おせりかと読むかりかおせと読むかはお任せします――おはよう大瀬くん。今日も早起きできたね。素晴らしい!
――私もまた、君に救われているんだよ。
――私は君の頭を撫でるっ!
こんなクソゴミには勿体ないほどのピカピカの賛辞と笑顔を向けられる度に、嬉しく思うと同時に自分なんかが受け取ってもいいのだろうかと不安になる。気にし過ぎと言う方もいるかもしれない。あの方は人類を導くリーダーとなるお人。シェアハウスの他の住人の方のこともよくお褒めになっているから。
不安になったことがないと言えば嘘になる。クソ吉ごときがおこがましいけれど。住人の皆さんも、一癖二癖あることを置いておけば素敵な方々だ。あの賛辞にも笑顔にもふさわしい。
じゃあ、僕は?
たとえ一瞬でも湧いて出てきた疑問に全身の血がさっと冷たくなった。僕なんかが皆さんと張り合おうだなんて。理解さんにもっと見てほしいだなんて。
「最悪だ……」
自室の天井に取り付けたフック。愛用の椅子に上り、片方が輪になった縄を括り付ける。輪の中に頭を入れれば後は椅子を蹴飛ばすだけ。
「ふんっ!」
キャスター付きの椅子は簡単に遥か彼方へ。そして自重で首を――吊れなかった。無様な音とともにクソは床に叩きつけられた。……あ、フック取れたんだ。
「いってー……」
自殺に失敗した上にこんな汚い言葉を使ったと知られたら理解さんに失望される。そうなる前にとナイフを取り出したその時だった。
「大瀬くん! みんなで商店街にお一人様一点限りの日用品を買いに――って! なぜ既にナイフで喉を掻き切ろうとしている!? こら! やめなさい! みんなで買い物に行くよ!!」