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    @morimeme_

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    風ピとの追いかけっ子の最中、流浪の逃亡に協力する謎のグランツ族現る————!?☆

    流浪者✕風格のピンク(探配) https://privatter.net/category/22116

    ##探配

     ノートンは追われていた。例の新入りのポストマン、もとい風格のピンクと呼ばれている手袋をしたポストマンに……いや正確には、その彼の配達犬に、いままさに追いかけられている真っ最中である。配達犬が〝飛びかかる〟のは、ゲームでの、ハンターを相手にした時ではなかったか。勿論いまはゲームの時間ではないし、ここは実験場ゲームマップではなく居館の廊下だし、ノートンはハンターではない……そんなことは言うまでもないのだが、何にせよ、ノートンはいま風格のピンクの配達犬に牙を剥いて飛びかからんとする勢いで、追いかけられていた。
     ノートンは犬が苦手だ。とりわけ人間に飼われている犬というやつは、どいつもこいつも自分を見るなり警戒心を顕に吠え立ててきた。だからむしろ、ノートンのほうより先に犬のほうがノートンを嫌っているのである、自分に敵意を向ける存在を好ましく思えというのも無理な話だ。そも、動物に好かれるたちでないのは、ノートン・キャンベル——この荘園における〝探鉱者〟の面々におおよそ共通した性質ではあるのだが、このノートンに至っては、それだけが理由ではないかもしれない。

     ノートンは《流浪者》である。はるか昔、まだ魔の世と人の世との境界があいまいだった頃より在った、闇に住まう高潔な血族の一人である。であるので、人間に従属し、特にその優れた嗅覚で主を警護する犬という生き物とは、いかんせん折り合いが悪い。流浪は大昔、ある血族が相棒として連れていた地獄の番犬のような犬に手を噛まれてすっごく痛かった、という個人的な事情もあり殊更犬が苦手である。……とは言え、血族である流浪は普通の人間よりも身体能力はいくらか高い。普段なら仔犬の一匹なんぞ簡単に撒いてやれるのだ……が、今日ばかりはちょっと、あまり、調子がよくないらしい。先日の風格のピンクとの一件以来、流浪の荘園生活は平静を乱されつつある。身体能力に引き換え胆力のほうは芳しくない流浪には、精神の摩耗が死活問題であった。

     闇雲に居館を駆けずり回り、気が付けば流浪は行き止まりの廊下に差し掛かってしまっていた。このまま進めば先は壁……後ろには風ピの配達犬が、最早、十数メートルの距離にまで迫っている。あわやここまでか、と嘆息しかけた流浪の耳に、天の救いか悪魔の誘いか、呼びかける者の声が届いた。
    「……ノートンさん、……ノートン! こっち……」
     そちらを見やれば、何もない壁に浮かび上がる見覚えのある円形の印……あれは確か〝祭司〟の、扉の鍵。それが今まさに開通しようとしていた。助かった! ノートンは脇目も振らず、すぃっと印に飛び込んだ。瞬間、背後で「ウー!」と悔しげな配達犬のうなり声と、「ごめんね、ウィック」と囁くような静かな声が、微かに聞こえた。…………
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    MOURNING風ピとの追いかけっ子の最中、流浪の逃亡に協力する謎のグランツ族現る————!?☆

    流浪者✕風格のピンク(探配) https://privatter.net/category/22116
     ノートンは追われていた。例の新入りのポストマン、もとい風格のピンクと呼ばれている手袋をしたポストマンに……いや正確には、その彼の配達犬に、いままさに追いかけられている真っ最中である。配達犬が〝飛びかかる〟のは、ゲームでの、ハンターを相手にした時ではなかったか。勿論いまはゲームの時間ではないし、ここは実験場ゲームマップではなく居館の廊下だし、ノートンはハンターではない……そんなことは言うまでもないのだが、何にせよ、ノートンはいま風格のピンクの配達犬に牙を剥いて飛びかからんとする勢いで、追いかけられていた。
     ノートンは犬が苦手だ。とりわけ人間に飼われている犬というやつは、どいつもこいつも自分を見るなり警戒心を顕に吠え立ててきた。だからむしろ、ノートンのほうより先に犬のほうがノートンを嫌っているのである、自分に敵意を向ける存在を好ましく思えというのも無理な話だ。そも、動物に好かれるたちでないのは、ノートン・キャンベル——この荘園における〝探鉱者〟の面々におおよそ共通した性質ではあるのだが、このノートンに至っては、それだけが理由ではないかもしれない。
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