れおくに
(開発、良がる、可愛がって)
未来捏造
ヒーローが俺の手によって陥落しているのを見下ろすのは最高に気分が良い。
朝に放送する子供向け番組で高笑いする敵のボスの気持ちが分かる気がする。
目下シーツを乱して息を荒げながら、全身を紅く染めるヒーローの姿にごくりと喉が鳴る。
いつも休みの日に俺の家に来てくれる恋人は、筋トレ後に爽快な笑みを浮かべて現れて、美味そうにプロテインを飲んでいて、まさか押し倒されるとは予想してなかったのかもしれない。
ふぅふぅと息を漏らしながら、怯えたように見上げてくる、いつもは意志の強い瞳が快感に蕩けていて甘い飴玉みたいで舐めてみたくなる。
「國神」
「ん…っ、、っなんだ、よ」
「お前、感度よ過ぎじゃね?」
ゆるっと向けられた視線に羞恥心を植え付けてやろうと言葉を選べば、カッと顔を赤らめた國神がうるせぇと吐き捨てて枕に顔を寄せる。
はは、可愛いやつ…
付き合い始めの頃はここまでじゃなかった筈だ。
擽ったいといって逃げる國神を丁寧に開発したのは俺自身で、過去の俺を褒めてやりたい。
自分の気持ちは小っ恥ずかしい言葉でも素直に口にする癖に、俺からの言葉には照れて逃げてしまう。
いつまで経っても初心で色ごとに慣れないヒーローだな。
「ほら、顔隠すなって…ちゃんと見せろよ」
「ッ、意地…悪ぃ」
「今更だろ」
俺がフィジカルで國神に勝てるわけが無い。
だから嫌なら本気で抵抗すればいい。
こういう事をするってなった時に事前に話した事もあって國神なりの抵抗と照れ隠しのつもりなのかむくれたような表情をして見せる。
分かってねぇよなあ…とはその度に思う事で、そんな顔しても俺を煽るだけなんだとは一生教えてやらない。
俺が身体を撫でるだけで震えて短く息を吐く國神がシーツを乱しながら良がる。
鍛え上げられた筋肉は柔らかくて手に吸い付いてくるような弾力が癖になって、肌に這わせる手の動きが止まらない。
そんな俺に好き勝手されている癖に、体重を掛けないように脚を少しだけ浮かせる気遣いを見せる國神に距離を詰めて鍛えあげられた大切な脚を小脇に抱き込む。
「っ、玲王」
「ん…全部任せろよ、俺はその方が嬉しい」
縮まった距離で申し訳無さそうに、困ったように眉を寄せた國神にキスしてやる。
最近会えなかった分を纏めて充電させてもらおうと身体を寄せれば、触れ合ったところから熱を持った國神の体温がじわじわと移ってきて、興奮しているんだと感じ取れるそれに嬉しさを感じる。
もっと気持ち良くさせてやりたいと思って可愛い恋人を堪能するように首元や顔にキスを落とす度、國神が居心地悪そうに身体を身じろがせる。
「っ、は…、ンン、っ、あんまキスすんな」
「なんで、可愛い恋人を可愛がってるだけだろ?」
「ッ〜、だからっ、そういうのやめろ」
「ははっ、ほんと可愛いなぁお前、照れてんの?」
紅くなった頬を優しく撫でれば気持ち良さそうに目を細める癖に口での抵抗をやめない國神に笑いが溢れる。
「いつまで経っても慣れないな、ヒーロー」
俺を傷付けまいとシーツに縋りながら快感に耐える男を何処から絆してやろうかと頭の中で戦略を立てて攻略していく愉しさに目を細める。
全てを受け止めて、慈愛に満ちた面倒見の良い男はひたすらに突っ走る。
ヒーローになるんだと目を輝かせる國神も、陰った気持ちを溜め込み抗いながら突っ走った國神も、こいつの一面だと受け入れられる。
それでも、國神の屈託のない笑顔が好きで、不安や心配で陰らせたくなくて俺の気持ちを分かりやすく見やすく広げてやる。
そうしてやっと手に入れたこの関係をそう易々と手放す事なんて出来ない。
言葉にすればそのリスクは多少なりとも少なくなる。
やっと手に入れたんだ、今度こそ。
男の俺を壊れ物のように触る國神の手をシーツから引き剥がして俺の肩へと回せば、恐る恐ると手の平が確かめるように撫でる。
少しカサついたその感触に、後でクリームでも塗ってやろうと思いながら慣れない動きをする手を好きにさせる。
「もっと触れよ」
「ッ怪我するかもだろ」
「そんなやわじゃねぇって」
國神の心配事を笑って跳ね除けて、唇を啄みながら手の平で國神の身体をゆっくりと撫でていく。
キスの途中で促すように視線を向ければ、大きな手の平が俺の肩から首に這いずって髪の毛を軽く梳く。
そうかと思えば首筋を何度も往復して、自分のフェチに素直なところが可愛いくて、どうしてもからかってやりたくなる。
「はは、むっつりだな國神」
「っ、うっせぇ」
「可愛いやつ」
ちゅっちゅっとリップ音を立てながらキスを続けて、柔らかな筋肉を揉み込む手をゆっくりと下半身へとスライドさせていけば慌てたように國神の手で手首を掴まれる。
「ちょ、っ、たんま」
「なんだよ、今更、嫌か?」
「っ…嫌じゃねぇけど、ちょっとほんと」
「心臓が口から飛び出そう?」
うろうろと視線が彷徨う國神に、以前言っていた言葉を引っ張り出して聞いてみれば湯気でも出るんじゃ無いかと思うほどに赤くなった顔がこくこくと上下に揺れる。
「おーおー、出しちまえ出したまえ」
「っ、玲王っ」
予想通りの反応に笑みが溢れる。
國神は本気で思っているのか耐えられないと言わんばかりに口を手で覆うので、それを眺めながら下半身を触る手を止めず直接触って快感を与える。
「ンンッ、ふ、っ、ふ」
「れおっ」
玲王、玲王、と何度も呼ばる名前が心地良くて、青い監獄にいた時からの安心感のある声が今は快感に震えている…。その違いに今の関係をまざまざと思い知らされて1人興奮する。
今日は國神がへばるまでどろどろに抱き潰してやって、終わったらちょっと休憩して、一緒に風呂にでも入るかな、なんて直接的な快感に息を乱しながら身体をくねらせる國神を堪能しながらこれからの事を考え、恋人の名前を呼ぶ。
「練介、覚悟しろよ」
ひゅっと息を呑んだ恋人の反応が苛虐心を擽って、可愛がってやりたくて仕方がない。
この歳になって好きな子ほど泣かせたい、なんてガキみたいな気持ちになるなんて思いもしなかった。
怯える國神に向かって満面の笑みを向けてやる。
end.