アンジャッシュ! 卜部兄弟「……って感じでさ、銭湯で会ったときに名乗るの忘れたから後で卜部さんに挨拶にいったんだよな」
眉をハの字にして笑ういさなの失敗談に姉が軽やかにほほ笑む。自分よりよほどしっかりしてるのにたまに抜けているところのある弟。本人はそれを恥じているようだが、姉であるいおりからすればそんなものは「可愛げ」だ。
(可愛げだけなら問題だけど、そういうわけでもないしね)
軽く肩をすくめて姉は「それにしても」と話題を転がす。
「卜部さんが番頭さんなんて初めて知ったわ。前に少し話す機会があったんだけどその時は本業のことは話さなかったから。そうそう、あの人スーツがオシャレなの。千鳥格子で」
「そうなのか? へぇ……」
感心したようにいさなが軽く目を見張る。
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