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    iduha_dkz

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    iduha_dkz

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    41話の「キャッチャーあんま関係ない」発言で書きたくなった大人たちの会話
    21話での腐れ縁バッテリーの本音をそのまま出すか隠してるかの違いについて何か形にしておきたかったので
    21話の日の夜、酒飲みながらこんなこと話していたかもなぁという話です

    正反対バッテリー「矛盾してません、それ?」
    試合振り返りミーティングで綾瀬川が語った、急にクイックを投げた理由を聞いた関根が、最初に発した言葉は端的な指摘だった。
    「試合本番でいきなり投げても雛なら捕れると思ったから投げたのに、練習で雛が捕れない可能性考えて投げなかったなんて、どっちか嘘ついてますよ」
    会話が続く中では気づけない矛盾も、後から立ち止まって考え直すとしっかり見えることはままある。関根の指摘はもっともで、だがそれが矛盾ではない可能性も一応残されていた。
    「おい、試合中にこれだけ捕れるなら投げても大丈夫だと思った可能性もあるだろ」
    それを真木が指摘したが、関根はそれには納得できないようだった。
    「たしかに否定はできませんけど、でも我々に言えない理由をごまかすためにもっともらしいこと言っただけなんじゃないですか」
    「嘘が混ざっているなら、ブルペンで投げなかった理由の方だろうね。少し言い淀んでいたから」
    「あー、それは何か隠してそうですね」
    並木が話していた時の綾瀬川の様子を語ったことで、関根の見解は綾瀬川が誤魔化したというものに固まる。
    「練習で試して使えないとなるより本番でいきなり投げて自分の責任にする方がいいというのも、綾瀬川の本音ではあるだろう。ただ、ブルペンで投げなかった理由はそれとは別にあるんだろうね」
    真木もまたその時の綾瀬川が言葉につまっていた様子を思い出して、隠し事はあるのかもしれないと思うようになった。並木の言うように理由自体は本音で嘘はついていなくても、なにかしら別の、もっと根本的な理由を隠していた可能性は否定できない。そしてなにより、捕れると思っているのに捕れなかった時を考えて練習で投げないというのは、やはり矛盾しているのだ。背番号を変えて欲しいと頼んだ理由を語らなかったように、なにかしら語りたくない理由が綾瀬川にあって練習でやらなかったという可能性は十分にある。
    「どんな理由なんでしょうね。代表に選ばれながら自分の実力を隠すって」
    普通は活躍し結果を出すために、また勝利に少しでも近づくために、代表に選ばれたら持てる実力を隠すことはしない。故障を避けるためにセーブしたいなどの事情は各々にあるが、故障やフォーム崩れを避けるために代表では隠しておくという理由は、試合でいきなり投げて存在を明らかにした以上否定される。
    「普通のピッチャーとは違う領域で野球してるからね……。綾瀬川が話した以外の理由があることはわかっても、それは我々の想像の範囲外かもしれない。綾瀬川から話してくれないと、本当のところはわからないだろうね……」
    並木のその言葉を最後に、しばらく三人の間には沈黙が訪れた。明らかに飛び抜けた実力を持つが、本音がいまいち掴みにくい上に自分から全てを話してはくれない。そんなエースでこれからの大会を戦っていくことの、例年とは異なる難しさをあらためて感じたのだ。
    「しかし綾瀬川と比べて雛の飾らなさといったら。本当に言ったんですか? 球審がベアーズの人だから、完全試合されるの避けるために故意に誤審したと思いますって」
    少し重くなった空気を入れ替えるように、関根が口を開く。
    「だいたいそんなことを言ってたな」
    「いやー、すごいなー。大人からどう思われるかとかまったく考えてない。内心どう思ってても、審判も人だから見間違えたとか誤魔化せばいいのにやらないんですねー」
    この年代にしては素直すぎる。それに驚きを示す関根に対して、真木は真木で別の驚いたことを口に出した。
    「俺は『球だけ捕ります』って言ってた雛が綾瀬川庇ったことに驚いてるよ」
    ストライクゾーンを通ったという事実は、誰に促されたわけでもなく雛が自発的に言い出している。問われたわけでもないのに、だ。期待しないと言った相手なのにミスしていない事実を伝えようとするとは、真木が病院で話した時には到底そんなことが起こるなど思ってもみなかった。
    「それだけ、綾瀬川が言った『桃吾なら捕れると思ったから』という言葉が、雛には重かったんだろう」
    並木の分析はおそらく正しい。少なくとも、雛にとっては大きな意味を持つ言葉だったというのはあっているだろうと真木は思う。
    「ただ、庇うにしたって審判が間違えたとかでいいのに、贔屓って考えてしまったりそれを主張するのはよくないですね。損得勘定とか考えてなくて顔にも出る分、指導もしやすいですけど」
    「そうだね、花房みたいに隠していたら、今日指摘できなかっただろうね。雛がわかりやすくてよかった」
    望んだ結果にならないのは周りの環境が悪いからと原因を押しつけ続けたら、自分の研鑽に繋がらない。まったく飾らなかったからこそ与えられたその指摘が、いずれ根付いて考え方を改めるきっかけになればと並木は思う。
    「色々わからないし話してくれない綾瀬川とは、ほんと正反対ですね」
    関根の言葉で目下の課題となっている、この正反対の二人が正バッテリーという事実が、三人の認識に再び浮上する。再び沈黙が落ちた後、今度は並木が口を開いた。
    「まぁ、雛は思ってたより落ち着いてたし、雛以外綾瀬川の球捕れないわけだし、二人がうまくやっていけるように見守ろう」
    このチームにおける圧倒的なエースは綾瀬川で、それほもう誰にも異存がないはずだ。唯一組める捕手が正反対であっても、その二人で組んで戦うタイミングが少ないわけがない。
    綾瀬川もこのチームで何を軽んじたらいけないかはもう学んでいる。後はあの正反対の二人次第だ。
    とはいえ、チームの監督として、二人を見守り変化があるなら話を聞くことはできる。今後も引き続きバッテリーミーティングは厚くやっていくと、並木は真木と関根に語ったのだった。
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    iduha_dkz

    DONE綾と桃吾の高校での卒業式の話です。
    前半は1年時、後半は3年時。
    3年一緒に過ごすうちに色々理解して仲良くなり情も湧いたけど、それでも桃吾の一番は円なので綾の一番にはなれないことを最後に突きつける、一番のために他の大事なもの切る痛みを伴う別れが100通り見たくて書きました。
    最後の日を迎えて卒業式で久しぶりに会った二つ上の先輩は、綾瀬川と桃吾が二人で花束を持ってきたのを見て、はじめは落第点しか取れていなかった学生が百点満点を取った時の教師のような顔で微笑んだ。
    「二人一緒に来るとは思ってなかった」
    「元主将を心配させるなって、二年の先輩たちが二人で行けゆうてくれはったんです」
    「桃吾、それ言っちゃったら不安にさせるやつじゃない?」
    「大丈夫だよ綾瀬川。雛がどうしても俺に渡したかったって言えない照れ隠しなのはわかってるから」
    「主将ぉ!」
    「あ、ならよかったです」
    抗議の声を出した桃吾を綾瀬川はまったく気遣わず「ほら渡すんでしょ」と花束を差し出すように促す。長持ちすることを考慮してドライフラワーで作られた花束を二人から受け取り、鮮やかな花束に一度視線を落とした後、彼は自分より身長の高い後輩二人を見上げた。
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    iduha_dkz

    MAIKINGぜんぜんまったく書いてる途中だけれどもこの会話出すなら今じゃない?となったのでワンシーンだけ抜き出したもの
    大学から一緒の学校になった花瀬花の、4年クリスマスの日に瀬田ちゃんが花房に告白してOKもらえたその少し後のワンシーンです

    こちらのその後的なものになります
    https://poipiku.com/7684227/9696680.html
    「花房さ、オレのせいでカノジョと別れたって前言ってたじゃん。確か一年のバレンタインデー前」
    「……よく覚えてるね」
    「その後からオレに付き合っちゃわないって言うようになったら、そら覚えてるだろ」
    「そっか」
    「やっぱオレのこと好きになったからってのが、カノジョと別れた理由なん?」
    「……そう。カノジョより瀬田ちゃんと一緒にいたいって思っちゃったのに、隠して付き合えるわけないじゃん。俺から別れ切り出した」
    「え、態度に出て振られたとかじゃなく?」
    「別の人の方が大事になっときながら、振られるくらい態度に出すなんてサイアクじゃん」
    「あーまぁ、確かに?」
    「ほんとにいい子だったんだよ……俺が野球最優先でもそれが晴くんだからって受け入れてくれててさ……でもだから、カノジョより優先したい人ができたのに、前と変わらずバレンタインのチョコもらうなんてできないじゃん」
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    iduha_dkz

    MOURNING話が進んで解釈変わる度に書き直される円桃。
    枚方シニア戦が終わったら完成します。たぶん。

    5/13追記
    13話で解釈が変わったので、この流れのままで書き換えるのはここで終了です
    今後はこちらで→https://poipiku.com/7684227/8748586.html
    枚方シニア戦の夜の円桃構えたところでピタリと静止し、そこに吸い込まれるかのように、豪速球が投げ込まれる。ミットにボールが納まる音だけが繰り返されて、U12と枚方ベアーズの試合は終了した。
    格上相手を当然のことのように抑えたエースピッチャーに対し、ある人は球威の凄さに圧倒され、ある人は球種の豊富さに目を奪われ、またある人はそのコントロールの正確さに魅了されていた。
    とにかく鮮烈だったのだ。綾瀬川次郎という才能は。
    だから、綾瀬川の活躍の裏で当然のことのように行われていた異常なことに気づいたのは一握りのよく見ていた人だけで、円が気づいたのも桃吾と常日頃から組んでいて、彼のことをよく知っていたからだ。
    枚方ベアーズ戦の桃吾のリードは、これまで円に対して行われたものより、ずっと厳しい要求がなされていた。ストライクギリギリの下半分に集められる投球は、打者にも打ちづらいが投手にだって投げにくい厳しいリードだ。
    1982