幸福な王子 ある貧しい国の片隅に先代の先代のもっと昔の、最も幸福だった時代の最も幸福な王子の像がありました。ある日、傾いた国を任された王子の国広がそこに訪れて「幸福な王子さま助けてください。国積で財政破綻しそうです」とお願いすると、幸福な王子は「これで借金を返してこい」とブルーサファイアの瞳を国広に与えました。幸福な王子のブルーサファイアのおかげで何とか国は財政破綻を免れました。
それからまたある時、幸福な王子の元に国広が訪れて「幸福な王子さま助けてください。貧しい国民に城を燃やされそうです」と願うと、幸福な王子は「仕方ないな偽物くんは。これで貧しい国民に炊き出しでもしろ」と言って銀の髪を与えました。国広はそれを国一番の機織り師に渡すと、美しい銀の髪は世にも珍しい銀色にかがやくきらびやかな織物になり、そのおかげでたくさんの金貨を得ることができました。国広は国民に豚汁を振る舞い、病気の者には薬を与え、何とか国民たちの暴動を抑えました。
それからしばらくしたある雪の日、ぼろぼろになった国広が幸福な王子の元を訪れました。「もう何も持っていないぞ。この布しか持ってない」幸福な王子がそう言うと、国広は「それで十分だ」と言って布に包まり、幸福な王子の像の足元に座りました。「最期にあんたの側にいられて、俺は幸せだった…」国広はそう言って、目を閉じました。幸福な王子はそれを見て、涙をひと粒零すと、それからはもう一言も言葉を話すことはありませんでした。
人々に忘れられた幸福な王子の像と、かつて貧しい国を建て直そうとした最後の王子は、滅びゆく王国の片隅で静かに長い眠りにつきました。いまではその場所は、春になると、美しい白い花に寄り添うように小さな可愛らしい黄色の花が咲き、子どもたちの笑い声がたえないといいます。