月夜の下で前から突進してきた人物の横腹を、横から左上に切り上げた。
「っ?!」
声を発することなく崩れ落ちる身体。そして振り向きざまに一刀。血飛沫が頬をかすめた。
「……、」
刀をびゅっと振り下ろして、付いた血を振り払った。チンと刀を鞘に納める音が辺りに響いた。
屋敷から一足外に出れば、月の光が辺りを照らしていた。
「終わったか?」
「あぁ、終わった」
声がして振り返れば、全身黒い着物を着た人物が立っていた。その人物が着ている着物、それは‘’暗殺者‘’である証だ。因みに俺も同じものを着ている。
「今日はこれで終わり…?」
一歩、また一歩と近づいてきた爆豪に問いかけた。
「あぁ、今日は帰って休め。あいつも言っとった」
「あいつなんて言うなよ。頭(かしら)だろ」
「良いんだよ、別に」
爆豪に手を握られて、帰る道を歩いた。俺達が今日殺したのは、悪事を働いた者たち、又は頭を狙う者たちだ。頭は俺達をまとめる隊長、みたいなものだ。
「早く帰って寝たい…」
「ン」
月の光に照らされた道をゆっくりと進む。何故俺がこんなことをしているのか、頭とは誰なのか。それは今から数ヶ月前の、まだ肌寒い日の出来事だ。