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    Layla_utsusemi

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    一次創作【空蝉日記】のショートストーリー。篠見山 心咲さんの実家は、若干男子厨房に入らず的な考えの傾向があります。

    【空蝉日記 短編】アクセプ・タンスやっほー!うちは「篠見山 心咲」!

    普段は『Usher of Trip』って音楽バンドでドラムをやってるねんけど、今日はちょっと気持ちがブルーでな……。

    なぜかというと、来月、実家に帰省する予定があるから。うち、あそこあまり得意やないんよ。

    うちの実家は、大阪の方にある中華料理店。ああ、味は微妙やで。東京に居る娘を心配しての親心なのか、それとも兄弟の中で唯一未婚のうちを急かしたくてたまらないのか……。

    実家の方で工面出来ない最低限の荷物だけを詰めたスーツケースは、見た目によらず存外軽い。だがそれに反比例して、気持ちの方は重くなるばかり。
    向こうに帰っても店を手伝わされるか、色々世間話に付き合わされるだけやのに。


    「──ただいま〜。」

    「あぁ、心咲おかえり。早速でごめんなんやけど、追加の注文手伝ってくれへん〜?」

    「えぇ……今から荷物置きに行くから、ちょっと待っててな。」


    ──こうして私の里帰りは、初日から慌ただしい始まりを迎えた。

    最初の数日は店の手伝いをしたり、バンドメンバー達からの業務連絡を確認したりしてたんやけど、その途中で少し……いや、かなり嬉しい出来事があってな!パシリの疲れなんて吹き飛んだわ。


    「うわァッ!?」

    ──思わずスマホ片手に跳ね上がり、素っ頓狂な声を上げた。

    なぜなら……推しの新規イラスト!そして新作のスピンオフ情報が公開されたから!

    「びっ、くりした……どうしたん?」

    「あぁいや、別に……。」

    画面に移された愛しのキャラクターの顔の良さに感動で歪んだ自らの口元を手で覆って隠した。この余韻は、後ほど部屋に戻ってから一人でじっくり堪能するとしよう。


    「そういえばお隣の吉岡さん、最近お孫さんが出来たんやって。あそこの娘さんってあんたと同い年やったやろ?ようやくやねぇ。」


    ──あぁ来た、この手の話題。歓喜と興奮で膨らんでいた胸が、一気に萎んでいった。

    「別にそんなの、人によるやろ。今どき子供以前に結婚しない人も多いんちゃう?」

    「でも兄弟ん中であんただけ未婚とか、ちょっと……ねぇ?恥ずかしいやろ?」

    まるで誘導尋問のような訊き方。うちはそもそも、学生の頃から先程のように趣味に時間を費やしてきたから、恋愛という恋愛経験が無い。

    なんだかうちの目には、画面の向こうの輝く存在を見すぎて、周りの男達がくすんで見える。

    「ん〜、今は好きなことに時間使いたいかな。」

    「人生、いつまでも好きなことだけでやっていけへんよ。妥協や諦めも必要なんよ。」


    ──それは、オカンの経験談やろ?今してるのはうちの話やん。
    それに、人生は好きなことを妥協するものって……好きなことを突き詰めた結果、大きな会場を使わせてもらってライブ出来てるうちらは何になるんよ。


    「……オカン。うちのバンドに、昔いじめを受けてたんやけど、大好きなアニメに影響されてギターを始めたって奴が居るんよ。そいつが、うちのギタリスト。」

    柊 陽太。陰キャやけど、心の奥に熱いものを秘めた、捻くれたようで真っ直ぐな男。


    「あと、ずっと不登校やったんやけど、ピアノを始めたお陰でうちらと出会えたって子も居るんよ。その子がうちのキーボード。」

    鈴晴 澪。人見知りなのにいつも一生懸命で、意外とノリも良いうちの可愛い妹分。


    「明るく見えるけど実は淡白で、何にも熱中出来ない人生が退屈だったって奴がさ、音楽やってる時だけは違う自分を感じられるらしくて……それがうちのリーダーな。」

    雨音 冬斗。なんやかんや頼りになるボーカルで、うちらのこともよう見とる奴。


    「好きなものに費やす人生を、否定せんといて。それがうちのバンドの全てなんよ。」

    「あっ…………ごめんなさい。そう、やね……確かに、あんたは結婚せんでももう十分人生楽しそうやもんな。」

    「分かればええねん!」

    重い空気を吹き飛ばしたくてわざと大きな声で返すと、気分を晴らすため再び推しの画像を開いた。

    うちらはうちらのやり方で幸せになっとるし、それにうちのことこれ以上幸せに出来る奴なんか、推しとメンバー以外に誰も居らへんよ!

    あ〜なんか久々にこんな気持ちになったなぁ。今ならバラード系の歌詞書けそうかも。せや、次の新曲の作詞、うちがやってみたいって冬斗に言ったろ!


    ───自分自身がやりたいことだけに真っ直ぐに。それがうちのポリシーやからさ!

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