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    iduha_dkz

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    iduha_dkz

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    自主練後の綾と柰津緒の部屋での会話。
    綾ができすぎる故にへこんでも上を目指すU12メンバーは綾のトラウマを癒してくれるのではと期待してます。

    たとえその本気が傷をつけるとしても「ねぇ、柰津緒。もし、さ……今日柰津緒のとこに飛んでたフライ、あれがファールじゃなくて、柰津緒がエラーしてたら、どう思った……」
    自主練が終わり夕食の前に一度部屋に戻ったタイミングで、綾瀬川から非常に答えにくい質問が飛んできて、柰津緒は考え込むことになった。
    先ほど瀬田が言っていた「エラーなかっただけマシ」という言葉が、柰津緒の頭の中を駆け巡る。もし、ノーノーを崩すエラーを自分の手で起こしていたらなんて、想像するだけでも恐ろしかった。
    「……土下座する、かも」
    点が取れなくて勝ちを逃すどころか、エラーで投手の名誉を崩すなど、たとえ投手がそこまで気にしていなくても、自分自身の気が済まないと柰津緒は思う。
    「土下座……」
    「……足りない?」
    「ううん、そうじゃなくて……」
    綾瀬川が言葉に迷いながら一度大きく息を吸う。
    「エラーで落ち込んで、それで……野球、嫌いになったりは、しない?」
    「それはない、と思う。どれだけ酷いエラーでも、野球は嫌いにならないよ。……自分のことは、イヤになるかもしれないけど」
    「自分がイヤ?」
    「……綾瀬川が頑張ってるのに自分はエラーでその頑張り潰すの、申し訳ないよ……。もっとうまくならなきゃって思う」
    「そっか……だから桃吾……」
    「桃吾? どうかした?」
    「ううん、なんでもない。ありがと、柰津緒」
    それだけ言うと、綾瀬川は部屋に用がなくなったように先に外へ出ていってしまう。
    それ以上踏み込めなかった柰津緒だが、戻ってくるまでも自分の練習に集中していたため、自主練中の綾瀬川がたまに桃吾をじっと見ていたことはまったく気づいていなかった。
    けれども、今部屋を出ていく際の綾瀬川の顔がどこかほっとしていたことには流石に気がつく。
    酷く恐ろしい仮定の問いだったが、それに答えて綾瀬川に少し何か返せたのならよかったと、そんな風に思いながら柰津緒も部屋を出て、夕食に向かうため綾瀬川を追いかけはじめた。
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    iduha_dkz

    DONE綾と桃吾の高校での卒業式の話です。
    前半は1年時、後半は3年時。
    3年一緒に過ごすうちに色々理解して仲良くなり情も湧いたけど、それでも桃吾の一番は円なので綾の一番にはなれないことを最後に突きつける、一番のために他の大事なもの切る痛みを伴う別れが100通り見たくて書きました。
    最後の日を迎えて卒業式で久しぶりに会った二つ上の先輩は、綾瀬川と桃吾が二人で花束を持ってきたのを見て、はじめは落第点しか取れていなかった学生が百点満点を取った時の教師のような顔で微笑んだ。
    「二人一緒に来るとは思ってなかった」
    「元主将を心配させるなって、二年の先輩たちが二人で行けゆうてくれはったんです」
    「桃吾、それ言っちゃったら不安にさせるやつじゃない?」
    「大丈夫だよ綾瀬川。雛がどうしても俺に渡したかったって言えない照れ隠しなのはわかってるから」
    「主将ぉ!」
    「あ、ならよかったです」
    抗議の声を出した桃吾を綾瀬川はまったく気遣わず「ほら渡すんでしょ」と花束を差し出すように促す。長持ちすることを考慮してドライフラワーで作られた花束を二人から受け取り、鮮やかな花束に一度視線を落とした後、彼は自分より身長の高い後輩二人を見上げた。
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    iduha_dkz

    MOURNING話が進んで解釈変わる度に書き直される円桃。
    枚方シニア戦が終わったら完成します。たぶん。

    5/13追記
    13話で解釈が変わったので、この流れのままで書き換えるのはここで終了です
    今後はこちらで→https://poipiku.com/7684227/8748586.html
    枚方シニア戦の夜の円桃構えたところでピタリと静止し、そこに吸い込まれるかのように、豪速球が投げ込まれる。ミットにボールが納まる音だけが繰り返されて、U12と枚方ベアーズの試合は終了した。
    格上相手を当然のことのように抑えたエースピッチャーに対し、ある人は球威の凄さに圧倒され、ある人は球種の豊富さに目を奪われ、またある人はそのコントロールの正確さに魅了されていた。
    とにかく鮮烈だったのだ。綾瀬川次郎という才能は。
    だから、綾瀬川の活躍の裏で当然のことのように行われていた異常なことに気づいたのは一握りのよく見ていた人だけで、円が気づいたのも桃吾と常日頃から組んでいて、彼のことをよく知っていたからだ。
    枚方ベアーズ戦の桃吾のリードは、これまで円に対して行われたものより、ずっと厳しい要求がなされていた。ストライクギリギリの下半分に集められる投球は、打者にも打ちづらいが投手にだって投げにくい厳しいリードだ。
    1982