猫と転生と、あの幸福なる日々 ある雪の夜、電灯の薄暗がりの下。寒さにふるえ、こちらを見上げる小さな猫がいた。
少し青みがかった灰色の毛並み。丸くて大きな幼い瞳。溶けてべちゃべちゃになった雪の上を、細くたどたどしい足取りで、一生懸命歩いてくる。
猫は傘の下までやってくると、俺の足にすりよった。何が気に入ったのか知らないが、俺にはそれがとても嬉しそうにみえた。
猫がでてきた電灯の裏には、よれよれになった粗末な段ボールが置いてあった。書き置きも何もない。
猫なんて興味をもったことがなかった。けれどその時は、気付いたら体が動いていた。泥だらけでびしょ濡れの小汚ない猫を抱き上げ、腕の中でそっとあやしてみた。
首の裏をちょいちょいと指の先で撫でると、猫は気持ち良さそうに目を細めた。
2933