同級生(クラスメイト)曰く同じクラスの田中は風変わりな男だ。
浮世離れ、という言葉を体現した妖しい風情の男である。
重心をちょっと傾けて、肩から先に突き出るようにゆらぁりと歩く姿なんて特に。不健康な猫背で、通りすがりに不協和音の鼻歌が微かに聴こえる。そんな男。
田中の襟のよれたシャツからはいつも、薄ら紫煙の香りがしていた。だが、煙草というよりも線香の煙のような、掴みどころのない男だった。
欠席がちで、出席日数ギリギリのラインをいつも何とか埋め合わせている。一体なぜそうも学校に来られぬのか不思議に思っていたが、最近になってそのワケが解明されつつある。
数ヶ月前に転校してきた、水木という男子がいる。
凛々しい眉、涼しげな目元に甘い涙袋、通った鼻梁、勝気な唇と絵に描いたような男前。そのうえ成績優秀、柔道黒帯、寛仁大度ときては、遍く人類にモテそうで、俺は奥歯をギリギリ噛み締めたものである。
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