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    dh12345600m

    @dh12345600m
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    dh12345600m

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    前に書いたもの。ツボに入って笑いまくる🥂が書きたかったんだと思います。

    モブ視点ペットカメラ 俺の先輩にはすげぇ人がいる。
     名前は伊弉冉一二三。
     シンジュクの帝王────ナンバーワンホスト様だ。
     マジであの人は神なんじゃねーかと思う。
     まず、その美意識が半端ねぇ。そこらの芸能人より余程美しいし、酒飲んで夜仕事してる29歳の肌艶じゃねぇ。
     整いすぎて見ようによっちゃキツい顔も、笑みを常に浮かべているから花があるし、ちょっとした表情に色気を感じることもある。男って分かってても普通に抱けるレベルだ。
     まあ、一二三さんは枕しねーって噂だし、ストレートだと思うから、そんな機会は一生来ないけど。
     振る舞いも本当に格好いいんだよな。大人の男の見本って感じ。お客さんに対してだけじゃなく、俺たちみたいな下っ端にも微笑を絶やさない。全然怒らねーし、間違った所は優しく教えてくれるし、そういう所も尊敬する。
     そんなすげー先輩である一二三さんを、ついつい目で追ってしまうのは仕方のないことだと思う。
     
    「お疲れ様っス!」
     
     休憩室には何人か先客が居た。こういう時もやっぱり真っ先に目が行くのは一二三さんだ。
     皆に一目置かれているからか、彼の座るソファーには他に人がいない。お近づきになれるチャンスだと判断した俺は、思い切って隣に座った。
     
    「一二三さ……」
    「んんっ」
     
     異常に気付いたのは声をかけてからだった。
     一二三さんは携帯を片手に肩を小刻みに振るわせている。咳払いでごまかそうとしているが、ツボに入って笑いが止まらなくなったパターンだと思う。
     何が夜の帝王のツボに入ったのだろう。興味津々の俺は、会話を切り出すことにした。
     
    「一二三さん、大丈夫っすか?」
    「……それがね、っく……は」
     
     笑いは止まらないらしい。潤んだ瞳を細め、目尻を拭う仕草もセクシーだ。
     俺は恐る恐る高い生地でできたスーツの背中をさすった。笑いすぎた人への対処法、これで合ってんのか?良く分かんねぇ。
     少し落ち着いた一二三さんは、くちゃっとした可愛らしい笑みを浮かべたまま、こちらに体ごと顔を向けた。
     この人の意識的に作られていない表情、初めて見たかもしれない。
     正直に言おう。すっげードキドキした。 
     
    「はぁ……」
     
     艶かしく息を吐いた後、可憐な唇が音を紡ぎ出す。
     
    「独歩君がね」
    「ドッポクン」
     
     出た。一二三さんの同居人、ドッポクン。よく話題に出るが、未だ謎多き人物だ。一二三さんのガードが硬いのだと思う。
     
    「ああ、いや……順序立てて説明するね。以前、僕に対してのストーカー被害があったじゃない? それから、監視カメラを玄関に置くようにしたんだ」
    「合鍵とかフツーに作ってくるヤバイ客居ますもんね」
     
     俺は大いに頷いた。この人の場合、セキュリティーは過剰なくらいで丁度良いと思う。一国を傾ける程の美貌を持っているがゆえに、一二三さんに狂う女性は後を絶たない。
     
    「終電を逃してタクシーで帰宅した独歩君がね、玄関で力尽きている様子を、監視カメラがありありと映してて……っく……ふ」
     
     携帯にデータを転送するタイプの監視カメラなのだろう。携帯の画面を見た瞬間、再び一二三さんが撃沈した。顔を覆い隠してプルプルと震えている。
     
    「失礼します……」
     
     一二三さんの携帯を覗き込む。何気に、ドッポクンを見るのも初めてだ。
     
    「あ……」
     
     お洒落な玄関の床に、スーツを着たままの人間が突っ伏している。膝を畳んで頭頂部の前に両手を置く姿は、まさしく土下座そのものだ。良く見るとフォームが美しい。三つ指をついて、額も床にくっつけている。
     音声マイクもついているのか、しきりに良い声で『誠に申し訳……ございませ……うぅ』と聞こえてくる。夢の中でまで謝罪をしているドッポクンに目頭が熱くなった。
     
    「さっきまでは一人夢の中で接待をしていたんだよ。もう、本当に可愛いんだから」

     一二三さんの様子からすると、この光景は日常茶飯事なのかもしれない。けれど、ブラック企業の社畜からホストに転職した俺にとって、この光景は涙なくして見られない物だった。
     
    「一二三さん、ドッポクン起こしましょう!!フカフカのベッドで寝てもらいましょう!!」
     
     化粧が落ちるのも構わずに涙を流す俺を見て、一二三さんは冷静さを取り戻したようだった。
     
    「どうやって?」
    「このボタンを押すと向こうに話し掛けられるんです!」
     
     一二三さんが用意したのは、不在中にペットを見守れるタイプのカメラだった。マイクから呼びかけることができるようになっている。
     
    「失礼します」
     
     携帯を拝借してアプリを操作する。通話モードに変更すると、すぐさま携帯を一二三さんに返した。
     
    「さぁ、話しかけて下さい」
    「……独歩君」
     
     画面越しのドッポクンがぴくりと動いた。顔を上げて辺りを見回している。
     
    『ひふみぃ……?』
    「うん。僕だよ」
      
     ドッポクンはふらふらと立ち上がり、カメラの近くへ移動した。音源を探し当てたのだろう。
     
    「明日は休みだろう? ちゃんとベッドで寝て、僕が帰るまでいい子で待っていてね」
     
     一二三さんが仔猫さんに語りかける以上に甘ったるい声で話しかけた。ドッポクン危なっかしいし、母性が湧くのも無理はないと思う。ちょっと過保護な気もするが。
     
    『ん。いい子で待ってる』
     
     ドアップになった独歩君がカメラに向き直った。疲労が色濃く残る顔は、どきりとするほど整っている。気怠げな雰囲気が色気を醸し出して、男なのに守ってあげたいと思った。
     一二三さんが高嶺の花という美しさならば、ドッポクンは日陰に咲く可憐な花という印象だ。

    『……だから、早く帰ってこい』
     
     ドッポクンは顔をくしゃりと歪ませた。その瞬間、俺の心臓はなぜか早鐘を打った。ドッポクン、めちゃくちゃ庇護欲をそそる。可愛がりたい。懐いてほしい。けれど、その顔をもっと歪ませたい。……例えば、快楽とかで。
     
    「あ……」
     
     一二三さんが携帯のアプリを終了した。
     先ほどとは違う、計算して作られた美しい笑みを顔に貼り付けている。先程の柔らかな笑みはドッポクン専用なのだと理解する。この人は、恐ろしいまでの観察力で俺の事も観察していたのだろう。冷や汗が背中を伝う。
     
    「可愛いだろう?僕の独歩君」
    「は、はい」
     
    「僕の」の部分を強調された。ドッポクンは一二三さんの物なのだろう。羨ましい。けれど、夜の帝王を敵に回すほど俺は馬鹿じゃない。
     
    「一二三さんにとてもお似合いだと思います」
     
     ブラック社畜時代に身につけた笑顔の仮面を付けて、芽生えかけた気持ちに蓋をした。
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