生きているのか死んでいるのか飛沫のかかりそうなほどの水際に、しゃがみこんだ背中を見つけて歩み寄る。覗き込めば、リンクの足元に小ぶりのクラゲが転がっていた。遠慮のない指先でつつかれて、脱力しきったやわらかな傘を遊ばせている。
「もう死んでいますから、やめてあげて」
言うと、透明なジェリー層に触れていたリンクは顔を上げた。どうして、と言いたげな面差しで。
左の頬のなめらかな曲線に影が差込み、目鼻の陰翳を色濃く際立たせている。私の影だ。暗く落ち込んだ頬の中で、二つの目が湖面のように浮かんでいる。
「毒が、あるかもしれませんから」
視線が揺らいで、それから私を捉えた。見上げる目が、西日の眩しさに細められる。
「……これは死んでからも、毒を持つんですか」
潮風が強い。髪の毛も、シャツも、走り去る風に晒されて乱暴にはためいた。なんのために、そう言い漏らす唇が見えた気がする。私はどんな顔をすれば良いのか分からず、
西日が私を黒く塗り潰すようにと願った。
かつての私なら、答えを導くことが出来たのかもしれない。その問いがどれだけ愚かでも、不毛でも。リンクが答えをほしがるなら。
眠りと時間が私を変えた。
リンクは変わらなかった。
痛ましいくらいに透徹な性質を、根源を、それだけを持ち続けたまま生きている。そうして私に問う。何度も、何度も。
だから私は今でもリンクの隣にいる。