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    way2_cloud9

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    way2_cloud9

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    両片想い→両想い智主。
    葉流火を未来まで送り届けるために、自分にもついでに優しくしてくれてるんだろうなと思ってる主と、葉流火へ尽くさせるため、主の意識を葉流火へ向けさせようとして自分に向いてしまい、手放せなくなってる智のすれ違い両片想い智主。
    ・後編にR18パート予定。
    ・葉流火とはブロマンスな関係。
    ・捏造過多。

    #智主
    #圭圭

    両片想い→両想い智主。 "冗談だよ"の裏にはいつも本心があって、"気にしてないの裏には苦しい感情があって、"大丈夫"の裏には耐えきれないほどの痛みがある。
     こんなものが全部乗っかってくるこの心情をまとめて片想いと呼ぶ。ロクでもない。限りなく可能性が低くて、実る余地もない恋ならなおさらだ。
     苦しいばかりで、想い抜いた先には何の収穫も祝福もないと分かっているのに、それでも想うことを止められない。それが片想いだ。そしてだいたい、フラれる。だからロクでもない。

    「なんだ、今日のリードは。あんな見え見えのツーシームをフルカウントから葉流火に投げさせるな。葉流火にまで恥をかかせる気か」
     今日の練習試合の配球ダメ出しを器用に聞き流しながら、要は智将の不機嫌な顔をこっそり魅入っていた。
     虚像の姿で自室の椅子に座り、腕と脚を組みながら怒ってもキレイな顔でわりと辛辣にダメ出ししてくる。自分相手だから情け容赦が無い。でも、どれほどキツい説教でお前はアホだと突つかれても、要は平然と持ち堪えていた。
     それはひとえに、もう1人の自分への想い入れからであり、白状してしまえば智将へ片想いをしていた。
     いつ芽生えたのかは覚えていない。ただ、智将がもう1人の自分だと分かった上であの甲斐甲斐しさに触れて、好きにならないことの方が難しかった。
      脳を共有している関係上、何も意識しなければ思考や感情は筒抜けになってしまう。だから、2人を紐付けている野球という目的以外では、出来る限り互いの心や思考へ干渉しないと取り決めてある。良くも悪くもこのルールが要の片想いを大きく育てあげていた。
     ため息を吐きながら咎めてくる眼差しが色めいていて、顔に熱が集まってくる。
     本当に同じ顔なのかと疑ってしまうほど、智将の顔立ちは整って見えた。
     ───葉流ちゃんに集中しがちだけど、智将だって美人なんだよなぁ…マスクで隠れんのもったいないくらい…
    少しの間だが魅入っていたせいで適当に相槌を打ってしまい、上手く聞き流していることがバレた。智将の顔が呆れ返っている。それでも、智将が今確かに自分のことだけを見て考えてくれているんだと表情から感じられて嬉しくなって、どれほど不機嫌をぶつけられても要は怯まなかった。それが反省していないと受け取られてますます智将の眉を寄せる。
    「おい、ちゃんと聞いてるのか?お前の配球は葉流火の投球精度に頼り過ぎだ。投手(ピッチャー)を疲れさせてどうすんだ。投げること以外の負担を請け負うのがお前の役目だろう。根拠も理由もない、無駄だらけのリードで2度と葉流火を振りまわすな」
     捕手として未だ上手くやれていないことは反省している。当然、小手指のエースたる清峰が何より重要で最優先であることも分かっているし、立場だって理解している。でも…それでも、1ミリだってこっちに寄り添ってはくれない、好きな人の淡々とした振る舞いが寂しくて、思わず胸中が転げ出る。
    「……智将はさ…葉流ちゃんのこと好きだったりする?」
     智将の眉がさらに寄せられる。言葉にしなくてもすでに、"何を言ってるんだ"と顔に書いてある。それでも誤魔化したりせず、正面から応えてくれる優しさに、身勝手だけど無視して欲しかった。
    「…そうだな。好きだ。幼馴染なんだから当たり前の感情だろ。そもそも嫌いならまず野球続けてねェよ。葉流火の才能を確かな形で未来へ送り届けるためにやってる…それは主人も分かってるだろ。出し抜けにそんなことを聞いてきて、いったい何が気になってるんだ?」
     ──じゃあ、俺のことは?
    たずねられた反射で出かけた本音を無理矢理呑み込む。この流れでもし、お前は別に好きじゃないとでも言われたらきっと立ち直れそうにない。だから、できるだけの呑気さを装って話を逸らした。
    「もう!冗談だってば!なんも気にしてねェよ。ね、今日俺けっこう打ってたっしょ?だからご褒美欲しい!」
    「はあ…またそれか。懲りないな。今度は何だ?」
     "またそれか"と勝手を把握して智将がこぼす様に毎回しぶとく"ご褒美"をねだった甲斐があったと内心、満足を湛える。
     "恋愛は段階を踏め"とは要のバイブル、恋愛テクニックの本に書いてあった一文だが、その教えに倣い、要は勉強会でその日頑張ったことをアピールして智将へ少しずつご褒美をねだってきた。それこそ、最初は"褒めて"から始まり、次に"手を繋いで"、またその次は"頭を撫でて"と少しずつステップを踏んだ。根が優しいからか、それともそういう方向に関心がないのか、智将はお決まりのしょうがねェなで全て応えてくれた。そういう対象としては見られていないのが透けて見えたが、そこは都合良く見ないようにして、要は今夜、ある種の賭けに出た。
    「今日はぎゅうってして」
    「ぎゅ…?ああ、抱き締めろってことか?」
    「うん…ほら、ハグって疲れ取れるって聞くし?あ!ヤだったらいーから…!」
     ご褒美を追って精神世界に潜ってくるところまでは従来通りだが、そこへ急に抱き締めて欲しいとねだられたことへ智将が訝しげにワケを瞳で訊ねてくる。やっぱり"頭を撫でて"から一気に"ぎゅうして"は前のめり過ぎたのかもしれない。要もさすがに断られるだろうと思っていた。むしろ断ってくれた方が良かったかもしれない。少し考えてから智将が要の手を取って引き寄せ、ねだられた通りぎゅうっと抱き締めた。
    「リードや配球はまだまだだが、捕手の目線を打席に持って来れるのは良い線だな。エラいぞ主人」
    抱き締めながらそう耳元で褒められ、幻覚での触れ合いなのに智将の匂いや温もりが確かに感じられて、その心地良さに思わずうっとりする。
     このまま勘違いしてしまっていればきっと楽だし、実際勘違いできそうな性格のはずなのに、こういう心情の機微には目敏くて、アホは適用外になるらしい。分かってしまう。清峰の未来のための延長でこうしてくれているだけだということが。無条件に自分だけを想ってやってくれているワケじゃない。だから手放しに喜べない。
     1年の夏、帝徳対氷河戦を観戦した時、お互いを認識し合って初めて交わした約束を思い出す。
    『俺が消えるためには俺の存在価値が無くなればいい。甲子園へ行くためにまずは俺を越えてみせろ主人』
    『協力してやるよ。それまでは2人で仲良くやっていこうじゃないか』
     たとえ協力関係の上で成り立つおまけのような仲なのだとしても、智将と関わりを持てることに要は小さな喜びを感じていた。
     手加減なく厳しいけど優しくて甘やかしてくれる…智将を好きになるのは時間の問題だった。
     自分は智将のことが好きだけど、智将はきっとそうじゃない。あったとしても清峰だろう。だから無理に気持ちを探ろうとしたり、好きを伝えないようにしていた。
     悔しいけど自分の立場は理解してる。こんな時こそ、持ち前のアホさが役に立って欲しかったと要は歯噛みした。
     それでもギュッと抱き締めてくれたことが嬉しくて、智将の肩口にこっそり頬をすり寄せる。
    「へへ、なんかあったかい」
    「さすがに気のせいだろ。…もう気は済んだな?早く寝ろよ」
    無慈悲に離れていく体温に強烈な寂しさを覚えたが、あともう少しだけと引き留める権利があるわけでもなく、要は「ちぇー」と呑気に強がって見せて寒々しさを押し隠すしかなかった。





    「要先輩、彼女さんはお元気ですか?」
     昨夜の余韻を糧に、今日の練習試合も頑張ろうとグラウンドへ向かいながら意気込んでいたところへ突然横から瀧に話しかけられ、ビックリして要が叫び声を上げる。
    「ギャーーッ!!び、ビックリした…ッ、心臓一回止まった絶対…ちょっと正ピー!脅かすのナシ!」
    「すみません。脅かしたつもりはないっスよ。機嫌が良さそうにされてたんで、カンボジアの彼女さんと楽しいことでもあったのかなと思ったんで」
    「カンボジアの彼女…?圭、カンボジアに彼女がいるのか…?いつから?ソイツは俺より強いのか…?」
    「シッ!葉流ちゃんは黙っててッ!」
     己のプライド可愛さでとっさに吐いた嘘とはいえ、ここまで引き摺られると情けなくなってくる。そして、同じように瀧から擦られたことがあるのだろう、二塁手と遊撃手が端から要の犠牲を面白がっている。
     事情を知らない幼馴染から追撃をかけられ、二遊間からもバカにされて、巻き返しが難しいこの状況で要は、敢えて本当のことを語った。
    「ま、まあ?そんなとこ?でもあんま気がないっていうか…正ピーは彼女いっぱいいるけどさ、その中で自分ばっか好きで向こうから好かれてんのか分かんなくて不安になったりとかあったりしねーの?」
     紛れもなく智将への片想いのことだが、要以外にそうだと分かる者などなく、また、思いの外恋愛のそれっぽく響いて二遊間がざわつく。
    「圭、やっぱり本当に…圭を不安にさせるくらいソイツは強いのか…?」と斜め上に勘違いしたままな幼馴染へ2度目の「黙ってて!」で静かにさせる。
     一方、恋多き男、瀧は、要に彼女がいるいないの真偽よりも目の前の恋愛話に興味を持った。
    「そもそも、グイグイいって彼女を飽きさせるなんてダサいことはしませんが、もし気持ちが分からなくなったなら、自分は彼女へ預けますね」
    「ん…?あずけ…?」
    「ゆだねるんです。好かれていれば彼女から求めてくれるんで。要先輩はかなりの遠距離ですし、お互いの心の距離まで遠くならないようにした方がいいっスよ」
     端の方で要をからかっていた二遊間も気付けば瀧の恋愛アドバイスにしっかり聞き耳を立てている。それら一部始終をさらに後方から主将の山田が楽しそうに見守っているのに気付いて、二遊間がさも興味なさげを取り繕った。
    「あ、ありきたりなテクじゃねーか。あんなん誰でも分かるわ」
    「ほ、ホントですよねー。歌舞伎町TVとかで語られてそうですよ」
    (二遊間ダッサ)





     今日の練習試合は自己評価にして及第点と呼べる出来だった。
      昨夜智将から酷評された配球やリードに意識を据えつつ、捕手としての送球判断もこなせたまずまずの試合だ。
     今夜はさすがに文句なしで褒めてもらえるだろう、そう期待していた要だったが、それは意外な方向から裏切られた。
    「主人。お前は相変わらずお気楽だな。いもしない彼女や縁のない恋バナにはしゃぐのは勝手だが、葉流火のいないところでやれ」
     まず話の入りからして不機嫌なのが伝わった。いつもの腕組みが今夜はやたら高圧的に感じさせる。
    「いもしない彼女はそうだけど、縁のない恋バナって何だよッ!?別に高校生なら普通じゃん!なんで葉流ちゃんの前でやっちゃダメなのかも全然分かんないんだけどッ!」
    「なら、逆に考えてみろ。葉流火に恋人が出来たとして、お前は意識せずにいられるか?」
    「そ…れは…やっぱ少しは意識するっしょ…葉流ちゃん彼女出来たんだって」
    「葉流火も同じだ。ずっと一緒だった存在に新たな関係性が生じれば少なからず葉流火へ余計な気を作ることになる。今はアイツにとって投手としての大事な段階を踏んでいる最中だ。それをお前が邪魔してどうする。葉流火に無駄な心配を与えるな」
     徹底して清峰に尽くし、やはりこちらには1ミリも寄り添ってくれない想い人へ、要が開きかけた唇をそっと閉じる。
     "なら、俺のことも見てよ"…言ったところで何にもならない。その恋バナはお前のことだと吐き出してしまいたかった。智将がかまってくれないからといって、清峰に対して嫉妬など感じないし、そんなもの自体あり得ないし、むしろ智将以上に清峰は要を要だと尊重してくれている。
     
     でも、智将が…1番大切な人が理解してくれない。
    「…分かった。葉流ちゃんの前じゃ言わない。」
     思いの外揺らいでしまった声を空咳で打ち消して誤魔化す。咳になのか、それともらしくないしょげた雰囲気になのか、智将が「大丈夫か?」とたずねてきた。それへ「何が?全然大丈夫だし」と笑って返す。いつもなら2人の時間を存分に楽しみたくてうるさいと呆れられるほど話が絶えない要だが、今夜は続ける言葉も話題も何も浮かんで来ない。
    少しの沈黙を挟んで、智将の方からやっと今日の要の功績を称えた。
    「今日の練習試合、よく見れてたぞ。内野フライを敢えて落としてダブルプレーを取っただろ。主人も試合に慣れてきたみたいだな」
     ここへきて期待通りに褒められたもののいつものように空元気でご褒美をねだる気になれず、ふと瀧が言っていた言葉が頭をかすめる。
     "もし気持ちが分からなくなったなら、自分は彼女へ預けますね"
    "ゆだねるんです。好かれていれば彼女から求めてくれるんで"
     恋多き後輩の語る、相手に預けるや委ねるの概念はよく分からないが、それに倣って要は今夜、自らはご褒美をねだらないようにしてみようと決めた。
    「へへ…でしょー?今日もちょー頑張ったから疲れたぁ。もう寝るわ」
     頑張っていつも通りを装い、座っていた体勢から立ち上がる。
     好かれているとか以前に、まずそういう対象として見られていないかもしれない。それに輪をかけて智将のあの性格だ。望みは限りなく薄い。
     求めてくれることの方が逆に珍しいよなと期待はせず、要が「おやすみ」と話を閉じようとした。それを阻むように智将から「主人」と呼び止められる。
    「今日はいいのか?頑張ったんだろ?」
     まさか智将からご褒美を向けてくれるなど考えてもいなかったため、要が見るからに顔を紅く染めながら動揺する。
    「…!?あっ…えっと…」
    「特にないならたまには主人からご褒美をくれないか。教えるのもなかなか疲れるんだぜ」

    next→後編
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