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    iduha_dkz

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    POIPOI 45

    iduha_dkz

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    https://poipiku.com/7684227/8580741.html と同軸の告白させてもらえなかった中学時代のお話
    お互い好きだけど、少しすれ違ってます。

    10話更新直前にこれ考えてたので大変なことになりました助けてください。

    #円桃

    中学時代の円桃練習が終わった後一緒に帰ろうというところで、桃吾に寄りたいところがあると伝えられた。言われた場所はそこで告白すると別れないと最近噂になっている場所で、それを円に伝える桃吾は見るからにそわそわワクワクしていた。

    どうやら最近どこかで円の気持ちが桃吾にバレたらしいと、円はすぐに気がついた。
    桃吾が円のことを好きなのは円本人にはとても分かりやすく、だから円は気づかれないように気をつけていたのだ。

    片思いだと思っているうちは何も行動しなくとも、両想いだとはっきりしたら自分からさっさと行動に移す。雛桃吾はそういう存在だ。

    移動中の桃吾は、すごく落ち着きがないのにキラキラきらめいて見えて、円の心を落ち着かせなくさせる。付き合いはじめたら、きっと楽しいだろう。それはとても魅力的な未来で、けれど円は自分の気持ちを桃吾に隠すのを決めた時に、綾瀬川に勝つまでは付き合わないと決めていた。

    桃吾が好きになった円は、綾瀬川に会う前の円で今の円ではない。今円に桃吾の気持ちが向いているのは、同一人物だからというだけだ。
    綾瀬川に出会ってから、桃吾はよく円に「円がいっちゃんええピッチャーや」と言うようになった。それを言っている時の桃吾の気持ちは、正確なところはわからない。けれど、それを言う時の桃吾の表情は、円を褒めているのにまったく楽しくなさそうで、円はわかってしまったのだ。

    桃吾は円が綾瀬川に勝って、それで元の円に戻るのを望んでいると。

    桃吾本人にはきっと自覚はない。けれど、現状で付き合いはじめて桃吾に何か違うと思われるのも、付き合っていてもどこかで綾瀬川のことを考えて桃吾を見ない瞬間が生まれるのも、今すぐ付き合いはじめたら起こりうることだ。

    公園につくまでの間に、円は告白する気まんまんでいる桃吾にどう納得してもらうか考えていく。幸い緊張している桃吾は口数がいつもよりずっと少なくて、じっくり考える時間をたっぷりとれた。



    「桃吾、小学生ん時と今、わしとやる野球どっちが楽しい?」

    夕焼けの中、大事なことを切り出すタイミングをはかっていた桃吾に、円が急に質問をしてきた。急に聞かれた何を知りたいのかわからない、でもとても真剣な顔をした円の問いに、桃吾は不思議に思いながらも思っていることをそのまま伝える。

    「急になんやねん。円とやる野球は、いつでも楽しいわ」

    円にはこの返事が予想外だったようで、少し目が見開かれた。この質問への桃吾の答えはこれしかないと、本来円がわからないわけはない。何か判断するのに必要な要素が欠けていること、円がいつになく緊張していること、それらがわかったので桃吾は自分の言いたいことを一度引っ込めて、円の言葉を待つ。

    「わしの言い方が悪いの~」

    円はそう言って考え込み始めた。どう桃吾に伝えるべきか、珍しくだいぶ言葉に悩んでいるらしい。
    桃吾は夕日が沈んでいく中、急かすことはせず円を待つ。二人を真っ赤に染め上げる光の中、円はそっと口を開いた。

    「桃吾、綾瀬川と会う前と後、わしと野球やる時何を考えとる? 答えんくてええけど、それで今と昔どっちが楽しかったか考えてみてくれんか?」

    ここで綾瀬川の名前が出たことが、まず桃吾には不満だった。
    円だってすごいピッチャーなのに、自分の強みなんて価値がないとばかりに綾瀬川みたいになりたいと言って、綾瀬川のことばかり追いかけている。今の円は、みんなで野球をしているはずなのに、桃吾には時々ひとりぼっちに見えていた。
    それになにより、好きな野球をしているはずなのに円は苦しそうで。

    そのことを考えざるを得ない今の野球は、確かに昔の綾瀬川がいなかった時よりも楽しくないと言えるだろう。

    伝えたかったことに桃吾が気づいたと見抜いたのか、円は改めて口を開く。そして、この話を持ち出した意図をはっきりと言った。

    「じゃから、今はまだあかん。いっちゃん楽しい状態に、今はなられへん」

    それを言われた桃吾は嬉しさと悲しさがごちゃ混ぜになって思わず円の手をとろうとした。円が桃吾のことを大変大切にしていて、だからこそ今ここで告白しようとしていた桃吾の行動を止めたい、というのはなんとなくわかったのだ。

    雑念が混ざりそうな状況ではなく、二人だけできちんと向き合えるようになってから付き合いたい。円のその気持ちは嬉しくて、だがそんなもの関係なく恋人という立場になりたいとも桃吾は思う。

    でも。

    「大丈夫になったら、その時はわしから言うけ。待っとってくれんか」

    円がこう言ってくれるなら、待ってみようと桃吾は思うのだ。円の手をとろうとのばした手をおろして、桃吾は力の籠った目で円を見る。

    「待つ。あと、オレはこの約束、絶対忘れへん……」

    今日手に入ると思って楽しみにしていたものがすり抜けてしまって、円への返事は震えていた。
    着いたときは夕焼けだった空は日が沈み、周りが暗くなっている。街に灯りは灯っていたが、今の二人には小さくて頼りない光だった。
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    iduha_dkz

    DONE綾と桃吾の高校での卒業式の話です。
    前半は1年時、後半は3年時。
    3年一緒に過ごすうちに色々理解して仲良くなり情も湧いたけど、それでも桃吾の一番は円なので綾の一番にはなれないことを最後に突きつける、一番のために他の大事なもの切る痛みを伴う別れが100通り見たくて書きました。
    最後の日を迎えて卒業式で久しぶりに会った二つ上の先輩は、綾瀬川と桃吾が二人で花束を持ってきたのを見て、はじめは落第点しか取れていなかった学生が百点満点を取った時の教師のような顔で微笑んだ。
    「二人一緒に来るとは思ってなかった」
    「元主将を心配させるなって、二年の先輩たちが二人で行けゆうてくれはったんです」
    「桃吾、それ言っちゃったら不安にさせるやつじゃない?」
    「大丈夫だよ綾瀬川。雛がどうしても俺に渡したかったって言えない照れ隠しなのはわかってるから」
    「主将ぉ!」
    「あ、ならよかったです」
    抗議の声を出した桃吾を綾瀬川はまったく気遣わず「ほら渡すんでしょ」と花束を差し出すように促す。長持ちすることを考慮してドライフラワーで作られた花束を二人から受け取り、鮮やかな花束に一度視線を落とした後、彼は自分より身長の高い後輩二人を見上げた。
    6957

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    iduha_dkz

    MOURNING話が進んで解釈変わる度に書き直される円桃。
    枚方シニア戦が終わったら完成します。たぶん。

    5/13追記
    13話で解釈が変わったので、この流れのままで書き換えるのはここで終了です
    今後はこちらで→https://poipiku.com/7684227/8748586.html
    枚方シニア戦の夜の円桃構えたところでピタリと静止し、そこに吸い込まれるかのように、豪速球が投げ込まれる。ミットにボールが納まる音だけが繰り返されて、U12と枚方ベアーズの試合は終了した。
    格上相手を当然のことのように抑えたエースピッチャーに対し、ある人は球威の凄さに圧倒され、ある人は球種の豊富さに目を奪われ、またある人はそのコントロールの正確さに魅了されていた。
    とにかく鮮烈だったのだ。綾瀬川次郎という才能は。
    だから、綾瀬川の活躍の裏で当然のことのように行われていた異常なことに気づいたのは一握りのよく見ていた人だけで、円が気づいたのも桃吾と常日頃から組んでいて、彼のことをよく知っていたからだ。
    枚方ベアーズ戦の桃吾のリードは、これまで円に対して行われたものより、ずっと厳しい要求がなされていた。ストライクギリギリの下半分に集められる投球は、打者にも打ちづらいが投手にだって投げにくい厳しいリードだ。
    1982