなもの、断れるわけがない。
    「はぁ〜〜…しょうがねェなぁ〜〜ちゅーだけしたらすぐ帰るからなッ!」
     なんだかんだ、清峰の良いように煽動されているなと感じつつ、気付けば要は、清峰の部屋のデカいベッドへ座るよう部屋の主に促されていた。

    「はい。葉流ちゃん、確認。ちゅーだけだかんな」
    「…分かってる」
     要が腰を下ろしたそばから清峰が隣へ陣取り、腿が触れ合う距離で手を絡ませてくる。
     キスだけだと再度念を押されて、分かったの返事とは裏腹にどこか納得いかない顔で要の顎を持ち上げ、ゆっくりと口付けた。

    Next→後編

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