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    Mae❍

    @Todorokiosi_

    Twitterに上げれそうにないものやら続くかわからないもの、進捗などを上げます。
    爆轟

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    Mae❍

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    【THE BKTD HOTEL2】のトレジャーハント企画参加作品です。

    焦がれる春にもうすぐ、俺の大好きな人の誕生日を迎える。去年は出会って間もない頃で、そんなに仲が良くなかった。だから今年が初めてだ。けれど、俺が勝己に出来ることなんて、あるのだろうか。

    ◇◇

    庭に咲いている桜を眺めながら、轟は自分の護衛である爆豪勝己について考えていた。現代において護衛が必要とする人物は限られてくる。金持ちか、それとも悪者か。狙われている理由を本人たちも理解しているからこその護衛だ。
    轟と爆豪は、主従という関係ではあるが、組織公認で交際をしている。最初はぎこちない二人だったけれど、一年かけてようやく交際が叶ったのだ。

    「どうしよう…」

    護衛である彼に秘密で買い物、は流石に無理がある。轟は頭を悩ませていた。何を贈れば彼は喜んでくれるだろう。それを考えると、もう辛いものしかでてこない自分の頭が轟は恨めしかった。

    「んー…」

    轟は部屋のベットにボブンと寝転ぶと、自身の腕で顔を覆った。
    ──どうしよう。
    暫くそうしていると、轟の視界の隅に影ができた。その正体は、轟の悩みの原因である、護衛の爆豪であった。

    「…体調でも悪いンか?」
    「ううん…」

    爆豪は顔を覆っている轟の横に腰掛けると、主人の前髪を避けた。

    「寂しんぼ野郎か?」

    爆豪は轟の横に寝転ぶと、彼の腰をきゅっと抱き寄せた。胸元に顔を埋める形になってしまった轟は、爆豪の背中に両手を回した。

    「…勝己は…何が好き…?」
    「お前」

    爆豪は考える間もなく答えた。けれど轟が聞きたいのはそれではない。嬉しいけれど。

    「他には…?例えば、これやってみたいこと、とか」
    「んー…」

    爆豪は暫く悩んでいたが、何か思いついたのか口を開いた。

    「温泉とか…入ってみてぇな」
    「温泉…楽しそう」

    轟はふわっと笑いながら答えた。けれど頭の中ではこの近くにある温泉をピックアップし、計画を練っていた。彼を絶対に喜ばせる、という使命を全うする為に。


    それから数日後。轟と爆豪は黒色の高級車に乗り、道路を走っていた。後部座席に並んでいる二人は、窓の外を眺めていた。

    「これ、どこ行く気だ?」

    爆豪は少しだけ眉を寄せて主人を見る。けれど主人は何も言わず、どこ吹く風だ。

    「…焦凍、」
    「なに…?」

    名前を呼べば、ようやく爆豪の方を向いた。けれど轟は、どこか不安そうな顔だった。それにいち早く気づいた爆豪は、轟の後頭部に手を回して抱き寄せた。

    「かつ、き…」
    「ん…大丈夫、ここに居る」

    轟がこんなにも不安定なのには、理由がある。
    つい先ほど、賊に襲われたのだ。幸いにも誰も怪我せずに事なきを得たのだが、轟はその事に自分を責めた。今日轟が出かけたいと言わなければ、襲われることはなかったのに、と。

    「…かつき…」
    「ん」

    爆豪は主人をポンポン、と頭を撫でてやりながら運転手を見た。どこに行くんだ、との意味を込めた視線だった。けれど運転手はそれに応えない。否、応えられない。爆豪には絶対に内緒だぞ、という轟のお願いがあったからだ。
    運転手は目を逸らして運転に集中した。
    それから数分ほど経つと、ようやく目的地に到着した。

    「到着しました」
    「ん……焦凍、降りるぞ」
    「うん…」

    爆豪の腕の中が心地よかったのか、轟は眠そうに目を擦っている。爆豪はドアを開けて轟より先に降り、片手を差し出した。

    「ありがと…」

    轟はその手をしっかりと握って車を降りた。彼らの目の前にあるのは、大きな高級旅館だ。

    「ここで何を?」
    「勝己…温泉入りたいって…言ってたから」
    「…は…?」

    少し照れたような顔で轟が言えば、爆豪は口をぽかんと開けて彼を見つめた。思考はぐるぐると回っているのに、身体は動かない。

    「部屋も…一緒で取ってる…」
    「……」

    まじか、という顔をして運転手を見て、そしていつの間にか周りにいた護衛にも目を向けた。全員がコクリと頷いたのを確認して、爆豪はようやく今日の目的を理解したのだった。

    「…あの…早く行こ…?」

    爆豪の手をきゅっと握って顔を真っ赤にした轟は、正直言ってその場にいた全員の心を撃ち抜いた。

    「わーったよ」

    轟の可愛さにやられた爆豪は、彼の腰を引き寄せてから、目の前の旅館に足を踏み入れた。

    「ようこそおいでくださいました」

    旅館の従業員数名が、爆豪と轟を迎えた。轟は少し頬を赤らめたが、それよりも楽しみな気持ちが溢れて、爆豪のスーツをぎゅっと握った。

    「こちらになります」

    案内してくれた女性が頭を下げ、もと来た廊下を歩いていった。取り残された二人は、襖を開けて中に入る。畳のいい香りがいっぱいに広がっていた。

    「すごい、畳だ」

    轟は靴を脱いでから嬉しそうに中に入る。自身の家は豪邸だが、洋風が多いため畳は嬉しいようだ。ガラガラとベランダのドアを開けると、そこには露天風呂が備えられていた。

    「空が見える…!」

    大理石でできた露天風呂の上に広がる空は、都会とは違って空がよく見えた。もうすぐ日が暮れてしまうため、太陽の光が眩しい。

    「勝己、すごい綺麗だな」
    「、そうだな」

    夕陽を背後にして立つ主人に、爆豪は見惚れていた。こんなにも美しくて綺麗な人は、この世に彼だけだと思っている。
    ──平和だな。
    今この瞬間に時が止まってしまえばいい。爆豪は密かにそれを望んだ。時が止まれば、こんなにも美しい彼を誰一人として見ることはないのだから。

    「勝己さん」

    轟は突っ立っていた自分の護衛に思いっ切り抱きついた。突然の衝撃に驚いた爆豪だったが、鍛えられた体幹により倒れることはなかった。

    「誕生日おめでとうございます」
    「は…?」

    言葉を言い終わるやいなや、轟は彼のネクタイを引っ掴んで唇を寄せた。それは触れるだけだったけれど、轟は顔を真っ赤に染めていた。なにせ初めて自分からしたのだから、無理もないだろう。

    「…それと…いつも護ってくれて、ありがとうございます。これからも、俺と一緒に居てください」

    ぎゅっと目を瞑り、震えている主人の手を、爆豪は優しく握った。彼が見やすいように片足を付き、見上げるように視線を合わせた。

    「あんがとな。誕生日、忘れとったわ」
    「ん…」

    真っ直ぐ見つめられて、轟の顔からは火が出そうだった。

    「俺は、お前以外に仕える気はない。ずっと一緒に居てやる」

    しっかりと言い切り、主人を抱きしめる。
    ──好き…大好き…。
    轟は目を閉じて、泣いてしまわないように耐える。その代わり、スーツを握ることは許してほしい。

    「…風呂入るか?」
    「はい」

    轟の返事を聞いた爆豪は主人を軽々と抱き上げて、そのまま風呂に向かう。
    脱衣所に降ろされた轟はスーツを脱ぐ爆豪にならって自分も服を脱ぎ始めた。全部を脱いで恥じらう主人の腰を抱き寄せ、爆豪は丁寧に身体を洗った。

    「痛くないか?」
    「大丈夫…です…」

    爆豪に身体を洗われるのは初めてではない轟だったが、どうにも緊張が解けない。
    身体を洗い、湯に浸かる。二人が空を見上げると、キラキラと輝く星々が見える。
    轟を後ろから抱きしめながら、爆豪は彼の首元に頭を埋める。

    「焦凍、今日はありがとな」
    「えへへ…」

    嬉しそうに笑う主人に、爆豪はそっとキスを落とす。

    「温泉、初めて入りました」
    「気持ちぃな」
    「はい」

    轟はほわほわと宙に浮かんでしまいそうな気持ちになった。今までの苦労なんて忘れてしまうほど、幸せだ。
    しっかりお湯に浸かって疲れを取った二人は、髪を乾かしてから布団に横になる。

    「地べたで寝るのは不思議な感じ…」
    「そーだな」

    ぼやーっと天井を眺めていた轟だったけれど、何を思ったのかコロコロと転がり、爆豪の横にやってきた。

    「一緒に寝てもいい?」
    「ん、いーよ」

    爆豪は主人の方を向き、優しく抱きしめる。同じシャンプーの匂がする。けれどその中に、その人物特有の匂いが混ざっている。

    「おやすみ」
    「おやすみなさい…」

    二人はゆっくりと目を閉じた。いい夢を見られますようにと、お互いに願いながら。
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