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    snmgargt

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    snmgargt

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    ショタディオがベリトに仕えてる時代のジルと偶然出会っていた話

    素敵な旅になりますようにウァプラが親戚全員を納得させると言い出して、早三ヶ月。着々とその計画は進んでおり、今日は遠い土地に住む老夫婦のもとへ訪れることとなっていた。金儲けのことばかり考える人間が多いように思えていたが、その二人に関しては特に黒い噂もなく、誰が親族のトップになろうとも特に気にしない様子であった。なので説得というよりも、ただの説明くらいで済んでしまい、滞在時間はさほどかからなかった。

    「なんか拍子抜けだね。ああいう優しい大人もいるんだ」
    「・・邪魔されないならなんでもいい」
    「もー、せっかく応援もしてくれたんだから・・もっと喜ぼうよ」
    「興味ねぇ」
    「はいはい・・それより今日はこのまま帰るの?思ったより早く終わったし、宿に泊まるのちょっともったいなくない?」
    「お前本当に金にうるさくなったな・・」
    「誰のせいだと思って・・」
    「ただ今日は泊まりだ」
    「えっなんで?」
    「近くの森に用がある」
    「あー、うん。わかった。じゃあ僕は先に宿を探してるからウァプラ兄ちゃん行ってていいよ。えーと何時間くらいかかる?夕方になったら入り口にあった銅像のとこでいい?」

    子供とは思えないくらいにディオは判断とそれに対する対応が早い。単純に、この自然を前にすると視野が狭っ苦しくなってしまう主人に仕えてから身についたスキルであった。初めの頃はピクニック気分で彼の自然観察について行っていたが、ウァプラは一度モードに入ってしまうともうほとんどこっちの言うことなど聞いてくれない。草花や虫の知識を得るのは楽しいが、遠い地に来てまで付き合うものでもないだろう。今のディオにとってはそれが最善の判断だった。なのでその場で二人は別れ、手頃な宿を探しに街を練り歩く。できるだけ安いところがいい・・などと考えて、普通こういうのって大人の仕事だよなぁと小さくため息とついた。

    結局見つけたのは素泊まり可能な小さな宿であった。食事がついているようなところもあったが値段がバカにならない。とにかく今は節制すべき時期である。ウァプラも泊まれればなんでもいいという思考であるため、その辺は気にしなくていい。だがこうなると食事を自分らで用意せなばならない。台所は貸してくれるということだ。一度荷物を宿に置いて、ディオは再び出店が並ぶ通りへと出た。

    「わ、すごい。ここすっごく安いや」

    田舎の方だとは思っていたが、随分と物価が安いようだ。やはりこれなら作った方が断然に安く済む。先ほどの宿を選んでおいて正解だ。ディオは自分で自分を褒めつつ、食材を選ぶ。店主に声をかけ、袋につめてもらってる間にお金の用意をしようとして、そしてはたと、肝心の財布を持っているのがウァプラであることを思い出した。基本的に金の使い道に関してはディオがあれこれと頭を悩ます係ではあるが、知らない土地に来るときは子供が持っていると盗まれる可能性が高いということもあり、彼に財布ごと預けているのだ。うっかりしていた。ていうかさっき別行動しようとなった時に向こうだって気付いてくれてもいいのに‥などと思わないでもないが。森を前にした主人がそんなことまで頭が回るはずもなかった。

    「あ、あの・・すみませんお財布忘れちゃって・・えっと」
    「そうか、じゃあ取りに帰る?置いておくよ」
    「うーん・・そうしてもらえるとありがたいんですけど・・」

    ウァプラは本当に夕方に戻ってくるのか。森に足を踏み入れたら最後、時間の感覚を秒で忘れる男である。約束を取り付けたディオ自身、あの時から正直あまり信頼していなかった。念のためこの店が閉まる時間を聞いてから決めた方が良いだろう。

    「えっとおうちの人がいつ帰ってくるか分からなくて・・」
    「それなら私が立て替えましょうか」
    「えっ?」

    突然全く知らない声が横からかかる。驚いて見上げると、やはり全く知らない老人がお金を店主に差し出していた。こんな時、親切な人が立て替えてくれたと心の底から感謝できればいいのだけれど。悲しいことにディオは今までロクでもないタイプの大人に遭遇する確率が高い人生を送っていた。瞬時に、この人を信じていいのか、この後もっと多額の金額を要求されないかと不安になった。しかし、店主の反応を見る限り悪い人のようではなかった。おや旦那まだいらしたんですねぇ、今日はあの方はいないんですか、などと気さくに話しかけられている。

    「よかったな君、さぁどうぞ」
    「あ、ありがとうございます・・えっとあなたも」
    「いえいえ」

    立て替えてくれた老人はにこやかに頷く。さてどうしたものか。悪い人ではないのならば、早いところお金を返さねば。とりあえずこの辺りに住んでいるのならば家を聞いておくべきだろう、と判断する。

    「あの、お家どこですか?」
    「宿に泊まっているんですよ。ここの近くですから少し一緒に歩きましょうか」
    「あ、はい」

    老人について歩く。正直なところ結構・・というよりもだいぶ歳をとっているように見えるのだが、その足腰は随分としっかりしている。

    「あの・・」
    「はい?」
    「ありがとうございます。本当に助かりました。・・でも、どうしてわざわざ・・」
    「別に、大した理由ではないですよ。なんとなく、懐かしくなってしまいまして」
    「懐かしい?」
    「私もあなたの歳くらいの頃にはもう使用人をしていまして。そうやって買い物を良くしたものです。だから放っておけなくて・・。よく考えたら、差し出がましい真似だったかもしれません。申し訳ありません」
    「えっあ、いや!全然悪くないですよ!でも、なんでボクが使用人ってわかったんですか?」
    「それは年の功ですかね‥なんとなく、わかるようになるんですよ。私も今でも仕える身分ですから、余計にそうなるのかもしれません」
    「そ、そうなんだ・・?あれ、でも・・今でも?おじいさん、今もどこかで働いてるんすか?」
    「えぇ。昔からずっと一人の人に仕えさせていただいています」

    昔から。ということは。その主人とやらもおそらく高齢なのだろう。よくわからないが、互いにそこまで高齢なら、使用人なんて仕事というのは辞めさせるのが当然なのではないのだろうか。この人自身健康そうだけれど、相手も同じくらいの年齢であるのならば、何かあった時は少なからず若い使用人の方が安心できそうな気もするけれど。とはいえ。人様の家の在り方に口出しできる権利はない。


    「なんか・・大変そうですね」
    「そうですね。もう慣れましたけどね。そちらはどうですか?」
    「え?えーと・・」

    言われて、ディオは頭の中にウァプラとの日々を思い浮かべる。好きか嫌いかで尋ねられたとすれば。それは一応好き、だとは、思う。ああ見えて優しいところはあるのは事実だし、今でも自分が生活していけるのは彼のお陰だ。けれど人使いがいかんせん荒すぎる。あと、金遣いも。自然を大事にするのはいいけれど。破産寸前であることをもっと知ってほしい。だいたい、領主になるというのならもっと金銭感覚をどうにか・・などと。頭の中に不満が浮かび上がってきたところで、ふと横にまだ人がいて、尚且つ会話の最中であったことを思い出す。

    「あ、すみません。ちょっと、うちのご主人様のこと考えちゃって・・」
    「いえ、大丈夫ですよ、主人に対しては色々と考えてしまいますよね」
    「・・・えっと、あなたでもそう思ったりしますか?」
    「えぇ。思いますよ」
    「・・ここ直して欲しいなーってとことか、あります?」
    「えぇ、それはもう数えきれないほど」
    「たとえば?」
    「そうですね。人の大切にしている物をすぐに盗ろうとするところでしょうか。私は友人も初恋の人も、その方に取られてしまいましてね」
    「えっ!?ひ、ひどい、ですね。それは」
    「えぇ」

    本当にひどい話だと思う。けれど、何故だろうか。その老人の口調には強い嫌悪感は見られなかった。もう昔の話だと割り切っているのかもしれない。

    「けれど全て慣れてしまいました。辞めるタイミングも見失ってしまいましたしね」
    「そうなんですね・・」

    話を聞きながら、一応辞められる機会はあったのかな、とぼんやり思う。それは、そうだろう。いくらなんでもこんなおじいさんを働かせ続けるなんて、普通はしない。けれど、彼の口調からすると、今の現状にさほど不満もないように見える。話を聞くかぎり、申し訳ないがとても良い主人には思えないが・・と考えたものの。おそらくこちらの主人の話だって他人が設定を聞いたところで、間違っても「良いひと」認定されないだろう。まぁ、こちらは本当に良いひとなんかじゃないのだけれど。

    「あなたのご主人様にも直してところはありますか?」
    「・・うーん、いっぱいあるけど、直すのは・・多分無理かなぁ」
    「どこの主人というのも似ているものですね」
    「あはは、そうなのかもしれないです」

    たぶん、そういことなのだ。仕える身分からすれば、主人に対して文句なんて、一つや二つで済まないのだ。けれど、以前まで仕えていた男の話をするとなれば。おそらく自分はこんなふうに笑って話していないだろう。そう思うと、ウァプラのことをこんなふうに話せる自分は、以前よりはよっぽどいい環境になったのだろう。仕事の量はむしろ増えたことは否めないが、どちらがより居心地が良いかと問われれば。答えは決まっている。
    そのまま二人は談笑しながら老人が泊まっている宿へと歩いた。そこはディオは真っ先に候補から外した、一番高い宿であった。このひと・・というよりと、このひとの主人は随分とお金持ちなんだ、と驚く。明後日までは滞在の予定ですので、いつでもどうぞ。店の人にはあなたが来たら私を呼ぶように伝えておきますので。老人はそう言って、宿の中へと入っていった。

    「・・すごいなぁ、お金持ちでも優しい人って、本当にちゃんといるんだな」

    それから二時間ほどして日も暮れるかという頃。ディオは簡素な宿を出て待ち合わせに指定した場所へ移動する。結局三十分ほど待ちぼうけを喰らったあと、ウァプラが現れた。今更文句を言う元気もなく、昼間にあったことを説明して財布を受け取る。

    「俺もいく」
    「えっなんで?」
    「ガキのお前じゃいくらぼったくられるかわからねぇだろ」
    「そんなことする人じゃないって・・まぁいいや。通り道だし一緒に行こ」

    しかしたどり着いた高級宿に、すでにその老人はいなかった。なんでも急遽出発の予定を早めたらしい。

    「お話は聞いております。立て替えた分は結構だとおっしゃていました」
    「えぇ、それは・・あの、その人たちいつくらいに出ましたか?」
    「一時間ほど前ですかね。しかし馬車を手配していましたし、今から探すのは難しいかと・・」
    「そうですか・・。はぁ。そっか・・。ちゃんとお礼したかったのにな」
    「気にしないでほしいと、おっしゃっていましたよ。随分と優しそうな方でしたね」
    「はい・・あの人のご主人様って人にも会ってみたかったなぁ」
    「あぁ、綺麗な顔立ちをした男性でしたよ。まだお若いようでしたし。予定の変更も、その方が何か目当てのお宝を探しに行くのだと言い出したとか。いつものことだと笑っていましたよ」
    「えっ?」
    「あぁそうだ。お互いに頑張りましょうと伝えてほしいとの伝言も預かっています」
    「・・あ、ありがとうございます」

    店主はにっこりと微笑みウァプラとディオを見送った。肩を落とすディオを横目に、ウァプラは面倒くさそうに口を開く。

    「そもそも名前くらい聞いておけ」
    「だって・・話に夢中になっちゃって。ほら、ボク普段人とあんまり話さないでしょ」
    「いつも勝手に喋りまくってるだろうが」
    「それは屋敷にウァプラ兄ちゃんしかいないからでしょ!しかもウァプラ兄ちゃんいっつも返事ほとんどしないし・・ねぇやっぱり新しく誰か使用人探そうよ。子供一人じゃ不安でしょ」
    「クソウゼェ。お前が二人分働けば済む話だろ」
    「・・もー・・ボク絶対おじいさんになる前には辞めるからね」
    「あ?どんだけ先の話してやがる」

    全くもって優しさを持ち合わせないウァプラを前に、ディオはため息をつく。もう慣れてしまった・・というだけでスルーするのは考えものかもしれない。あの老人のように、歳を取ってもそばにいることになる。彼はそれでも不満そうではなかったが、自分はどうだろうか。やっぱりその年齢になるくらいには、流石に解放されていたい・・と、考えたところで、ふと思い出す。先ほどの店主の言葉を。

    (・・聞き違いかな?あのおじいさんのご主人様が、若かったって。だってボクと同じくらいの歳の時からずっと一人の人に仕えてるって言ってたし・・・)

     やはり、聞き間違いだろう。それにしても。おじいさん二人で、旅にでも出ているのだろうか。あの年齢のお金持ちが主人だというなら、もうとっくに隠居生活していてもおかしくなさそうなのに。どうかあの人と、あの人のご主人様が、危険な目に遭うことなく、無事に旅を終えられますように。彼にお金を返すことのできなかったディオには、そう祈るしか出来なかった。
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    snmgargt

    DONEクリスマスに一緒にケーキ食べる遥としゅとそれを眺めてるモモちゃんにたどり着くまでの話
    🐶 机の上に置かれた小さな箱を前に気がつき、遥はしばし固まった。シンプルなピンク色の包装紙に包まれ、リボンのついたそれは、昨晩までは確実に存在しなかった代物だ。鍵をかけて寝たはずだ。これは間違いない。だとすると、あの扉の鍵を勝手に開けて部屋まで侵入してきた人間がいる。誰か、など、考える必要はない。このシェアハウスで全員の部屋の鍵を当然のように手にしているのは、一人のクソガキしかいないのだから。すぐにでも捨ててやろうかと思った。しかし、厄介なことに送り主が送り主だ。速攻捨てようとするのを見据えて、自分にとって重要なものが入れられている可能性はゼロではない。なにせ堂々と人の私物を盗むような人間だ。忌々しそうに舌打ちをして、遥は雑な手つきでラッピングを外す。持ち上げた箱は随分と軽く、からりと音がする。何かと思い蓋を開けてみれば、四つ折りにされたメモ用紙だった。不審に思いながらも開いてみると、引き出しの二番目、という文字だけが書かれていた。引き出しの、二番目?恐る恐る視線を机の右下へと落とす。まさか開けたのか、ここを?勝手に?まぁそもそも人の部屋に勝手に忍び込むやつなのだから、今更な話であるけれども。いつになればプライバシーというものを覚えるんだ、あいつは。遥は苛立ちながら引き出しを開ける。やはりそこにも同じようにメモ用紙が入っていた。本棚の三番目。あぁ、馬鹿らしい。もう無視して、直接本人に聞き出した方が早い気がした。しかし簡単に口を割るような奴ではないのも明白だった。仕方なく遥は指定された箇所を巡る。おかげで次から次へと部屋の中を探索させられる羽目になった。あのクソガキ、一体どこまで人の部屋を物色してきたのか。ついに遥にとって聖域である、スターファイブのコレクションを並べてある棚にまで誘導されたときは、本気で頭が痛くなった。もうこれで最後にしてやる、あとは知らねえ。そう思い、大切に飾ってあったスターレッドのフィギュアに添えられたメモを開くと。
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