Ex-friends人間関係というのは、この世で一番可塑性の高いものなんじゃないかと昼神は思う。
いったん思い切って形を変えたら、そこからはもうどんどん自分たちの手を離れて変化し続けていく。そして、もう二度と元の型ぴったりに戻れることはない。
昼神が星海とただの友達であった期間はあまり長くない。
高校を卒業する頃にはもう恋人だった。
友達は別に何年も会わなくても友達のままだが、恋人同士は少しすれ違えば終わる。努力なくしては続けられないし、友達ならばどうでもいい欠点も、恋人同士だとそれは互いの精神衛生に大きく影響する。
元・友達なのに、こうもがらりと変わってしまうのだから不思議なことだ。
なんていう話を事後のベッドで始めたら、星海は「ひとつも分かりません」というものすごい形相になった。星海は賢く、考えることは得意なはずなのに、自分の関心外のことになるとその頭脳はさっぱり能力を発揮しない。
「んー、じゃあちょっと方向を変えると……例えばさ、俺と光来くんが一緒にいる今のルートだと、俺が光来くんの結婚式に出て友人代表スピーチをするとか、光来くんの子どもにお年玉をあげるとか、そういういかにも起こりそうでごく平凡なイベントが発生しないことになるでしょ。一緒に飲んだあと、じゃあねって駅で分かれたりもしない」
「それ、今する話なのか?」
「別に大事な話ではないけどさ。ただの友達だった頃の光来くんにはもう二度と会えないし、大人なってからの光来くんと友達になれることもないんだなって思っただけ」
それは当たり前のことで、でも実はすごく悲しいことのような気がした。
「俺は別にいい」
星海が寝返りを打って、うつぶせの昼神の背中の上に乗り上げた。そして、後ろから顔を覗き込んでくる。
「だって今のほうがいいだろ」
星海のまつ毛が昼神の眦に触れて、唇が静かに重なる。触れられるたびに本当は今でも少し感動することは、墓まで持っていく予定の秘密だ。
「ねえ、もう1回していいの?」
「違え。背中乗っててやるからこのまま腕立てしてみろよ。お前最近筋力落ちてるぞ」
「嘘でしょ……」