ハンマーというハンコ 親密度はBくらいだといいな
「え?あいつの武器?おかしい?え?俺も?」
「いや、おかしいですよね?監察官は武器PCなのに、なんでアンタらは普通に武器なんですか。」
「あ、それ?だって俺たちは補佐官だからコード弄る権限がねぇの。だから普通に殴ってる。勿論バーチャルだから、俺達も戦闘技術は上げられてるよ?」
「あぁ…。とか言って納得しませんから。なら普通もう少し違う武器選ぶ所ですよねぇ?なんで、ハンマーと鎌なんですか。」
「ハンマー…あ、そういうことか。はいはい、ハンマーね。」
「…は?ハンマー以外あります?」
「ないね、うん。ちなみに鎌なのは理由あるよ。俺、色んな仕事してたけど、一つだけ一位を取ったんだよ。」
「なんの?」
「草刈り大会。」
「くだらねぇ理由で選んでんのかよ…。」
「でも、実際HANOI用に作られたコンセプトをよく普通にぶん殴れますね、二人とも。仮にも人間でしょう?」
「えー?あれを人間って認識は…悪意の塊過ぎて…逆に颯爽と殴っちゃう…。」
「チッ。」
「なんでさ!?まあでもなぁ…俺は割と割り切ってるけど、妹さんはなぁ。」
「…あの人、タワーで戦う時、ちょっと静かですよね。てか、ヤル気滅茶苦茶あるというか…。人間嫌いってところからは分かりますけど。」
「んー…まぁ、コンセプト無視してるからな、あいつ。一つの個体として見てる節があるから。」
「一つの個体?大まかに人間ってことですか?」
「いや?けど、今のナナシなら分かるんじゃねぇの?今度一緒に行った時よく見て見なよ。武器踏まえてさー。」
「…面倒なやり口ですね。」
「そういう面倒なことが、人間を推し量る腹立つ行為よ。」
“HANOI狂いみたいになったのはさ、同情からだと思うんだよ、俺もあいつも。可哀想にってのは先行した。でも、ほら、国際連盟の演説見たことある?あれ、あれ見てからアイツ、一回ボロがきちゃってんの。国際連盟の演説で言ってたじゃん?HANOIを可哀想と見る事で自分達が優しいという気持ちに浸れるって。あれ、あの発言を見て、自分も同じなんだって。あれからだよ、メンテ技術を勉強したいって考えたの。まぁね、それは俺も手伝ったからさ、言えた義理じゃねぇけどよ。あの時のアイツってなかなか無残な状態だったわ。一応乗り切って、監察官目指して、また落とされて、補佐官になって、今に至るけど。動機だけは未だに燻ってんだよなぁ。だから、間違えないように、迷わないように、あの国際連盟の演説をさ。たまに見返してる。これにならないようにって思いながら、これと一緒なんだって思いながらな。“
“ハンマー、見方変えたら分かるんじゃねぇかな。なんで、それなのか。一個人って《誰》なのか。”
「…あぁ、クソ。馬鹿じゃないのか、あの人。ハンマーじゃなくて、あれ、《スタンプ》のつもりかよ…。バツ印が付いてるなんて、気付いてなかった。じゃあ、一個人って、まさか。」
「─自分だと思って倒してるなら、補佐官、アンタ、馬鹿を通り越して、狂ってますよ。」
自分を倒すと思って、選ぶ時、彼らが何を使って人を倒すか考えた。
でも答えが見つからなくて、人が、私が嫌いなものを考えて、ぼんやりとHANOIのマークが見えた。
あれは、丸に見える。
なら、反対は。
─嗚呼、それなら納得。
人は、自分にバツ印なんて、付けられたくない。
HANOIから、付けられたなら。
それはきっと。
泣くほど辛くて、正しく罰だ。
「…いつか、丸を。それこそ、クレヨンが好きな丸を、自分にあげようとは、思えないんですか。思いますよね。」