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──あー、またこっちの姿か……。

　ベルベットルームに入った途端目に入った姿に心の中で呟いた。
　俺の旅路の手助けをするだとか、俺の心と不可分だとか何だとか言う場所で、ペルソナの合体とかで大変お世話になっている場所ではあるのだけども。
　そこの住人であり俺の案内人(？)であるらしい「ファフニール」と名乗った男は、まあそもそもこんな摩訶不思議空間の住人である時点で人間じゃないのは分かってはいたが、時々人間の姿ではなくなるのだ。
　普段は作り物めいてる位に整った顔立ちにビシッと決まってる蒼い服の男の姿をしているが、何の条件が重なったらそうなるのかは俺には分からないが、時々ではあるがモフモフとした柔らかな獣毛に覆われた竜……？みたいな姿になる。何つーのか、モンハンに居そうな感じ。
　その姿になるとただでさえ大きめの体格だったそれが更にデカくなって、別に狭い訳じゃないだろうベルベットルームをかなり手狭に感じてしまう程である。
　完全に理性が飛ぶとかじゃないらしいがこの状態のファフニールは普段よりも獣っぽいし、こっちの言葉は聞こえてるみたいだが俺にはファフニールが何を言ってるのかはさっぱりだ。

「ギィウギャウグルルルゥギャギャルルル」

　腹這いになって腕の毛ずくろいをしていたファフニールは、俺の来訪に気付いてその視線を俺に向けながら何事かを伝える様に鳴く。
　マジで何言ってるのか分かんねーけど、状況的には「ようこそ」とかって言ってんだろ、多分。

「あー、ペルソナの合体を頼みたいんだけど」

「ギャルルルギィウウギャウウ」

　何言ってんのかは分からんけど、まあ頷いてるから「大丈夫」って事なんだろう。
　何時もは綺麗な所作でカードの様になったペルソナを合体させていくファフニールだが、この状態だとペルソナ合体の方法はかなり豪快だ。
　カード状になってるペルソナたちがキラキラと蒼い光を纏いながら中空に浮かんでいる所を、その翼と一体になった腕で同時に叩き潰す。
　振動がめっちゃヤバイ。ファフニールによって砕かれたペルソナたちはキラキラとした光に変わって互いに混ざり合い新たなペルソナへと生まれ変わった。やってる事の見た目は全然違うのに結果は同じってのは何とも不思議である。
　そして。

「ギュゥゥゥ、グルルル？　ギャウゥ」

　この状態のファフニールは、まるでデカイ犬がじゃれにきているかの様に俺に頭を撫でろとばかりに近寄って来る。
　人間の姿の時は絶対にしないのに、この違いは何なのか。
　まあ別に拒否する理由は無いので、そのモフモフとした手触りのそれをワシャワシャと掻き混ぜる様に撫でる。
　気持ちが良いのか目を細めて喉を鳴らしながら尻尾を緩く振る。
　かなり手触りが良いので、俺としても悪い気はしない。
　まあ、人間の姿の時のファフニールの顔が脳裏をチラつくのはあれだけども……。

「ギャァァウ、グルルル」

　目を細めながら鳴いたファフニールの表情は何処か優しいものだった。




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