父親が岩王帝君なんて聞いてない!「と、父さん! 父さん!」
早朝。手洗い場から廊下を駆け抜け、香ばしい匂いを漂わせるリビングの扉を開く。ダンッと激しい音が鳴った気がするけど、それどころじゃない。
朝食の準備をしていた父が「なに、何々どうしたんだ」と慌ててこちらを見るより先に、俺は叫ぶ。
「変なの生えた! これどうしよう!」
バゴンッ!
叫んだ瞬間、背後に設置されていたキャビネットに今朝生えたての尾?が突撃し、粉砕した。
ウワアッという情けない声をだして、慌てて尻の付け根から生えたそれを抱え込む。ぎりぎり地面につくかどうかという長さのぐねぐねしたそれは自分の意思で動かせそうなのに、勝手に動いて気持ちが悪い。
どうしよう、これは何だ。というか家具壊しちゃった、父さんに叱られる。あの人この家に落書きとかしたらすっごい叱ってくるのに、粉砕って俺どうなっちゃうんだ。
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