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    UchiyosoLove_

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    同居するまでの長話書きたかったけどかけなさ過ぎて途中までしか書けなかったやつ さりあま

    至るまで長々とする話は時に言い訳にしかならなく、聞いている相手もうんざりとするだろう。
    だから私はこの気持ちを敢えて、一言で表す。




    □□□
    風が心地よく、生き物が目覚めるこの季節は結構自分の好みだったりする。
     獣人なのに室内を好むのは意外。と言われるが、別に獣人とはいえたった1人の稲妻人である事には変わりはないのだから、室内を好んでも文句を言われる筋合いは無いと自分で感じている。
     自分の好きな季節でも同様だ。好きとはいえ、別に屋外に出たいなどとは思わない。
     しかし、今日の自分はそれとは異なった。直接的にこの季節を浴びたくなり、外に出る支度をする。
    鳴神神社に居座るあの八重宮司に用意されたこの構造が複雑な服も、慣れれば比較的早く着替えられる。母親が
    「さりちゃんはこの服着てくれないの?」と言わなかったら、八重宮司の目を掻い潜って捨てていただろう。そうして自分の低めの身長を少しだけ盛れる女下駄を履き、外に赴く。

    「…流石に買い過ぎた。」

     両手にあるのは大量の古本、“短期間で学べる!スメールの20言語”やら“これで垢抜け!家具の配置の黄金率”やら何を重点的に学びたいのかいまいち掴めないその本たちを風呂敷に詰めた状態がこれだ。
     先程言った本たちの他にも色々な本が買ってあったりするが、一つ一つ読み上げるとキリが無い。
    まぁでも、これで暫く外出する事も無いだろう。食品も母親からかなりの頻度で届けられているので、買う必要も無い。
     それはそうとして、重い。
    獣人なのに人間より非力なのか?と、偏見を持つ人間には嫌味ったらしく言われそうだが重い物は重いのだ。意外にも遠くまで歩いて、本屋にすれ違う度にちまちま買っていた古本は、今はずっしりとしている。
    家まで後何分なのだろうか。と眉間に皺を寄せていると、ぴりりとした蠱惑的な匂いが鼻腔を擽った。

    「随分と重そうだねェ。手伝おうかい?」

    いつの間にか背後に立っていた人物に気づき、一瞬目を見開いた。彼女はそれに気づいたらしく、くつくつと唇の近くに手を置き笑っている。見た目は女性らしく、背丈は平均よりずっとずっと大きいと感じた。自分が見上げないと顔も見えないその女性らしき人物は、何処かで会った気がしなくも無い。じっと彼女を見つめていると、お〜い、大丈夫かい?と自分の視界に入る様に手を横に振った。その仕草で自分が呆然としていた事に気づき、先程彼女が手伝おうか?的な主旨を述べていたことを咀嚼する。すみませんと謝罪した後、「それではお言葉に甘えて。」と言い、2つの風呂敷のうち軽い方を渡す。流石に重い方を渡す程自分も畜生では無い。しかしそれでもあまり重量に差は無く、「おや、意外と重いねェ?」と微笑むその笑顔は、自分には限りなく眩しい物に見えた。
     彼女の名前は普と呼ぶらしい。今はその名前で名乗っているかな。と言っていたので、この稲妻に滞在する間の仮名なのかもしれない。稲妻人じゃないのは服装と神の目を囲う飾りからなんとなく察しが付いた。
    それにしても鎖国中なのに対して神の目を堂々と持ち歩いているのはあまりにも肝っ玉が据わっていると言うのか。そう思いながら異国の神の目を見つめると、その視線に気づいたのかその神の目をトントンと触れる。
    「これ、実は偽物。」
    と少しアルトの効く麻薬の様な効果を放つ声で耳打ちされた。名前しか聞いた事無いが宵宮と言う花火職人やらがその「偽物の神の目」で奉行所の目を騙していると言う話を風の噂で聞いたことがある。ある分にはマシ。と言った様な所だろうか。

    それにしても、話すにつれよく分からない人物像だ。
    少なくとも稲妻人では無く、私と同じく人間では無いのは確か。しかしそれ以外の質問は綺麗にはぐらかされた。
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