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    fuyukichi

    @fuyu_ha361

    腐った絵を描き貯めとく

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    fuyukichi

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    100日後にくっつくいちじろ38日目


    「ただいまー!」

     サッカーのピンチヒッターで出掛けていた二郎が元気よく帰宅した。たったった、といの一番で玄関へ迎えに行ったのは一郎でもましてや三郎でもなく猫のハチ。足元まであるウィンドブレーカーを羽織った二郎は鍵を閉めながら「おー、ハチ公」と嬉しそうに笑う。

    「おう、二郎おかえり」
    「兄貴ただいま、腹減ったー!」
    「試合は?」
    「勝ち!3-1で」
    「すげぇじゃねえか」

     今日は鍋だ。カセットコンロを用意していた三郎が「ウワッ」っと声を上げた。

    「二郎お前、汗と土埃くさい!」
    「え?そうか?」
    「そうだよ、早く風呂入ってこいよ!食欲失せる」
    「へーへー」

     兄貴風呂入ってきていい?とキッチンにいる兄に尋ねると「おう、入ってこい!」とのこと。脱衣所までくっついてくるハチに「お前も風呂入るか?」と尋ねるが逃げられた。



    「じろー、洗濯物ほかにあるか?」

     二郎が風呂に入り五分後、そういえば洗濯機を回したいんだった、と一郎が脱衣所から二郎に問いかける。シャワーの音と一緒に二郎の返事が返ってくる。

    「全部出した!」
    「オッケー」

     洗濯カゴに入っていた服を洗濯機に突っ込む。その中で二郎のジャージのパンツが出てきた。……怪しい。二郎はよくポケットの中のものを出し忘れるのだ。今日はないだろうな、そう思いつつポケットを漁るとビンゴ。レシートと、ポケットティッシュが出てきた。ゴラァ!と叱ろうと思ったがピタリと止まる。レシートと共に出てきたポケットティッシュに目が留まったのだ。透明のビニールの中に何かメモが挟まっている。何だこれ?広告でもなさそうだ。取り出してみて開くとそこには可愛らしい文字で電話番号が書かれていた。ティッシュごと渡されたのだろうか。

    「ニャー」
    「ん?ああ、ハチか」

     一郎に着いてきたらしいハチが、一郎の足に、すりっと身を寄せてきた。

    「二郎の奴、結構モテるんだぜ?」

     ピラピラ、とその紙を揺すってハチに見せる一郎。分かっているのかいないのか、ハチは紙を目で追いかけた。二郎は恐らくこのメモに気付いていないだろう。

    「仕方ねぇな、二郎の奴」

     まったく。簡単に個人情報を人に渡すなっての。危ねぇな。そう言いながら一郎は他の洗濯物を全て洗濯機の中に入れて、洗剤、柔軟剤、匂い消しの漂白剤を入れてスイッチを押した。

    「一兄、火つけますよー」
    「おう、今行くわ」

     スリッパをパタパタ言わせながら、一郎とハチはリビングへ戻った。
     脱衣所のゴミ箱にはレシートとポケットティッシュと、そしてメモが丸めて入っていた。


    2024.11.30

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    osasimibontan

    DONE☆バパロカヴェアルの前日譚的なもの。
    先日頒布した同人誌の前日譚で、時系列でいうと、物語開始の一週間前です。本編を読まれていなくても読めます!!

    常連客の🏛️のことが気になりすぎて、話し掛けたいけど話し掛けれらずに悶々とする、店員🌱の話。
    本当は親書メーカーの画像で投稿するつもりが、長くなり過ぎたのでポイピクにしました。全年齢なので安心してくださいませ!!
    君に届くフローチャートは? 金曜夜、時刻は二十時。
     普段は十八時ごろから客足が増加する、このスターバックスコーヒー。
     しかし華の金曜日である今日、日々勤勉に働く社会人はバーやレストランで羽を伸ばすらしい。そのためか、この曜日だけは毎週二十時以降になると人が混みだす。
     とはいえ、ここの店舗は都心の駅だとしても、末端に配置されている地下鉄の隣にあるため、もはやその地下鉄を利用する者しか立ち寄らない。
     いつも空いていて余裕があり、混雑しても他の店舗に比べれば少し忙しいくらいだ。
     ここで働くには人によっては退屈で、時間の流れが遅く感じるとストレスに思う者も居るとは思う。
     だが、アルハイゼンにとってはこの環境がとても心地よい。
     その結果、三年間無理なくルーティンとして、このアルバイトを生活に組み込むことが出来たのだ。
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