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    UchiyosoLove_

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    UchiyosoLove_

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    こっちの方が好きなので少し手直しして投稿しま〜〜す

    花に降るもの夕暮れの空は、まるで朱墨を流したような赤に染まっていた。忍術学園の裏山では、風が強まり、木々がざわめきを立てている。鳥の鳴き声が急に止んだのを合図に、瑞は静かに足を止めた。

     「…いますね」

     彼の隣に立つのは、いつものように淡い微笑を浮かべた保健室教諭、カトリーネだった。蝶のような瞳が、森の奥に潜む影を捕らえている。衣の裾を風に揺らしながら、彼は一歩前に出た。

     「派手に来たものだねえ。こんな時間に、学園の敷地に入り込んでくるとは」

     敵の気配は三つ。忍の気配を隠す術を使っているつもりだが、隠しきれてはいなかった。瑞は手の中の苦無に力を込める。

     「先生、私も出ますか」

     声は冷静だったが、その奥には確かな戦意が宿っている。
     だが、カトリーネは肩越しに振り返り、やんわりとした声で返した。

     「いや、このくらい一人でどうってことないさ。……生徒の前で、ちょっと格好つけたいんだよ、私もね」

     瑞が一瞬言葉を飲む。その姿には、いつもの柔らかい雰囲気の中に、確かに鋼の芯が見えた。
     敵の影が跳び出したのは、その瞬間だった。

     ――ひゅっ。

     音もなく飛来した手裏剣を、カトリーネは身をひねり、片手に握った鉄扇で弾き返す。続いて背後から飛び込んできた刺客にも、一切視線を向けず、踵を返して肘で喉を打ち、昏倒させた。

     「一人、寝かしといたよ。あとの二人は……そっちかい」

     瑞の背後から現れた敵が、すばやく彼に刃を向ける――が、すぐにそれは蝶の羽ばたきのような動きで遮られた。

     「……!」

     刃はカトリーネの鉄扇に受け止められていた。扇の金属部分がきらりと光り、敵の腕ごと弾き飛ばす。

     「戦場は、己が生きる場所と決めたなら――もう少し、息の根の扱い方を学びなよ」

     声はあくまで優しかった。だが、その一閃は容赦なかった。

     敵が三人とも倒れたあと、ようやく静寂が戻ってくる。瑞はゆっくりと呼吸を整え、カトリーネのそばに歩み寄った。

     「……先生、やっぱりただ者じゃないですね」

     「そんなことないさ。ただ、誰かを守るって決めたら、手を汚すことにもためらわなくなるものだよ」

     月が昇り始めていた。葉の隙間から差す月光が、二人の影を長く伸ばしている。

     「瑞、ありがとうね。君が一緒にいてくれたから、私も無茶ができたよ」

     「……そんなの、言われなくても一緒にいます」

     照れ隠しのように呟いて、瑞はカトリーネの横に並んだ。医務室へと続く道には、夜風が吹き始めていた。
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