“おめでとう”誕生日という日は、特別な日。
自分が生まれてきた事に、感謝をする日。
『おめでとう、___。』
1部分だけ埋まっていないそのピースのまま、誰かが私の誕生日を祝っている。
▽▽▽
「…誕生日?」
「そう!誕生日!!」
私が疑問に思っている顔をしている反面、その子は夜に散らばる星屑の様な魅力的な輝きをした笑顔を放っている。
‘その子’はエメリちゃん、感情豊かで優しい、真水の様な純粋さを持っている私の二個下の女の子。
私はこの子に何度も助けられており、人を救う能力、寄り添う能力が無自覚の内に発揮している眩しい子だ。まるで砂漠の太陽の様に、暑さと煌めきを持ちながら。
「……瑞ちゃん、誕生日おめでとう!!7月18日だったよね?」
「…………うん、ありがとう、エメリちゃん。」
「…?瑞ちゃん、もしかして__」
エメリちゃんが何かを口にする前に、後ろから声が聞こえた。
「す〜い姉!誕生日おめでとう!!」
私とほぼ同じ容姿をしているこの子は璦、…この子の存在自体複雑な物だから、省略しよう。
「わっ!……ふふっ、璦、ありがとう。」
「ちゃんとプレゼント用意してあるから楽しみにしててね!瑞姉!」
そう言うと、璦はどこか行ってしまった、
「……ねぇ瑞ちゃん、お誕生日、祝われたことあまり無い?」
心臓がドキッとした、図星だったから。
「…やっぱりエメリちゃんには敵わないや、」
私は幼い頃に両親を亡くしている。
祝われたことはあると言えばある、けれど顔も写真でやっと思い出せる位、昔の事。
両親が亡くなってから、叔父と叔母の家に住んでいた、そこでは私の誕生日を祝う程、親切ではなかった。
まともに祝われたのはこれが初めて、と言ったら笑われてしまうだろうか、心配されるだろうか。その不安がぐるぐる身体を渦巻く。
「……もし今年が、今日が初めてちゃんと祝われたのだったら、最高の誕生日にしないとね!」
「…………え?」
予想外の回答に、頭が困惑した。
哀れみの目を、向けられると少しでも思ってしまった、例えこの子でも。
でも寄り添ってくれるその暖かい光が、私には必要だった。
目が滲む、透明な何かで。
満面の笑みをしたその子に、いつも救われているのは私だ。
▽▽▽
『お誕生日おめでとう、瑞ちゃん。』
スメールの1つの部屋で、上に編み込みをしたショートカットの女性が柔らかに発言する。
写真には、幼い子供と、その両親が居る。
△♢▽○年7月18日と、その写真の裏面に記載されていた。