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    dh12345600m

    @dh12345600m
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    【前提】アルファのように振る舞い王太子をこなすオメガの独歩。弟が育ったら早々に隠居する計画だ。しかし、独歩をアルファと信じ込んだ家臣から上がるオメガとの縁談が年々断り辛くなってきた。オメガ同士の結婚を防ぐため、第二性別判明前に女性恐怖症を発症し田舎で療養するアルファの一二三を仮初の妃として娶った独歩。二人は側室が入り込む余地のないラブラブな夫婦を演じる…というネタツイの番外編2。モブ侯爵令嬢視点。

    〜地獄のお茶会〜 私の王子様が他のオメガと結婚した件 私の名はマリア。この国の侯爵家令嬢として生まれました。
     私の第二性別が出生率1割以下のオメガだと分かった時、両親は喜びをあらわにしていたような気がします。理由は簡単。私の国の王族はアルファとして生まれる確率が高いからです。古くからアルファの王がオメガの王妃を娶る風習が続いているので、アルファが生まれやすい遺伝子なのだと聞いております。
     肩身の狭いオメガへの差別を無くしていく……という目的で、数十年前から率先して王族の方々が自分の第二性別を隠匿するようになりました。医療が発達し、良質なヒート抑制剤が開発されてからは、オメガが人並みに生活できるようになったからです。薬も国の補助で安く購入できるようになっています。この政策によって、オメガは第二性別が露見しにくくなりました。ベータと同じように生きていく事ができます。しかし、アルファはそうではありません。優秀な彼らは、常に頭一つ抜きん出た存在としてとても目立ちます。私のお慕いする独歩様も、まさにそんな存在でした。ですから、アルファと番うことができるオメガの私を、「王子の番にぴったりだ」と周囲は持て囃しました。しかし、私はこの結婚に乗り気ではありませんでした。────あの時までは。
     
     それは、独歩様が正式に王太子となられたお祝いパーティーでの出来事でした。通例では、王族の第二性別がオメガだった場合、王太子として発表されず、早々に嫁ぎます。この時点で独歩様がオメガだという可能性は消えました。まあ、1割未満の出生率なので、滅多にある事ではないのですが。
    「いいか、アルファは見たらすぐ分かる。見目麗しく、自信に満ち溢れており、人々の目を引くんだ」
     お父様の言葉を半信半疑に聞いていた私は、壇上に上がった独歩様に目を奪われました。
     美しくすらりとした肢体、撫で付けられている燃えるような赤い御髪、朝焼けの海を思わせる綺麗な瞳、堂々としているのにも関わらず、漏れ出す気怠げな色気。皆を引きつける魅力的な声も、上品な振る舞いも、全て私の中のアルファ像と重なりました。
    「素敵……」
     私は思わず呟いていました。今思えば、この時に一目惚れしたのだと思います。
     独歩様のスピーチの後、私は夢うつつでした。独歩様の御姿を思い出してはうっとりと溜息を吐く。その繰り返しです。他の殿方と踊る気にもなれず、壁の花となってワインをちびちびと舌の上で転がしておりましたら、知らない男性に声を掛けられました。
    「君可愛いじゃん。僕と踊ろうよ」
     私は彼を無視しました。貴族のマナーが全然なっていないからです。顔見知りではない場合、身分の高い方から名前を聞かれて初めて、声を出すことを許されます。その経緯を端折って、強引に誘うなど言語道断。社交界では恥ずべき行為に当たります。
    「おい! 顔がいいからって調子にのってんじゃねぇぞ!」
    「きゃっ」
     目の前の男が私の腕を掴みました。中に入っていたワインが薄い色のドレスを汚します。嗚呼、お父様が独歩様の目に留まるようにとたくさんお金をかけて作らせた逸品だったのに。男に掴まれた手首も痛い。
     人を呼ばなくてはと思っていると、男の手が別の手に掴み上げられました。
    「この国の社交界に置いて、彼女の対応は非常に正しい。わたくしは、本日この国の王太子となった独歩と申します。以後お見知り置きを。……して、貴方は? 侯爵令嬢である彼女にこのような振る舞いをしても許されるお立場なのでしょうか?」
     王太子のお出ましに、絡んできた男は逃げ出しました。本来ならば、家のものに合流し無礼者を探し出す指示した方が良いのでしょう。しかし、私の意識は独歩様に向いていて、それどころではありませんでした。
    「わ、わたくしは……」
     ドキドキし過ぎて、ちゃんと挨拶の口上が言えていたのか、綺麗なカテーシーが取れていたのか、一切覚えていません。ただ、独歩様の「貴方が怖い思いをしているのに、すぐ駆けつけられず申し訳なかった」という優しい言葉掛けと、自分のジャケットを私の肩にかけて掴まれた手首の跡と溢れたワインの染みを隠してくれる機転の良さにドキドキしていました。

     そんな出来事のあと、私は独歩様の正室に推薦して下さるようお父様に頼み込みました。王族サイドから「この国には問題が山積みで、まだ妃を取る状態ではない」という無難なお断りをされてからも、それはもうゴリ押しで婚約の話を打診しました。
     誰も選んでいなのならば、私が入り込む余地はある。そう思っておりましたのに……そこに彗星の如く表れたのが一二三様です。
     独歩様は突然一二三様を正妃にしました。
     二人は運命の番でずっと想い合っていただとか、独歩様が療養でずっと公爵領に居た一二三様に一目惚れして頼み込んだだとか、二人は幼馴染で昔から結婚の約束をしており一二三様の病状が安定したから結婚に至っただとか、様々な噂が飛び交っています。
     お父様が「もういいだろう」という雰囲気になっている中、私はどうしても独歩様を諦められませんでした。側妃でも良いから独歩様の元へ嫁ぎたかったのです。
    「……二人は熱愛中で入り込む隙間は無いという話だぞ。独歩様も側妃を望んでいない様子だ。現実を見ろ」
    「でも、諦められません……」
    「……仕方ない。一度現実を見てこい」
     こうやって無理矢理お父様が取り付けてくれた茶会。その決戦の場で、私はすでに心が砕けそうになっていました。なぜならば。
    「一二三、ミルクレープがあるぞ」
    「ふふっ。ここではいつもの食べ方は駄目だからね? 僕と二人きりの時ならば良いけれど」
    「分かっている」
     私の分からない話題でクスクスと笑い合う二人は肩同士がぴったりとくっついていいます。当初、丸い机を均等な距離で囲んでいた椅子のうちの二つを、独歩様がわざわざ動かして隣り合わせにしました。恐らく二人の指先は机の下で絡んでいるのでしょう。私から向かって右側に座られている一二三様は、聞き手では無い左手で器用に紅茶を飲んでいます。
    「一二三は何も食べないのか?」
    「僕は大丈夫さ」
     一二三様はそう答えていたましたが、独歩様は手を繋いでいて使えないから……という本当の理由に思い至ったのでしょう。つまみ取ったクッキーを一二三様の口元に押し付けました。
    「ちょっと! 独歩君、お客様の前で行儀が悪いよ」
     ほんのりと頰を薔薇色に染めた一二三様はとても可憐でした。恐怖症を持っているため公の場へお出にならないライバルの顔を品定めしようと意気込んでいましたが、人外の美しさを持っているなんて予想外でした。この美しさならば、さまざまな憶測の中に真実があるのではないかと納得してしまいます。
    「この茶会ではありのままのお二人を娘に見せてやって下さい、と大臣から言われているんだぞ? 何か問題でもあるのか?」
    「だからって、こんな明け透けなのは……。それに……」
    「何だ?」
     誰にでも公平で、どちらかというと淡々としている独歩様が、一二三様に対しては甘ったるい表情を浮かべながら意地の悪い言葉を投げかけています。それが意味する所は「特別な存在」という意味で。
    「恥ずかしい……」
    「一二三は可愛いな。ほら、お食べ」
     一二三様がどんなに恥ずかしがっても、独歩様はクッキーを持つ手を緩めません。一二三様が恥じらう姿を引き出したくて仕方がないのだと思います。
    「うぅ……」
     観念した一二三様は、真っ赤になりながら独歩様の指を介して与えられたクッキーを口に含みました。その姿は本当にお可愛らしいです。独歩様は、一二三様の唇が触れた己の指をペロリと舐め上げました。その仕草には色気がたっぷりと含まれています。
    「……ケーキよりも甘いな」
     羞恥が過ぎたのでしょう。一二三様がアンバーの瞳に涙を浮かべました。独歩様の視線がその美しい光景に見惚れるように固定され、二人は見つめ合いながら徐々に距離を縮めていきます。そして、唇が触れる前に私の存在を思い出したのだと思います。こちらに二人の顔が向き直りました。
    「……して、大臣が言っていた、立ち入った話とは何なんだ?」
    「な、何でもありません……! 私、気分が悪いので……失礼いたします!」
     私はハンカチで涙を拭いながら王宮を後にしました。
     
     
     
     ●おまけ(ミツヤ視点)

    「いやー! お二人とも! 側妃希望のお嬢さんが退散するレベルのバカップル、お見事でしたよ!」
     傍で空気に徹していた俺は、拍手をしながら二人に声を掛けた。
    「……消えて無くなりたい」
    「ねぇねぇ、俺っちのこと可愛いって言った!?」
     慣れないキャラクターを演じてぐったりした独歩様とは対照的に、正装を解いた一二三様は嬉々としている。余程「可愛い」という言葉が嬉しかったのだろう。ニコニコと笑顔のまま、「疲れた時は甘いものっしょ!」と、独歩様の口に生クリームたっぷりのケーキが乗ったフォークを運んでいる。それを当たり前のように口を開けて待ち、咀嚼しながらご満悦な様子の独歩様。これがいつものお二人だ。普段通りの振る舞いだと独歩様がアルファに見えない為、俺の方からキャラクター設定を付与した。一二三様、楽しそうに演じてたなぁ。
    「それにしてもぉ〜、独歩ちんがいつもと違うカンジで俺っちドキドキしちった〜!」
    「そりゃドキドキもするだろ。一二三を真似したんだからな」
    「うぇ!?」
     一二三様は一瞬驚いたようにつり目がちな瞳を見開いたが、何かに思い当たったようにキラキラと輝かせ始めた。
    「……って事は〜、独歩ちんはいつも俺っちにドキドキしてくれてるってこと〜!?」
    「……くそ。墓穴を掘った」
    「かーわい♡」
     俺の指示がなくてもイチャイチャし始めている夫婦へ「一時間後、お迎えに参ります」と告げると、俺はお茶会の会場となっていた部屋を退出した。甘いものは一口も食べていないのに、胸焼けでどうにかなってしまいそうだ。
     
     
     
     
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