兵器に恋をした①ムジカートは、兵器だ。
そうやって小さい頃から、コンダクターになった今でもそうやって教えられてきた。
「ムジカートは、人間の記憶を失った代わりにD2と戦える唯一無二の力を持った存在です。」
「しかし、人間ではない、あくまで兵器として、存在しています。」
このムジカートについての言葉は、耳が痛くなる程に聞いた、聞かされた、刷り込まされた。

あたし、ルメリは、兵器に恋をした。



▽▽▽


自覚を持ったのはいつ頃だろうか、それさえも覚えてない。
その位怯えて、自己嫌悪に堕ち、罪悪感に包まれていたのだ。
兵器に恋をするなんて普通の人間から見たら異常、その鋭い一言に尽きなかった。当たり前だ、人間が兵器に恋をするなど、異常にも程がある。

契約を真面目に考える位に、仲睦まじく、息もあっていた。
以前契約していたコンダクターから聞いた言葉を忘れない様に、自分から話しかけてみたり、積極的に動いていった。
D2を倒す時も、全力を出せるみたいに清々しくて、指揮をしているこっちもやり甲斐を感じた。
月日はあっという間に過ぎていった、過ぎていってしまった。この溢れ出る感情も肥大化しながら。



やってしまった、そう思った。
指揮棒を振っている時に、気がついた。
コイツに、“璦”に恋をしている、自分の事を。
「った…！」
「璦！！」
指揮に迷いが出た。音楽は細かな感情さえ自分の演奏に響いてしまう。
コンダクターはムジカートを導いて、勝利させる存在なのに、コンダクター水からが混乱してしまったらムジカートも混乱してしまうではないか。
冷水を浴びせられた程に冷静になった脳が言った

＿響いてしまうのなら、消してしまえばいいじゃないか。


上司命令で休暇を貰った、否、貰わされた。
「最近のお前は指揮に迷いがある、これでは必要以上にムジカートを傷つけるだけだ。……休暇を与える、少し頭を冷やせ。」
ここ数日で何回ムジカートを担架送りにした？傷つけた？
華麗に倒せたD2が、脅威に感じた。脅威に変わった、怖かった。
璦と一緒に行動を共にした時は、あんなに簡単だったのに、出来なくなってしまった。

「え？あたし？」
「頼む…この通りなんだ。」
自分を指さして疑問符を浮かべているのはエメリ、ムジカートだ。
本来であれば瑞というコンダクターと契約してるエメリなのだが、今回ばかりは譲れない何かがあった。

璦と、どうしても距離を置く事。
置いたら、恋愛感情なんてものは無くなる、人はいつか諦める物だから。今までが一緒に居すぎたせいなんだ、取り敢えず璦の次に親しいムジカートはエメリだったので、どうしても、と頼んだ。
「いいけど……璦ちゃん。きっと悲しむと思うよ？」
「…………璦の事は聞かないでくれ。」
黙りこくった自分を見て、これ以上話してくれないと思ったのか、あたしに近づいた。
「いいよ！その代わりに、自分で話したくなったらいつでも話してね、璦ちゃんのこと！」
にぱー！と笑うその表情に、いつもより救われた、

自分、ルメリは、璦と距離を置く事を心に誓った。